ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのかの表紙

なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか

日本版GOM構築の教科書


本書の要点

  • 日本のグローバル企業は、日本人駐在員に依存する経営モデルから脱さなければならない。

  • 海外のグローバル企業の本社は、利益を最大化するために、使用するインフラを指定し、一定のルールに基づいたコミュニケーションを行っている。

  • 日本企業がGOMを構築するためには、海外のGOMのケースを模倣するだけでは不十分である。日本固有の事情を踏まえたうえで、日本型のGOM構築をめざすべきだ。

  • GOM構築を行うにあたっては、たんに作業タスクを並べてひとつひとつ推進していくのではなく、変革のためのプロセス設計を入念に行う必要がある。

1 / 4

人依存の連邦経営モデルから脱する

駐在員に依存する経営モデルは通用しない

FlairImages/iStock/Thinkstock

現在、さまざまな日本企業でグローバル化が進んでいる。そうした企業でよく耳にするキーワードが「連邦経営」である。地域・事業ごとに拠点を築き、それぞれが自律的に事業規模を拡大する、という仕組みだ。

この経営モデルは、暗黙知を共有した日本人駐在員を海外拠点に送り、彼らに依存することで成り立っている。グローバル化を進める多くの日本企業は、海外に進出した当初からずっとこのモデルを取り続けている。

しかし、このような経営モデルで海外での事業規模を拡大しようとすると、日本から人材をどんどん供給する必要がでてきてしまう。少子高齢化が進む日本企業では、人材を恒久的に供給しつづけるのは困難だ。だからこそ、そのような日本人駐在員に依存するモデルから、海外人材も活用できるモデルに転換すべきである。

乗り越えるべき3つの壁

Michael Blann/DigitalVision/Thinkstock

人依存の「連邦経営」モデルの課題は、大きく3つに分類することができる。

1つ目は、「組織/ガバナンスの壁」である。駐在員に依存したグローバルな組織/ガバナンスの場合、事業・地域軸に情報が集中する。そのため、日本本社の機能軸は、物理的にはもちろん、情報量でも現場から離れてしまっている。「現状を分析し、問題・課題を発見し、対策を打つ」というマネジメントの基本動作に関して、事業・地域軸からの情報に頼らざるをえず、自律的な論点形成ができない状態に陥ってしまっているのである。

2つ目は、「業務/ITの壁」である。日本企業では多くの労働者が、上司の指示がなくとも自発的意思で業務を改善し、製品やサービスの品質を常に改善し続けようと努力する。その結果、どんどんと業務が分化・変化していく。この特性により、日本企業の製品は高い品質を保っているのだが、グローバルな現場では、日本人同士の「阿吽の呼吸」が分からない現地人材が、こうした業務プロセスに適合できないことが危惧される。また、IT化しようにも、業務が分化・変化しているため、システム設計に反映しづらくなっている。

3つ目は「人材/ビジョンの壁」である。(A)国内市場が縮小しているため海外で売上高を上げる必要があり、海外へ送る人材の必要性が増大している、(B)少子高齢化が進み、国内の人材確保が困難になっている、(C)社内の人口ピラミッドで一番多いバブル入社組が50代に入り、海外へのリソースシフトが難しくなっているうえに、それ以下の年齢層は、バブル崩壊やリーマンショックの影響で非常に人数が少ない――これら3つの要素が重なり、日本人だけではもはや、事業軸・地域軸・機能軸を支えられなくなってきた。

だからこそ企業は、日本人だけではなく、海外人材も含めて、採用・育成・人材流動性確保に踏み出す必要がある。その場合、海外人材を採用するだけでなく、将来のマネジメント層候補として、育成を進めていくことを念頭に置かなければならない。

2 / 4

海外グローバル企業のGOM構築

グローバル企業本社のありかたとは

日本のグローバル企業本社の場合、売り上げを拡大するための「ヒト・モノ・カネ(経営リソース)の提供」だけに注力し、その後は現地に任せっきりにしてしまう傾向がある。それに対して、海外のグローバル企業の本社は、使用するインフラを指定することで、統制のとれたコミュニケーションができるように徹底している。

海外のグローバル企業は、「組織/ガバナンス」「業務/IT」「人材/ビジョン」という3つのプラットフォームを明確に意識し、それぞれにルールやプロセス、ITシステムといった仕組みを組み込んでいる。これを、グローバル・オペレーティング・モデル(GOM)と呼ぶ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2656/4179文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.10.21
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

間違いだらけのビジネス戦略
間違いだらけのビジネス戦略
山田修
FAILING FAST
FAILING FAST
ニコラス・カールソン長谷川圭(訳)
リーダーの本義
リーダーの本義
門田隆将
不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
中谷巌
ネット炎上の研究
ネット炎上の研究
田中辰雄山口真一
会社に頼らないで一生働き続ける技術
会社に頼らないで一生働き続ける技術
井上久男
サードウェーブ
サードウェーブ
加藤万里子(訳)スティーブ・ケース
大前研一ビジネスジャーナル No.10
大前研一ビジネスジャーナル No.10
大前研一(監修)good.book編集部(編)

同じカテゴリーの要約

ベンチャー人事のすごい仕組み
ベンチャー人事のすごい仕組み
村上亮
大きなシステムと小さなファンタジー
大きなシステムと小さなファンタジー
影山知明
非常識な「ハイブリッド仕事論」
非常識な「ハイブリッド仕事論」
文化放送 浜カフェ(著)入山章栄(編)
アメーバ経営 新装版
アメーバ経営 新装版
稲盛和夫
「人事のプロ」はこう動く
「人事のプロ」はこう動く
吉田洋介
無料
新版 エスキモーに氷を売る
新版 エスキモーに氷を売る
ジョン・スポールストラ佐々木寛子(訳)
カスハラの正体
カスハラの正体
関根眞一
心理的安全性のつくりかた
心理的安全性のつくりかた
石井遼介
小澤隆生 起業の地図
小澤隆生 起業の地図
北康利
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司