プロ野球の経済学
労働経済学の視点で捉えた選手、球団経営、リーグ運営

未 読
プロ野球の経済学
ジャンル
著者
橘木俊詔
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年05月26日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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プロ野球の経済学
労働経済学の視点で捉えた選手、球団経営、リーグ運営
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橘木俊詔
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定価
1,620円
出版日
2016年05月26日
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総合
3.5
明瞭性
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革新性
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レビュー

「巨人・大鵬・卵焼き」と言われた高度経済成長期ほどの勢いはないものの、今なお日本人の国民的スポーツとして君臨し続けているプロ野球。元来娯楽である野球がどのような経緯でプロスポーツとなり、一大ビジネスとなったのか。また、多くの野球少年が一度は夢見るプロ野球選手という職業は一体どのような仕事なのか。本書ではこうした事柄を経済学の立場から考察している。

前もって述べておくと、著者の橘木氏は経済学好きの野球関係者ではなく、野球好きの経済学者である。そのため、プロ野球界で起こっていることを企業と労働者の間で起こっていることとして、冷静に評価することが可能であるし、そこに本書の面白さがある。近年少し翳りが見えてきている野球界が今後どのような方向性に進むべきかといったことについて、経済合理性を加味した独自の視点で考察しているのも興味深い。

本書は5つの章からなっており、第1・2章では野球が日本に輸入されてからプロスポーツの代表となっていった経緯について、第3章では選手と球団の関係について、第4章ではプロ野球選手の報酬について、第5章では日本とアメリカのプロ野球の比較について説明されている。本要約では、著者の専門分野である労働経済学の視点が色濃く見える第3・4章を重点的に取り上げる。

日本に深く根付いたプロ野球を産業としてとらえ、選手を経済学の見地から評価をするとさまざまな面白い発見があることを、ぜひ本書から感じていただきたい。

和田 有紀子

著者

橘木 俊詔(たちばなき としあき)
1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学経済学部教授、同志社大学経済学部教授を経て、現在京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。その間、仏米英独で教育・研究職。2005年度日本経済学会会長。専攻は経済学。
著書に、『格差社会』(岩波新書)、『女女格差』(東洋経済新報社)、『早稲田と慶応』(講談社現代新書)、『学歴格差の経済学』(共著、勁草書房)、『東京大学』(岩波書店)、『教育と格差』(共著、日本評論社)、『灘校』(光文社新書)、『日本の教育格差』(岩波新書)、『京都三大学 京大・同志社・立命館』(岩波書店)、『女性と学歴』(勁草書房)、『三商大 東京・大阪・神戸』(岩波書店)、『宗教と学校』(河出書房新社)、『学歴入門』(河出書房新社)、『公立vs私立』(ベスト新書)、『ニッポンの経済学部』(中公新書ラクレ)、『実学教育改革論』(日本経済新聞出版社)、『日本人と経済』(東洋経済新報社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    プロ野球選手は球団に雇われている被雇用者ではなく、球団と年ごとに契約を結ぶ自営業者である。よって働き方や報酬制度が一般の労働者とは全く異なる。また年金に加入していない選手も数多く存在する。
  • 要点
    2
    ドラフト制度は選手の職業選択の自由に多少は反するものの、経済学の見地からは容認できる制度である。機会平等性と経済効率性はトレードオフの関係にあり、ドラフト制度により選手の機会平等性が小さくなる一方で、プロ野球界の経済効率性は高まり収益が上がる。そしてプロ野球界の繁栄は選手の年俸にも反映されるのだ。

要約

プロ野球の経営側と選手側を評価する

経営側の評価
block37/iStock/Thinkstock

現在の日本のプロ野球は、セントラル・リーグとパシフィック・リーグそれぞれ6球団からなり、約7か月のリーグ期間に試合を行う。この全12球団のうち11球団が登録法人名として企業名を冠している。唯一の例外の読売巨人軍も、「読売新聞巨人軍」ではないにせよ、「読売」が新聞名のため実質的にはすべての球団が企業名を用いていると考えてよいだろう。また通称に限って言えば、巨人と広島を除く10球団で企業名が用いられている。千葉ロッテマリーンズは「ロッテ」、福岡ソフトバンクホークスは「ソフトバンク」といった具合である。このことは球団がどうしても親会社の意向に左右される面があるということを意味している。

親会社はそもそも広告・宣伝の材料として球団を保有しているのであるし、球団経営が苦しくなったときには親会社の財政支援なくしては存続できない。そのこともあって、球団における管理部門の人事は親会社がかなり影響力を有していると考えられるのである。

ところで日本のプロフェッショナル野球組織は3つの機関を持つ。「オーナー会議」「実行委員会」「コミッショナー」である。オーナー会議は各球団のオーナーが出席するもので大きな案件が裁かれる。ただし通常オーナーは多忙であるため、小さな案件は各球団から送られてきた実行委員による実行委員会にて決議される。オーナー会議にて選ばれるコミッショナーは組織を代表する人であり、すべての球団・個人はコミッショナーが下す裁定に従わねばならない。コミッショナーは公平性を求められるため、裁判官や検事、警察上がりの人などが多い。

しかし日本の場合、規則上はコミッショナーが最高責任者であるにもかかわらず、実質的な決定はオーナー会議でされてきており、コミッショナーが飾り物になっているイメージが強い。アメリカにも同じコミッショナー制度があるが、アメリカの場合コミッショナーはかなりの権限を保有して、制度改革にイニシアティブを発揮している。

選手側の評価
Donald Miralle/DigitalVision/Thinkstock

選手と球団の契約については、日本のプロ野球制度を規定している野球協約に明記されている。選手と球団との間で交わされる書類は統一契約書と呼ばれ、種々の労働条件が記されている。日本のプロ野球の場合は単年契約が一般的であり、選手は毎年球団と契約を更新する必要がある。選手と球団の関係を雇用者と被雇用者と見る向きもあるが、労働統計上選手は自営業者として扱われている。

その理由は3つある。1つは、一般企業であれば労働組合の代表が雇用者と賃金交渉を行うのに対し、選手は個々に球団と年俸を交渉するからである。2つ目は、サラリーマンの場合、雇用契約は無期限であることが暗黙のうちに了解されているが、選手の場合原則的に契約は1年ごとであるためだ。そして3つ目は年金の観点だ。以前はプロ野球選手にも企業年金制度が適用されていたが今では加入しておらず、かつ厚生年金にも加盟していない。

また、従業員5人未満の企業や個人商店などの自営業者は国民年金に加入するのが普通だが、プロ野球の場合加入していない選手が多い。

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