高校野球の経済学

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高校野球の経済学
ジャンル
著者
中島隆信
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年06月10日
評点(5点満点)
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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レビュー

現在、日本高校野球連盟には、日本全国高等学校の約85%が加入しており、そのうちの男子高校生の約10%が野球部に所属している。春の選抜高等学校野球大会(センバツ)と、夏の全国高等学校野球選手権大会の試合はすべて全国放送であるNHKで放送されており、高校野球が人気コンテンツであることに疑問の余地はない。

100年以上もの間、国民から愛されつづけられている高校野球の魅力は、実際にプレーを行う高校生だけにあるのではなく、審判や日本高校野球連盟の役割によるところも大きいと著者は主張する。というのも、高校野球は勝敗を争うスポーツでありながら、高校部活動の一部である「教育性」、日本全国の都道府県を巻き込む「文化性」、利益を追及しない「非商業性」と、うまくバランスをとって運営されているからである。そういう意味で、高校野球は、たんなるスポーツという枠を超え、日本文化の1つのあらわれだと見なすこともできるだろう。

本書は、非商業性を謳っている高校野球が実際にどのように運営されているのか、そして日本高野連や審判が高校野球にどのように携わっているのかを、先に述べた4つの性質から、歴史を織り交ぜつつ分析している。

高校野球がなぜ、長期間に渡って絶大な人気を誇るのか。本書を読めば、そのカラクリが手に取るように分かるようになるはずだ。

渡辺 智美

著者

中島 隆信(なかじま たかのぶ)
1960年生まれ、83年慶應義塾大学経済学部卒業。
現在、慶應義塾大学商学部教授、博士(商学)。
著書:『日本経済の生産性分析』(日本経済新聞社、2001年)。
『大相撲の経済学』(東洋経済新報社、2003年)。
『お寺の経済学』(東洋経済新報社、2005年)。
『オバサンの経済学』(東洋経済新報社、2007年)。
『障害者の経済学(増補改訂版)』(東洋経済新報社、2011年)。
『刑務所の経済学』(PHP研究所、2011年)。
『経済学ではこう考える』(慶應義塾大学出版会、2014年)。
『家族はなぜうまくいかないのか』(祥伝社、2014年)、他。

本書の要点

  • 要点
    1
    高校野球は、試合内外において、非効率的なスポーツである。
  • 要点
    2
    高校野球の魅力の1つである「高校生らしさ」は、トーナメント方式の採用、試合時間、そして甲子園という舞台がうまく組み合わさって演出されている。
  • 要点
    3
    教育性・競技性・文化性・非商業性という4つの要素のバランスをうまくとることで、高校野球の人気は維持されている。
  • 要点
    4
    今後は、高校野球からプロ野球選手に進むという道以外の選択肢も開拓しなければならない。

要約

非効率的なスポーツとしての野球

野球はアンバランスである

野球は、じつに効率の悪いスポーツである。野球で1つのチームをつくるためには、投手・捕手、内野手、外野手の最低9人が必要だ。しかし、守備のときに活躍するのは、ほとんど投手と捕手だけであり、逆にその他の選手は、自分の近くにボールが飛んで来ないかぎり、動く必要すらない。また、攻撃に回ると、3アウトを取られるまでは、原則的にいつまでも攻撃を続けてよいことになっている。

しかし、甲子園などの高校野球の大会ではトーナメント制が採用されているため、引き分けが存在しない。つまり、試合の決着が決まるまで、試合は続くことになる。早く試合を終わらせたいのであれば、交代の時間を短縮したり、なるべく早く打席に立ったりしたりなど、試合の進行を早くするほかないのである。

野球の費用はバカにならない
Ingram Publishing/Thinkstock

野球は、試合以外においても非効率的なスポーツだといえる。学校側にとっても生徒側にとっても、野球をするためには高いコストを払う必要があるからだ。

学校側が抱える主なコストは、野球用グラウンドの確保である。野球をするためには、サッカーの約2倍の広さのグランドが必要だ。また、高校野球で使用される硬球は固すぎるうえに遠くに飛びやすいため、安全面を考慮すると、他の部活と分割してグラウンドを使用することもできない。

さらに、生徒側も、野球をするために、さまざまな道具を揃えなければならない。ヘルメット、グローブ、金属バット、靴、試合用ユニフォームなどをすべて揃えると、費用はバカにならないものになってくる。くわえて、遠征費にもお金がかかる。すべてを含めると、保護者は授業料の他に、年間約23万円の費用を払わなければならないという計算になる。

【必読ポイント!】 日本の高校野球の特殊性

高校野球は「教育の一環」である

高校野球、つまり日本高野連に所属している高校の野球部は、「平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的」とし、野球を「人間形成を行う場所」として位置づけている。学力試験によって入学を許可するように、野球の能力にもとづいて入学させることができるのも、高校野球が「教育の一環」と見なされているからだ。

一方、教育という現場である以上、学校側は生徒の希望をきちんと聞き入れる必要がでてくる。たとえば、一般入試で入学した学生が、野球部への入部を希望した場合、それを排除することはできない。その結果、野球部の人数が必要以上に多くなってしまい、効率的な練習が行えない高校も出てきている。

高校野球は商業性のないイベントなのか
cosmin4000/iStock/Thinkstock

日本の高校野球の別の大きな特徴として、商業性の排除にも注目しておきたい。「日本学生野球憲章」によれば、高校野球は「経済的な対価を求めず、心と身体を鍛える場」であり、「学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない」とされている。そのため、人気のありそうな強豪校同士の試合を企画しチケット販売したり、注目選手がコマーシャルに出て企業からお金をもらったり、ユニフォームに企業名を入れて企業から広告料をもらうことは全面的に禁止だ。

しかし、私立学校が「教育上の目的」という名目のもと、野球部に力を入れ、甲子園に出場させることで、学校経営に役立てているというのもまた事実である。

「高校生らしさ」という魅力

高校野球の魅力の1つに、「高校生らしさ」というものがある。トーナメント方式の採用、2時間以内での試合進行、そして甲子園という舞台――これらがうまく組み合わさって「高校生らしさ」が演出され、人気を博しているというわけだ。

高校野球では、ある一部の地方大会を除いて、トーナメント方式が採用されている。

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高校野球の経済学
未 読
高校野球の経済学
ジャンル
経営戦略 マーケティング
著者
中島隆信
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年06月10日
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