日本の盛衰
八十年周期

著者は本書で日本再生に向け経営者が何を志すべきか、その経営哲学を指南している。その前提として押さえておくべきは、日本の現状に対する著者の憂いであろう。1985年に経済発展の頂点を迎えた日本は、方向転換を促す警鐘があったにもかかわらず、旧来通りの経済成長をつづけるためカンフル剤を継続的にうった。補正予算を組み公共投資を続け、財政出動を繰り返すことでその場しのぎをつづけた結果、バブル経済が崩壊し、その後「失われた二十年」と称されるほど後遺症が続いた。現在の国債残高はGDP比で200%を超え、もはや破綻寸前の様相を呈している。日本の近代史を振り返ると、40年ごとに「盛」と「衰」が転換する八十年周期が見てとれる。明治維新で勃興した日本が四十年後の1905年に日露戦争の勝利で頂点を迎え、40年後に第二次世界大戦の敗戦、1985年に経済的なピークを迎えている中で2025年には「衰」の底に至ろうとしている。それまでにわれわれに残された時間は刻々と短くなるばかりだ。
激しい闘争心を燃やす

そのうえでいまの日本に必要なのは、いわば「燃える闘魂」であると著者は語る。著者は事業を成功させるために時代や環境の違いに関わらず必要なことがらとして、以下の十二カ条をまとめている。一、 事業の目的、意義を明確にする二、 具体的な目標を立てる三、 強烈な願望を心に抱く四、 誰にも負けない努力をする五、 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える六、 値決めは経営七、 経営は強い意志で決まる八、 燃える闘魂九、 勇気をもって事に当たる十、 常に創造的な仕事をする十一、 思いやりの心で誠実に十二、 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心でこのなかの第八条「燃える闘魂」こそ、いまの日本に必要なものだと著者はいう。ビジネスの世界において、リーダーはどのような厳しい状況に遭遇しようとも、「絶対に負けない」という激しい闘争心を燃やし、その姿を部下に示していかなければならない。経営者は格闘技の選手にも勝るとも劣らないほどの気迫と闘魂が求められるのだ。
【必読ポイント!】「燃える闘魂」の経営
本田宗一郎氏との出会い
著者が会社を創業して間もない頃、温泉旅館を借りた経営セミナーに当時は大金である数万円を支払い参加する。姿を現した目当ての本田宗一郎氏は作業着姿で登場し、開口一番一喝する。