プライベートバンカー
カネ守りと新富裕層

未 読
プライベートバンカー
ジャンル
著者
清武英利
出版社
講談社
定価
1,728円
出版日
2016年07月12日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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プライベートバンカー
プライベートバンカー
カネ守りと新富裕層
著者
清武英利
未 読
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ジャンル
出版社
講談社
定価
1,728円
出版日
2016年07月12日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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レビュー

プライベートバンクとは、富裕層の資産を管理・運用する銀行である。そこで資産家たちのために働く者は、プライベートバンカーと呼ばれる。シンガポールなどの海外のプライベートバンクはジャパンデスクを構え、日本の金融機関や証券会社などの出身者をスタッフとして揃えて、日本の資産家たちに対応している。

日本の資産家たちが海外のプライベートバンクに資産を預ける主な理由は、相続税などの税金対策である。日本の税法には抜け道があり、通り抜けるためには海外に移り住むことも厭わない。プライベートバンカーは、資産家たちのそのような相談にものる。

プライベートバンカーに課せられたノルマは桁違いである。日本から意気揚々と渡ってきた者でも、その厳しさと銀行内部の悪しき慣習に戸惑いと憤りを隠せず日本へ戻ってしまうぐらいだ。我慢を続けて自らの進む道を見いだした者もいれば、大金の持つ魔力に魅せられて過ちを犯した者もいた。国税庁は国内でしか追及できない「内弁慶」と見られているが、次々に対策を立てて海外の資産を掌握しようとしている。けっして黙って見ているわけではない。

本書は、銀行関係者の証言や実際に海外で暮らす成功者たちへの取材を基にまとめられたノンフィクションである。資産がどのようなきっかけで海外に流れ、普段はその実態を知られることがないプライベートバンカーたちがどのような仕事をし、そして国税庁がどのように目を光らせているのかが詳細に描かれている。

山崎 裕介

著者

清武 英利(きよたけ ひでとし)
1950年宮崎県生まれ。立命館大学経済学部卒業後、75年に読売新聞社入社。青森支局を振り出しに、社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。中部本社(現中部支社)社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、2004年8月より読売巨人軍球団代表兼編成本部長。11年11月、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任され、係争に。現在はノンフィクション作家として活動。著書『しんがり 山一證券 最後の12人』(現在は講談社+α文庫所収)で2014年度講談社ノンフィクション賞受賞。主な著書に『奪われざるもの SONY「リストラ部屋」で見た夢』(講談社+α文庫)、『特攻を見送った男の契り』(WAC BUNKO)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の資産家たちの一部は、相続対策のために「5年ルール」という抜け穴を通ろうとして、シンガポールなどの「オフショア」に渡って生活をする。
  • 要点
    2
    富裕層の資産を管理して運用するのがプライベートバンクで、そこで働くプライベートバンカーは資産を守る「カネの傭兵」である。
  • 要点
    3
    国税庁は税逃れを見逃すつもりはない。税制改正やOECD加盟国との連携で阻止しようとしている。国内外の金融口座の情報が国税庁のコンピュータに蓄積される時代が到来するとも言われている。

要約

成功者たちの「行先」

「5年ルール」という抜け穴
Pinkypills/iStock/Thinkstock

日本で成功を収めた資産家たちが海外に渡り、資産を現地の銀行に移すとする。目的は何か。

その答えは節税、そして「税逃れ」である。資産家たちは使い切れないほどの資産を抱えると、目減りさせずに跡継ぎに残したいと考える。しかし、日本国内に残したままでは相続税を払う必要に迫られる。

そこで、資産家たちは通称「5年ルール」という日本の税法の抜け穴を通ろうとする。これは、被相続人(親)と相続人(子)がともに5年を超えて日本の非居住者である場合は、日本国内の資産にしか課税されないという仕組みである。

ただし、日本の税法には「非居住者」について明文規定がない。1年の半分以上を海外で過ごせば、日本での非居住が証明できると解釈されている。つまり、資産家たちが1年の半分以上を海外で過ごし、これを5年以上続ければ海外の資産については相続税を払わなくても済むということである。

一見すると、5年ルールは資産家たちにとってこれ以上ない抜け穴であるが、実際は途中で挫折する者も多いという。その理由は「退屈」である。特に一代で成功した資産家たちの多くは、バイタリティにあふれている。税逃れのために海外に移っても、特にすることがなく時間をつぶすことにたまらなく苦痛を感じるようだ。彼らは「5年の我慢」と自らに言い聞かせて、日本に戻ることができる日を待ち望んでいる。

なぜシンガポールなのか

日本の資産家たちが移住先にシンガポールを選ぶ理由とは何か。

まず、治安が良く日本との時差が1時間しかないことである。それに在住の日本人が多いために日本語が通じる「ムラ」がある。語学力が備わっていなくても住むだけなら問題ない。

そして、シンガポール政府が「オフショア」として富裕層を優遇する政策を打ち出していることである。オフショアとは課税優遇地という意味を持つ。優遇策によって相続税、地方税、株式の売買益に関する課税が発生せず、シンガポールの所得税率は最大20%で日本の半分以下にあたる。

かつてシンガポールは、オフショアなのか脱税の温床であるタックスヘイブン(租税回避地)なのかについてグレーゾーンにいた。しかし、現在はOECD(経済協力開発機構)が定めたタックスヘイブンの判定基準からは外れ、オフショアとして扱われている。このため堂々と富裕層の資産を受け入れることができるのである。

富裕層の資産を管理して運用するのがプライベートバンクである。そこで資産家のために働くプライベートバンカーは、1億円以上の資産を持つ者しか相手にしない。大金持ちの資産を守るために存在する「カネの傭兵」で、高い信託報酬を求めることでビジネスが成り立つ。

【必読ポイント!】 バンカーたちの葛藤

「鉄砲玉」の元証券マン
Medioimages/Photodisc/Thinkstock

2010年5月、杉山智一がシンガポールに降り立った。シンガポール銀行(BOS)でプライベートバンカーとして働くためだ。

BOSは当時、日本の富裕層を対象にしたジャパンデスクを構え、日本人スタッフを探していた。杉山は当時40歳で、野村證券に12年勤めた経験を持つ。ヘッドハンターの仲介によってジャパンデスク責任者の桜井剛(仮名)と出会い、シンガポールに渡ることを決めた。

ただし、杉山はBOSでプライベートバンカーとして働くにあたって、1年以内に1億ドルを集めて、百万ドルの収益を上げるという無茶な条件を受け入れた。後先考えずに飛び出してしまう性格から「鉄砲玉」と呼ばれたこともある。今回も鉄砲玉のごとく海を越えた。

崩せない牙城

BOSジャパンデスクでの初日、腑に落ちない出来事があった。

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清武英利
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