採るべき人 採ってはいけない人

採用に悩む小さな会社のための応募者を見抜く技術
未読
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採るべき人 採ってはいけない人
ジャンル
出版社
秀和システム

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出版日
2016年11月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「説明会で質問しない人はやる気がない」「グループワークで発言が少ない人は理解力がない」「突飛な発言が多い人はクリエイティブ」……こんな思い込みをしていないだろうか。こうした既成概念に依存していると、「採ってはいけない人」を採用してしまう可能性がある、というのが本書に通底した主張だ。特に中小企業にとって、「採ってはいけない人」を採用するリスクは非常に大きいのだという。では、どのような人材が本当に「採るべき人」なのだろうか。

本書は、仕事で必要とされる能力を「仕事力」とあらわし、その能力を持つ人材を見極めるための方法を指南している。そして、その人のもつ仕事力とは、「言ったこと」や「書いたもの」ではなく、行動によってのみ示されるものというのが著者の見解である。

とはいえ、採用面接の時間は短いため、それだけではその人のもつ本質を見きわめることはむずかしい。そこで、面接に頼りすぎず、その人の行動情報をできるだけたくさん集めることが、優秀な人材を採るための第一歩であると著者は提言する。

グループワークや説明会、採用面接などの具体例をまじえながら、見るべきポイントがわかりやすく示されているため、ページをめくっていくだけで、著者の伝えたいことがスッと頭に入ってくるだろう。会社の採用担当者はもちろん、就職活動をしている学生にとっても、組織の一員として必要な心構えを学ぶうえで、きわめて参考になる一冊だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

奥山 典昭 (おくやま のりあき)
概念化能力開発研究所株式会社代表取締役
アセスメントセンター(米国発の能力分析手法)のプロフェッショナルアセッサー
会社設立以来16年間にわたって積み上げた「人を観る技術」を駆使して、クライアント企業の組織再編や人材採用を支援する。2009年以降は、他にあまり類を見ない「アセスメントセンターを使った新卒採用アセスメント」の依頼が増え、毎年2000名以上の大学生の「仕事力」と向き合うことになる。2012年に「採用アセスメントの内製化支援」の取り組みを始め、今では、連日、「応募者の本質を見抜くプロのノウハウ」をクライアント企業の経営者と若手社員に伝授する仕事に追われる。自分の中に散乱する理論を体系化して人に教えることの難しさを痛感する反面、「若い人を育成する喜び」に目覚め、卒業した「教え子」たちがプロ顔負けのアセスメントを見せてくれると、無性に嬉しくてつい涙腺が緩む今日この頃である。
著書に『デキる部下だと期待したのになぜいつも裏切られるのか』(共著・ダイアモンド社)、『間違いだらけの優秀な人材選び』(こう書房)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    中小企業だからこそ、誇りを持って採用に臨むべきだ。中小企業は大企業よりも、優秀な人材を必要としている。
  • 要点
    2
    採用はリスクと隣りあわせである。採用ミスは会社の重大な損失につながりかねない。
  • 要点
    3
    面接という限られた時間だけでは、その人の本質の見きわめることはむずかしい。その人の「行動」を見る機会を増やし、観察することで本当の能力が見えてくるものである。
  • 要点
    4
    大切なのは、情報を使う「仕事力」、利他的に動ける「大人の意識」、やるべきことを的確にこなす「対象に向きあう力」だ。

要約

「生産性の高い人材」を採用するために

誇りを持って本物を求める
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

「優秀な人材は大企業に多く、中小企業には少ない」という固定観念に縛られている中小企業の社長や採用関係者は多い。だが、そのような考えをもっていると、「中小企業は優秀な人材を採用する必要がない」という採用観をもってしまいかねない。

大企業の場合、「提供するサービスや商品を常に同質に保たなければならない」という社会的責任がある。だから、いかなる社員が携わっても、最終的には品質が維持されるように、さまざまな仕組みが施されている。

一方、中小企業では、場合によっては入社したその日から自分の頭で考え、自分の足で動くことが求められる。そのため、自力で成果をあげられる人材がひとり入社するだけでも、生産性の向上に大きな影響をおよぼす。

中小企業が人を採用することの意味と価値は、大企業の採用とは比較にならないほど大きい。中小企業はこのことを再認識し、誇りをもって採用活動にあたるべきだ。

採用は大きなリスクと隣りあわせ

人を採用するときはウキウキするものである。しかし実際のところ、採用活動というのは、退職勧奨、懲戒解雇、労働審判、訴訟といった、血生臭いものと常に背中あわせの世界だ。問題の多い社員は、社長や管理職の心を蝕み、会社に大きな損失をもたらしてしまう。だからこそ、採用は大きなリスクと隣り合わせだということを十分に認識しておく必要がある。リスクマネジメントこそが、採用活動の本質なのだ。

できない人材を見抜くうえでは、「リスクをつぶしていった結果、どこにも見つからなければ優秀な人材である」という、一見すると後ろ向きに感じられるアプローチが重要になる。厳しい視点を持ってストイックな採用を貫いた会社だけが、後にみんなで笑いあえることを肝に銘じなければならない。

何を見て採用するのか

勉強と仕事の頭は別物

勉強で使う頭と、質的生産性の高い仕事に必要な頭はまったくの別物だ。学力の高さを見て、「優秀な仕事人」をイメージするのは見当違いである。

「それぞれ頭の機能が違うのだから、学力の高い人に仕事力の足りない人がたくさんいるのは当たり前」であり、「学力がそれほどでもない偏差値の低い大学の学生の中に、仕事力の高い人が一定数存在するのも当たり前」と、合理的に捉えられることが、生産的な採用活動への第一歩となる。

人材を採用する際は、経歴や学歴などの「持ち物」に惑わされず、応募者という「使い手」の能力に目を向けなければならない。

面接を過信するな
BrianAJackson/iStock/Thinkstock

採用面接でとらえることのできる能力情報は、いわゆるルーティンワークや、仕事を覚える力に関係があるものが多い。一方で、問題解決やマネジメントといった、レベルの高い仕事に対応するための能力、たとえば「未知の場面で動く力」や「ゼロからイチを産む力」は、採用面接ではほとんど見きわめることができない。

たしかに採用面接は、応募者と採用側のニーズを確認しあうための情報交換の場として必要不可欠だ。だが、その限られた時間を、応募者の能力を見きわめる唯一の機会と位置づけているかぎり、採用ミスが減ることはない。採用面接だけで人を判断するのは危険なのである。

応募者と向きあうことができる場所は、なにも面接だけではない。応募者の行動を観察できる機会を増やし、応募者の行動情報に少しでも多く触れることが、「面接では見えにくい能力」にアプローチするための手がかりとなる。

本当に見るべきなのは「行動」だけである

エントリーシートや説明会のアンケート、市販の適性検査、グループワークや面接での発言内容など、応募者が「言ったこと」「書いたもの」は枚挙にいとまがない。しかし、そのような情報は、採用されるために創作されたものである可能性が高い。そもそも、応募者が採用側の喜びそうなことを書くのは当然のことである。ゆえに、こうした情報はあくまでも参考程度に留めておかなければならない。

その人のもっている能力を本当に表現するのは「行動」だけである。その人の行動特性を見定めたければ、「何をしたか」という行動情報をたくさん集めることが肝要だ。そのためには、エントリーシートや発言内容に注目するのではなく、

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要約公開日 2017.05.04
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