努力不要論

脳科学が解く!「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本
未読
努力不要論
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努力不要論
出版社
フォレスト出版

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出版日
2014年07月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「努力は報われるのか?」こうした疑問を一度でも抱いたことがあるなら本書を読むべきだ。この問いの真意、努力の危険性と正しい努力の方法、夢をかなえるための才能の伸ばし方を余すことなく紹介したのが本書だ。

脳科学者の著者は脳の研究を進めていくうちに、「努力」には心理的な罠が潜んでいることに気がついたという。世の中には、じつに無意味な努力を重ね、そのうえ搾取されてしまっている人が多いというのだ。そして「周りの人に自分の存在意義を認めてもらうために努力をするのはもうやめよう」と訴える。むしろ、できるだけ苦しい努力をせずに、しなやかに生きることこそが大事なのだ。

多くの人間は、死の間際になると「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」と口にするそうだ。そのほか「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てばよかった」「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」といった言葉も多いという。本心に反した努力に意味があるのかと、自問自答せざるをえない。

無理な努力をせずに生きるためには、自分よりも能力のある人を見抜き、その人の能力を認めること。そして自分の才能を発揮しやすい生き方をすることである。「努力をしなくても幸せに生きられる」という事実には目を見開かされるにちがいない。

努力信仰に陥っている人にこそ本書をお薦めしたい。本来の自分を取り戻し、今以上に楽に生きるヒントを数多く得られるのではないだろうか。

ライター画像
名久井梨香

著者

中野 信子(なかの のぶこ)
1975年生まれ。東京都出身。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了(2004年)、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了(2008年)。その後、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務(2008~2010年)。現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆活動を精力的に行っており、『脳内麻薬』(幻冬舎新書)、『サイコパス』(文春新書)、『生きるのが楽しくなる脳に効く言葉』(セブン&アイ出版)などベストセラー多数。テレビやラジオでも活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者は努力が目的になった努力信仰に警鐘を鳴らし、「自分がしている努力は、本当に自分がしたいことなのか」を問うことが重要だと述べている。
  • 要点
    2
    「儲かること」「役に立つこと」を追求する努力は野蛮であり、本来は「遊び」をもっと重視するほうが人生が豊かになる。
  • 要点
    3
    誰かを妬ましく思うのは、自分の才能に気がついていないからである。自分の資質を理解し、その才能を伸ばす適切な努力をすることが重要だ。また他人の才能を認め、うまく周りを動かしていくことも必要となる。

要約

努力は人間をダメにする

本当に努力は報われるのか?

「努力は報われる」という言葉は、半分は本当で、半分は美しい虚構である。脳は酸素要求量も栄養の要求量も大きい臓器であるため、なるべく無駄なことはせず、リソースを節約しようとする。そのため、覚えないで済むこと、考えないで済むことをわざわざ覚えるのは、不可能といってよい。つまり、脳は負荷をかけないと機能しないのである。この負荷こそが努力であり、適切に努力した人は、やった分だけ自分のポテンシャルを引き出せるようになる。

この点から言えば「努力は報われる」は本当である。しかし、たとえば走るのが嫌いな人が、努力をすればウサイン・ボルトのようになれるといったら、どう考えても無理である。その意味では、「努力をすれば報われる」は嘘である。実際のところ、才能は遺伝的に決まっている。かの有名なエジソンは「1%のひらめきと99%の努力」という名言を残しているが、この真意は「99%努力しても1%のひらめきがなければ無駄」ということだそうだ。

努力が目的になっていると危険
AnaBGD/iStock/Thinkstock

努力には「時間をかける」「身体や精神に負担をかける」といったイメージがある。この考えにとらわれていると、努力すること自体が目的になってしまいがちだ。「努力している自分」に喜びを感じていると、冷静に判断する力が弱まり、危険である。

ある研究結果によると、ダイエット中の人が「今日はほとんど食べなくてよかった」と認知していると、倫理的に悪いことをする傾向が高いという。ヒトは我慢の限界を超えると、「自分はこれだけ正しいことをしたんだから許される」という言い訳を、脳内で無意識のうちに行い、羽目を外してしまうというのだ。こうした努力中毒にならないためには、時折一歩引いて、「自分がしている努力は、本当に自分がしたいことなのか」と問い直すことである。

適切な努力の方法とは、(1)目的を設定する、(2)戦略を立てる、(3)実行するという3段階のプロセスを踏むことである。苦労した分だけ成果が出るというのは間違いだ。

日本人にとって努力とは何か?

努力信仰は明治時代に生まれた
m-ikeda/iStock/Thinkstock

「努力すればなんとかなる」。こうした非合理的な努力信仰と呼ぶべき精神が日本にはびこるようになったのは、明治時代以降である。きっかけは薩長出身の武士たちが、江戸っ子たち都会人にバカにされてはならないという焦燥感、欧米列強に追いつかなければならないという圧力だったという。彼らはマイナスの自己評価をしており、理想とのギャップを埋めるために、努力で積み上げていこうとした。

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要約公開日 2017.08.26
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