10秒で人の心をつかむ話し方

「前説」のプロが教える声・表情・姿勢
未読
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10秒で人の心をつかむ話し方
出版社
出版日
2017年08月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

飲み会で突然、挨拶を一言求められて冷や汗をかいたことはないだろうか。人前で話すのをできるだけ避けたがっている人は少なくないだろう。そんな読者にお届けしたいのが、「聞き手の心をつかむ話し方」を一挙公開した本書である。

著者は演劇集団キャラメルボックスで製作総指揮を務める加藤 昌史氏だ。800人を収容できる公演会場で4000ステージ以上の「前説」を行っている。前説とは、開演直前の舞台に立ち、観劇における注意事項やDVDやフォトブックといった物販の紹介を短時間で喋る。いわば、舞台と客席を繋ぐ役割である。

著者によると、人前で話す時は最初の「10秒」が肝心だという。登場して喋り出す10秒間、聞き手は声を聞いて、表情と姿を見る。このわずかな間に、「面白そう」か「つまらない」かを判断する。著者は32年間にわたり、前説によって観客をワクワクさせてきた経験から、「最初の10秒で人の心をつかむ話し方」を作り上げた。人前で話す時に意識する「一声二顔三姿」や、相手の印象にバッチリ残る「加藤式自己紹介」の仕方、ピンチの切り抜け方、表現力を磨くためのトレーニング。こうした大充実の内容が本書に詰まっている。

人前で喋ることに慣れていない。失敗の許されないプレゼンが迫っていて緊張している。結婚披露宴のスピーチを頼まれている。本書はこうした状況にある人の救世主的な存在となってくれるに違いない。

著者

加藤 昌史(かとう まさふみ)
演劇集団キャラメルボックス製作総指揮。
1961年、東京生まれ。早稲田大学教育学部在学中に芝居に出会い、85年、成井豊らと演劇集団キャラメルボックスを創立。91年、演劇製作会社・株式会社ネビュラプロジェクトを設立し、代表取締役社長に。その傍ら、日本有数の動員力を誇る劇団のプロデューサーとして32年間4000ステージ以上にもわたって、芝居の始まる前に舞台に立ち、物販の紹介と観劇マナーを説明する「前説」を続けている。著者に『人の前に出る仕事の人へ。』『僕が元気にヤセた理由』『拍手という花束のために』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    最初の10秒で聞き手の心をつかむには、「一声二顔三姿」を意識することが大事だ。
  • 要点
    2
    聞き手を惹き付けるには、話の内容だけではなく伝える順番も大事である。著者は(1)ツカミ(2)解説(3)クライマックス(4)まとめという構成をお薦めしている。
  • 要点
    3
    自己紹介を聞き手に覚えてもらうための必殺技にするとよい。自分の好きなものを書き出して、聞き手が興味を抱くような2分程度のスモールストーリーを作り上げる。さらに、その短縮版の自己紹介も作り、一言しか話せない状況でも相手の記憶に残るように準備する。

要約

「一声」

自分の「いい声」を知る
AntonioGuillem/iStock/Thinkstock

芝居の世界では、良い役者の素養は「一声二顔三姿(いちこえにかおさんすがた)」と言われる。一番大事なのが「声」で二番目に「顔」、三番目が「姿」という意味である。これら3つは人前で話す時も同じく重要である。

「いい声」とは「聞き手がよく聞きとれる声」を意味する。皆が聞き惚れるような美声である必要はない。ハスキーボイスでも低い声でも、聞き手に何を話しているのかがしっかり伝わるのがいい声だ。自分のいい声を見つけるためには、自分の本当の声を知る必要がある。

まず、自分が話している様子をスマートフォンのボイスレコーダー機能を使って録画か動画撮影をすると、自分の本当の声がわかる。普段自分が聞いている声と、実際に自分が話している声は違う。その違いの中に「いい声」が隠れている。

いい声を見つけるには、消防車のサイレンのマネをするとよい。昔のサイレンは手回しで、低い「う〜」という音から始まり、回転を速くすると徐々に音が高くなる。その音をマネして、「う〜」「あ〜」と低い声から始めて、自分の限界の高い声までゆっくり上げていく。これを何回か繰り返すと、「気持ちよく額の真ん中辺りに響く音」が見つかる。これが自分の一番響く声であり、聞き手に届くいい声だ。

あとは日常会話でも「額の真ん中辺りに響いているか」を意識して声を出す。それを録音して聞きながら声を調節していけば、誰でもいい声で話せるようになる。

最初の10秒は「バズーカ砲を撃つ声」で

人前で話す時、特に大事なのは最初の10秒の声である。消え入りそうな第一声から始まると、聞き手を不安な気持ちにさせてしまう。

そのため、最初の10秒は会場にいる全員に声が届くように、高めの大きな声から入るのが基本だ。これが「バズーカ砲を撃つ声」である。バズーカ砲と言っても、大声でがなりたてるわけではない。バズーカ砲を撃つ声は、商店街の店主の声をイメージするとよい。商店街が賑わっていても、店主の「奥さん、今日はサンマが安いよ」という声は不思議なくらいよく通る。これは、店主が長年の経験から騒音の中でも響く、高くて大きいバズーカ砲を撃つ声を会得しているからだ。

最初の10秒以降は「水撒きの声」を意識するとよい。植物の葉や花を痛めないよう、ホースの先をつぶして水をやるイメージで、会場の隅から隅まで声を届ける。前に座っている聞き手に対しては、優しく水を掛けるように少し声を落とす。一方、遠くにいる聞き手には、ホースの水圧を上げるように少し強くて高い声を意識する。

つまり、聞き手の人数や話す方向によって、声の音質とベクトル、飛ばし方を変えることが大事である。

「二顔」

表情で9割の印象は決まる
Poike/iStock/Thinkstock

二番目に大事な顔とは、顔の造りではなく「表情」のことだ。人前に出る時は、何があろうと「笑顔」が欠かせない。暗い表情で舞台の袖から出てくると、聞き手のワクワク感が消えてしまう。眉毛を上げて、口元で微笑む程度の自然な笑顔を心がけたい。

では、笑顔を魅力的なものにするにはどうすればいいのだろうか。

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要約公開日 2017.12.05
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