ミレニアル起業家の 新モノづくり論

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ミレニアル起業家の 新モノづくり論
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ミレニアル起業家の 新モノづくり論
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出版日
2017年09月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、アマゾン。世界中の人々が熱中するサービスを見ると、その多くがアメリカ発だとわかる。もちろん、日本発のインターネット系サービスも健闘しているが、海外での認知度という点では先述したサービスにはまだ遠く及ばない。

では、なぜ世界で活躍する日本のインターネット系の企業が少ないのか。著者によると、その理由は大きく2つあるという。1つはインターネット産業の遅れ、そしてもう1つは1980~90年代に生まれた人々「ミレニアル世代」への理解不足だ。ミレニアル世代が消費や労働の中心になりつつある今、彼らの価値観を理解せずして事業を成功させることは難しい。ミレニアル世代が追い求めるトライブ、消費の基準となるストーリーとは何か。ミレニアル世代が起業するうえで大事なことは何なのか。本書を開けばその全貌が明らかになる。

著者は、「ウォンテッドリー」というビジネスSNSを生み出した、ミレニアル世代の起業家である。ウォンテッドリー株式会社は、2017年8月に東証マザーズに上場を果たし、着々と海外展開を進めている。そんな著者ならではの視点や分析は、読んでいてまさに「ココロオドル」ほど面白い。

ミレニアル世代のビジネスパーソンはもちろん、彼らをターゲットに据えて事業拡大を進める経営者の戦略の書としても、学びの多い1冊である。ミレニアル世代の「今」を知るには本書を読むしかない。

ライター画像
二村英仁

著者

仲 暁子 (なか あきこ)
ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEO。1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、フェイスブック・ジャパンに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、ビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。現在はシンガポールをはじめ、アジアでも事業を展開している。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の経済成長が鈍化している理由は、インターネット産業の発達の遅れと、ミレニアル世代に対する理解不足である。
  • 要点
    2
    ミレニアル世代は自分のストーリーを追うことに価値を置く。ストーリーとは、自分のなりたい自分像や理想の世界の状態を指す。
  • 要点
    3
    ある「快適なパターン」に共感した人が集まってできる共同体を「トライブ」と呼ぶ。人にとって究極の幸せとは自分の所属するトライブへの貢献である。人は「己を知る」「己の快を知る」「己の快で生きる」「他人の快を理解する」という4つのステップを踏んで成長していく。

要約

取り残される日本

鈍化する日本の経済成長と今後の課題

日本の経済成長が鈍化している理由は何か。1つはAI、ロボット、IoTなどを含む広義のインターネット系の産業構築の遅れである。もう1つはインターネットとは切っても切れない関係にある、1980〜2000年代初頭に生まれたミレニアル世代に対する理解不足だ。

2016年9月末時点における世界の時価総額上位30銘柄を見ると、5位までを独占するのはアメリカ企業だ。しかも全て広義の意味でのインターネット産業である。一方日本は、トヨタ自動車がかろうじて28位に入っている状況だ。この結果から、世界経済をけん引するインターネット産業において、いかに日本が活躍できていないかがわかる。

当然日本も、問題意識を持っており、AIやロボット産業を生み出す必要性を感じている。しかし、まだ具体的な道筋は描けていない。こうした現状を打破するには、ミレニアル世代の価値観を理解し、彼らに合った事業や組織づくりを進めていくことが欠かせない。

日本発が消えた理由
ipopba/iStock/Thinkstock

今から約30年前の1980年代後半は、海外でも名の通る日本企業があった。それなのになぜ今は、海外でも存在感の大きいインターネット系の企業が現れないのか。

よく理由として挙げられるのが、かつては物理的なもの(ハードウェア)を販売しており、英語という言葉のハードルも超えやすかったから、というものだ。しかし、著者はそうではなく、初期投資の大きさの問題である可能性が高いとみている。

ソフトウェア事業の初期投資は人材投資がほとんどなので、海外に渡って現地の人を採用すれば、事実上の海外進出となる。比較的軽い覚悟でできるといってもよい。一方、ハードウェアを扱うモノづくりの企業が海外進出となると、工場1つ建てるにも何百億円という莫大な費用がかかる。当然、1つ1つの行動に慎重になるし、成功するまで粘り強く続けるだろう。つまりコミットメントの差が、日本発ソフトウェアの海外での存在感の低さに大きく関係しているというのが、著者の見解だ。

さらに、日本には成熟したマーケットがある。日本国内だけでそれなりのビジネスが成り立ってしまうため、下手に海外に出ようとはしないのである。その点、スウェーデン発祥のイケアや韓国のK-POPは、国内の市場が小さいというハンデがあるために、最初から世界をターゲットにせざるを得ない。よって世界に広まる可能性も高まっていく。

ストーリーの重要性
monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock

インターネットやテクノロジーがもたらした最も大きな変化、それは人の「もの」に対する価値観の変化である。交通手段や滞在先、オフィス、衣類などあらゆるものがネットを介してレンタルできる今、ものを所有することの価値が薄れてきている。

そんな中、ミレニアル世代を中心とする今の消費者は、自分のストーリーを追うことに価値を見出している。ストーリーとは、なりたい自分像や理想の世界の状態を表す。例えばiPhoneを購入する人は、機械そのものの性能ではなく、それを手にした「イノベーティブでスマートな自分像」を買っている。また、シェアハウスに住むのは、ただ単に住居のコストを下げるためだけではない。その空間に身を置くことで、幅広い関わりを経験し、成長する自分像を得るためだ。

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要約公開日 2017.12.06
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