平均思考は捨てなさい
出る杭を伸ばす個の科学

未 読
平均思考は捨てなさい
ジャンル
著者
トッド・ ローズ 小坂恵理(訳)
出版社
定価
2,376円
出版日
2017年05月25日
評点(5点満点)
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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レビュー

「平均」と聞くと、平均寿命や平均賃金、テストや人事評価の平均点などを連想する。個々の数値はおおむね平均値に近くなるイメージがあり、平均よりも上であればうれしいし、平均以下であれば落ち込む。それは極めて身近な概念であり、とりたてて深く考えたことはなかった。あまりにもありふれたテーマだが、本書の内容には少なからず衝撃を受け、個性について改めて考え直すきっかけとなった。

第1部では、平均という概念が形づくられた歴史的背景から解説してあり、今日のように私たちの世界が標準化されるに至った経緯を知ることができる。「平均的な人間」というと、現代の感覚では凡人という意味合いが強いが、もともとは人並みな性質を表す言葉ではなく、むしろ人間として完璧な理想像を表すものだったことは興味深い。

第2部では、個性の3つの原理が紹介されている。たとえば、性格検査のように人間の性質を外向的、内向的とタイプ別に分類しただけでは、人の本質は決して明らかにならないという。この3つの原理を理解するだけでも、組織のマネジメントははるかにうまく機能するようになるだろう。

第3部では、企業が個性を重視した結果、従業員の忠誠心が高まり業績が伸びた実例や教育現場における問題点ひいては未来の教育のあり方などについて書かれている。

本書は、組織運営という視点からだけでなく、自己実現を目指すすべての人に有意義な一冊である。真の意味で個を活かした社会は本書から始まると言っても過言ではないだろう。

立花 彩

著者

トッド・ローズ (Todd Rose)
ハーバード教育大学院で心/脳/教育プログラムを主宰する心理学者。同大学院のNPO、〈個人の機会最大化のためのセンター〉共同設立者で、「個性学」の推進者。マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。さらに詳しくはwww.toddrose.comを参照。

本書の要点

  • 要点
    1
    あるグループに属する人間の体のサイズを測定し平均しても、個々の測定値は平均の範囲内に収まらない。平均的な人間というのは存在しない。
  • 要点
    2
    平均の歴史は、平均値に象徴される「平均人」こそが人間の理想像であると主張したケトレーに始まり、その後ゴルトンによって人間は「ランク」に分類されるようになり、テイラーによって世界中の企業が「標準化」されることとなった。
  • 要点
    3
    一次元的な評価軸では個性の本質を正しくとらえることはできない。個性には「バラツキの原理」「コンテクストの原理」「迂回路の原理」の3つの原理がある。

要約

平均にまつわる大いなる誤解

アメリカ空軍のコックピット設計

事の起こりは一九四〇年代末にさかのぼる。当時アメリカ空軍では、飛行機の墜落事故が頻発し、深刻な問題となっていた。原因究明の結果、飛行機の構造や電気系統に異常はなかった。パイロットの操縦スキルにも問題はなかったため、最終的にコックピットの設計が見直されることになった。

当時のコックピットは、一九二六年に測定したパイロットの体の寸法の平均値に合わせて設計されたままだったので、アメリカ空軍はパイロットの最新の身体データを集めることにした。最新データに基いて平均値を計算し直し、コックピットを再設計すれば、問題は解決すると関係者の誰もが信じていた。ただ一人、ギルバート・S・ダニエルズ中尉を除いては。

平均値に隠された驚きの真実
hsun337/iStock/Thinkstock

ダニエルズはハーバード大学で人間の生体構造を研究する形質人類学を専攻した。形質人類学では、平均的な体型に基いて人間の性格を特定し分類する。ダニエルズはこれに興味が持てず、代わりに卒論ではハーバード大学の男子学生二五〇人分の手の形を比較することをテーマに取り上げた。

まず、すべてのデータを測定して平均値を割り出し、個別の測定値を平均値に当てはめてみたのだが、意外なことに平均値の範囲内に当てはまった学生はいなかった。つまり「平均的な手のサイズ」が存在しなかったということになる。

はたして、アメリカ空軍のパイロットの身体測定の結果はどうだっただろうか。ダニエルズは、四〇〇〇人を超える大量のパイロットの身体データに基づいて「平均的なパイロット」のサイズを算出しようと試みた。コックピットのデザインに最も関連性の高い一〇カ所の測定箇所について平均値を計算し、個別の測定結果と比較してみたのだが、ここでも衝撃的な結論を得ることになった。一〇カ所すべての値が平均の範囲内に収まったパイロットは存在しなかったのだ。

平均的な人間という落とし穴

「平均的なパイロット」が存在しないということは、平均値に合わせてコックピットをデザインすれば、誰の体にも合わないコックピットができあがることを意味している。アメリカ空軍はこの結果を受けて、平均値を基準とするのではなく、パイロット個人の体のサイズに合わせてコックピットを調整することにした。

当初パイロット個人に合わせてコックピットを設計するなど不可能に思われたが、航空技術者は安くて簡単な解決策を見つけ出すことに成功した。それは今日では自動車にも採用されている標準的技術でもある。シートもヘルメットのストラップも飛行服も個人の体のサイズに合わせて調整可能なタイプに変更されたのだ。その結果、アメリカ空軍が抱えていた深刻な墜落事故の問題は解決に向かった。

平均時代を築いた主要人物

「平均人」を作ったケトレー
blackdovfx/iStock/Thinkstock

「平均的な人間」という間違った概念の歴史は、天文学者アドルフ・ケトレーから始まった。

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平均思考は捨てなさい
未 読
平均思考は捨てなさい
ジャンル
自己啓発・マインド サイエンス リベラルアーツ
著者
トッド・ ローズ 小坂恵理(訳)
出版社
早川書房 出版社ページへ
定価
2,376円
出版日
2017年05月25日
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