ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに学ぶクリティカル・メイキングの授業
アート思考+デザイン思考が導く、批判的ものづくり

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ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに学ぶクリティカル・メイキングの授業
ジャンル
著者
ロザンヌ・サマーソン 久保田晃弘(監訳) 大野千鶴(訳)
出版社
ビー・エヌ・エヌ新社 出版社ページへ
定価
3,240円
出版日
2017年07月24日
評点(5点満点)
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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レビュー

「クリティカル・メイキング」と呼ばれる独自の教育プログラムを提供しているロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(通称RISD、リズディ)。同校では、アメリカのSTEM教育(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Math=数学)に、Art=芸術を加えて「STEAM」に変えていく運動を進めてきた。芸術により創造性を高めることは、アメリカの競走力を維持し、魅力的で効果的なモノ、道具、サービスをつくりだせるとしている。RISDで開発された独自のカリキュラムモデルはイノベーションや独創性を引き出す内容になっている。

本書は、RISDで教育されている「クリティカル・メイキング(批判的ものづくり)」に注目し、教員、職員、図書館員らによる寄稿をまとめたものだ。RISDで行われている教育の実態や特徴について、直接体験した人たちの見解や実例が豊富に紹介されている。作品や制作風景の写真も豊富で、見ているだけで心洗われる。

「クリティカル・メイキング」は問いを立てることを重視する。そのため、学生たちは異なる意見をもつ他者と協力し、予測不能な世界に対応する力を磨いていく。RISDで得られる力は、アートやデザインだけでなく、ビジネスやその他の分野でも応用できるものばかりだ。本書は、アートやデザインの教育に携わる方だけでなく、企業における製品開発やイノベーションに関心のある方にもお薦めの1冊である。

河原 レイカ

著者

ロザンヌ・サマーソン
RISD学長。家具デザイナー・制作者、教育者。確かなクリエイティブ・プラクティスを維持すると同時に、展覧会用の家具や注文家具のデザインと制作も行う。さらに、公共団体と民間企業に対し、革新的な教育と創造の実践に関してコンサルタント業務を行う。彼女の作品は、世界各地で展示され、ボストン美術館、スミソニアン・アメリカ美術館(ワシントンDC)のレンウィック・コレクション、イェール大学アートギャラリー、ハンツビル美術館、RISD美術館など、数多くの有名な公共ミュージアムおよび民間ミュージアムの収蔵品になっている。ヘイスタック・マウンテン・スクール(メイン州)、アーツ&クラフツ協会(ボストン)の理事を務め、全米クラフト評議会の特別研究員に任命され、アメリカ美術公文書館口述歴史プログラムに彼女のインタビューが含まれている。海外でも人気の講演者、審査員、出展者、鑑定人として、地域やグローバルな視点を作品に応用している。デザイナー、アーティスト、教育者としての作品で数々の賞と表彰を受け、家具協会よりスタジオ家具分野の生涯功績賞を授けられた。

本書の要点

  • 要点
    1
    ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)は、「クリティカル・メイキング」と呼ばれる独自の教育プログラムを提供しており、イノベーションや独創性を引き出す内容になっている。
  • 要点
    2
    RISDの授業を通して、学生は作品の意味について考え、批判的に観察し、検証することを学ぶ。
  • 要点
    3
    RISDの卒業生は、批判的に思考することや、何度も制作し直すことに慣れており、問いへの対応力や課題の解決策を探す力を身につけている。こうした能力を活かしてアートやデザインだけでなく、ビジネスの分野でも活躍している。

要約

独創性を引き出す「クリティカル・メイキング」

ファンデーション・スタディーズ
Purestock/iStock/Thinkstock

美大のハーバードといわれるロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(通称RISD、リズディ)は、「クリティカル・メイキング」と呼ばれる独自の教育プログラムを提供している。RISDの教育カリキュラムは、イノベーションや独創性を引き出す内容になっている。そのため、学生たちは表現力を高め、新しい考え方ができるようになる。急速な技術の進展や環境の変化により、これまでの方法では対処できない課題が出てきているが、RISDの教育カリキュラムは、効果的な対策を導きだせる人材の育成につながっている。

学生たちは、専攻を決める前にファンデーション・スタディーズという準備コースで、必要な基礎を学ぶ。准教授を務めるレスリー・ハーストの考えはこうだ。学生たちが創造的に考え、批判的な判断をするには、創作のレシピを提供するのではなく、芸術作品の特徴や歴史、哲学、言語、技術などを本質まで煮詰めていくよう促すことが重要となる。

アートとデザインは関連性と応用の判断から成り立つ。関連性とは、個人の作品と人生の他の側面とを比較して判断する能力である。これは、自己批判とクリエイティブ・シンキングにつながる行為だ。フレッシュな視点をもって探索することと同じくらい、時事問題や異なる文化の伝統から創造的な探究の基礎を見つけることも重要である。素材の特性を活かすには、特別な扱い方が必要になるということを理解する。そのうえで、応用には継続的な基準と変更可能な基準があることを受け入れることが創造性の発揮につながる。

また、新しい発見を手に入れるためには、さまざまな領域に対する関心と、研究分野を橋渡ししなければならない。そのため、学生たちは、ファンデーション・スタディーズの初期からスケッチブックを持って街に出かけていく。そして、見る、聞く、匂いを嗅ぐなどの行為を通じて観察した記録をまとめ、「今、ここにいる」ことの意味を表現する課題が与えられる。こうした学びを経て、学生たちは教えられることと学ぶことは別物であると理解していく。

「テクスト」と「コンテクスト」の関係

リベラルアーツの学部長ダニエル・カヴィッキは、アートとデザイン作品の「テクスト」と「コンテクスト」について解説する。私たちは、一般的にテクストの中に意味を発見する。テクストに基づく思考は、作品に定められた一貫性を重視する。一方で、コンテクストは「ともに結合すること」を意味しており、一貫性の事実ではなく、無制限に結びつける行為を重視する。つまり、よりプロセス的に作品を扱う。

カヴィッキは、「テクスト」と「コンテクスト」の関係を理解することは、アートとデザインの作品制作に欠かせないと指摘する。物事と社会的・歴史的な環境との結びつきを掘り下げた作品の一つが、1863年に行われた、リンカーンによる「ゲティスバーグ演説」をモチーフにした、RISD卒業生たちの制作したアニメーションだ。彼らは、アメリカ史への深い関心と、モーショングラフィックスや編集技術により、戦没者の追悼や南北戦争で荒廃した国土、リンカーンの決意を促した社会背景を説明した。古くからよく知られ、すでに分析しつくされた演説に命を吹き込んだ作品といえる。

ドローイングそのものがアート
Ingram Publishing/Thinkstock

RISDで重要視されるドローイングとは何か。大学院の研究科長であるパトリシア・C・フィリップスによると、ドローイングとは、客観的に描かれた線と、マークによる象徴システムを用いて、緻密な観察と計画によって対象を模倣しようとする表現だという。同時に、ドローイングは開発ツールであり、即興的、あるいは高度に構造化された思考をマッピングする方法でもある。

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ジャンル
スキルアップ・キャリア
著者
ロザンヌ・サマーソン 久保田晃弘(監訳) 大野千鶴(訳)
出版社
ビー・エヌ・エヌ新社 出版社ページへ
定価
3,240円
出版日
2017年07月24日
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