GE巨人の復活

シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
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シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
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GE巨人の復活
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出版日
2017年06月19日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

20世紀最高のCEOと呼ばれたジャック・ウェルチ。彼の作り上げた「脱・製造業」のGEは、大きな敗北を喫した。中核とした金融業などが2008年のリーマンショックで大損失を出してしまったためだ。もう一方の経営の柱だった重電機も、グーグルやIBMなどの「デジタル破壊」によりボロボロになってしまった。これに対し、金融危機のさなかでも、シリコンバレーは悠々と成長を続けていた。「なぜ(それが)我々ではないのか」。ウェルチの後を継いだジェフリー・イメルトCEOは、ここで「デジタル製造業」へと大きく舵をきる決断をくだした。

至上命題は、すでにある資産から得られる収入を最大化すること。GEは、自社で製造する産業機器の生産効率をアップさせるサービスを展開し、サービス料を得るようにした。ハードに関する専門知識を持つことは、他のITベンダーにはない強みだと考えていた。めざすは産業機器界のエアビーアンドビー、そしてウーバーだ。そのためにエンジニアをかき集め、ソフト、プラットフォームも全て自社で開発する。シリコンバレー式の方法論も自社風に作り替え、社内に徹底した。その分野は製品、サービス開発の最前線はもちろん、経理や人事などのバックオフィスにも及んだ。

それからたった数年で、GEは革命による成功の果実を手にしつつある。デジタル変革をめざすのなら、GEの復活劇の背景をつぶさに描き出した本書から学ばない手はない。

著者

中田 敦(なかだ あつし)
日経BP社シリコンバレー支局長。1998年慶應義塾大学商学部卒業、同年日経BP社に入社。『日経レストラン』『BizTech』『日経Windowsプロ』『ITpro』『日経コンピュータ』の各編集部を経て、2015年4月から「シリコンバレー支局」に駐在。共著に『クラウド大全』(日経BP社)がある。1975年4月、富山市生まれ。

本書の要点

  • 要点
    1
    リーマンショックと「デジタル破壊」による挫折を機に、イメルトは従来の「脱・製造業」路線を捨て、「デジタル製造業」へと歩みを進めている。
  • 要点
    2
    GEはモノを売らずにサービスを売ることで、産業機器界のエアビー、ウーバーをめざしている。
  • 要点
    3
    シリコンバレー式の「リーンスタートアップ」を、バックオフィスを含んだ社内のあらゆる分野で徹底することで、デジタル文化革命を促進した。

要約

設立125年のスタートアップ

リーマンショックの余波
peshkov/iStock/Thinkstock

2015年4月。GEは160億ドル(約1兆9000億円)の特別損失を計上した。この特損は、2008年のリーマンショックによる金融危機と、それに伴う同社中核事業の金融事業撤退によるものだった。金融事業撤退は、20世紀最高のCEOと呼ばれたジャック・ウェルチの進めてきた「脱・製造業」の路線と真逆に進むことを意味した。つまり「製造業回帰」だ。

GEは、ウェルチ時代に買収したテレビ放送・映画事業から撤退し、白物家電事業などを売却した。一方で製造業に関する巨額の買収も進めた。このころ、同社のものづくりは大きな痛みを抱えていた。生産性と売り上げの低迷が著しく、金融危機の影響は金融業だけでなく製造業にまで影響を与えていたのである。

デジタル破壊が新たな脅威に

GEがデジタル化を決心した当時、世界中のあらゆる産業が「デジタルディスラプション(デジタル破壊)」による構造変化を始めていた時期だった。GEも、傘下事業のテレビ・映画部門がネットフリックスなどに浸食されるだけでなく、中核事業のインフラや電力などの分野がグーグルに攻められていた。

また、GEにとっての脅威は、IBMによる「スマーター・プラネット」(2008年)構想だった。さまざまな産業機器にとりつけたセンサーデータを、ビックデータにより効率化する新サービスである。GEの提供する産業機器を使って、IBMが顧客から収入を得るという事態が発生しようとしていた。こうした脅威に対抗するため、同社のCEOイメルトが出した結論は、「GEをシリコンバレー化し、製造業をデジタル製造業へ進化させる」ことだった。

モノを売らずにサービスを売れ

GEのデジタル化への取り組みには3つの戦略がある。第一は、自社の製造ラインをデジタル化し、生産性を高めることだ。世界150箇所の製造拠点で、産業機器にセンサーを取り付けて稼働データを収集・分析し、運用におけるムダや問題点を排除することで生産性を高める「インダストリアル・インターネット(II)」などを指す。

第二は、ものづくりからデジタルサービスへの転換である。自社で実施するデジタル製造業を顧客の現場でも行い、サービス料を得るようになっていった。

第三は、デジタル製造業のために開発した技術を、新規顧客に販売することだ。IIを実現するために開発した「Predix」というソフトウェアを、誰でも利用可能なプラットフォームとして公開する。こうしたデジタル収入を2020年までに150億ドルに伸ばすのが、GEの新たな目標となる。

GEデジタルはこうして生まれた

シリコンバレーの穴場へ進出
zimmytws/iStock/Thinkstock

2011年はGEがデジタル製造業へ転換する第一歩となった。この年はシリコンバレーIT大手から引き抜いたビル・ルーをリーダーに据え、「GEのデジタル事業の診断と戦略立案」に注力する年となった。

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要約公開日 2018.02.06
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