スタートアップ企業の定義は難しい。「小規模な企業」というイメージがあるが、その成熟段階によって、規模は従業員1人から5000人と大きく異なる。
しかし共通するもっとも大きな特徴は、「野心的」であることだろう。スタートアップとは、これまでになかった製品や価値基準を創造するものだ。新たな分野を開拓し、市場をつくりだすのがスタートアップ企業なのである。
スタートアップの世界では、役割や肩書の境界が曖昧である。とくに創業間もないうちはリソースが少ないため、多種多様な仕事をこなさなければならない。企業のかたちを模索している段階のスタートアップ企業は流動的で、従業員の役割もどんどん変化していく。そのため肩書を設けない企業も多い。
しかしスタートアップ企業の典型的な組織構成を知っておくと、自分にとってふさわしいポジションを知る手がかりになる。実際スタートアップにおける各部門の役割を知ると、どんな仕事が行なわれているのかイメージしやすい。したがってスタートアップで働く場合でも、その企業の基本的な組織構造と各部門の業務は知っておく必要がある。
プロダクトマネジャー(PM)は文字通りプロダクト、すなわち製品に責任をもつポジションだ。起業したばかりのスタートアップの中で、もっとも重要なポジションといえる。初期段階のスタートアップ企業では、創業者がPMを担うことも多い。
PMの仕事は、製品の理念と要件を明確にすることだ。どうすれば製品がよくなるか、どうすればより顧客のニーズに応えられるかを常に考えなければならない。
製品の要件が決まったあと、製品開発に必要なリソースを確保するのもPMの仕事だ。スケジュールを確認しつつ、エンジニア部門など他部門との調整を行ないながら、製品が当初のビジョン通りに完成するように尽力しなければならない。
このように総合的なマネジメントを行なうPMには、業務のスペシャリストとなることよりも、対人スキルや判断力が求められることになる。
スタートアップ企業の場合、社内だけで業務を完結させるのは難しい。他企業のほうが効率的に行える部分があれば、アウトソージングすることになる。
このとき他企業とパートナー契約を結ぶのが、事業開発マネジャーだ。契約によって双方がどのような価値を得るのか提示し、よりよい契約を結べるよう尽力する。加えて、契約が完了した後も契約の履行管理を行なう。社内すべての部門が確実に契約履行できるようにするのだ。
事業開発マネジャーには、製品についての知識はもちろんのこと、人脈や交渉のスキル、ビジネスモデルや財務などを分析するスキルも求められる。
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