起業の科学

スタートアップサイエンス
未読
起業の科学
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スタートアップサイエンス
未読
起業の科学
出版社
出版日
2017年11月06日
評点
総合
4.5
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
5.0
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おすすめポイント

「アマゾンやフェイスブック級の成功は奇跡かもしれない。しかし、失敗の99%は潰せる」。1000人以上の起業家、投資家、スタートアップ関係者と対話をくりかえしてきた著者の実感だ。

本書は一貫して、スタートアップをめざす人のためにつくられている。スタートアップとは、それまでになかった新しい価値を創造する起業のことだ。スタートアップには「世界をよりよい場所にする力がある」。そうした新たな挑戦をするから、失敗をしてしまう人は多い。しかし失敗せずに続けられるスタートアップは、本来やろうと思えば誰にでもできることだと著者は説く。

ここには起業の指南書にありがちな精神論は一切登場しない。あるのは再現性のある、科学的な手法だけだ。著者はもともと、起業のためのハウツー本が数多く存在する一方で、起業したことがない人にとっては学びにくいものが多いという問題意識をもっていた。情報がバラバラに散らばっており、どのタイミングでどの情報が必要となるかがわかりにくかったのだ。

本書はスタートアップの失敗を避けるポイントが、段階ごとに具体的かつ実践的に説明されている。一度読めば、「これなら自分にもできる」と思えてくるだろう。全世界で5万回シェアされたという著者のスライドの一部も掲載されており、視覚的にも大変わかりやすい。

起業を考えているのなら、あるいは少しでも興味があるのなら、本書をくりかえし読むことをおすすめする。まさしく起業の教科書決定版だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

田所 雅之(たどころ まさゆき)
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。
日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、事業創造会社ブルー・マーリン・パートナーズ(東京・港)のCSO(最高戦略責任者)、ウェブマーケティング会社ベーシック(東京・千代田)のCSOも務める。2017年、新たにスタートアップの支援会社も設立した。
その経験を生かして作成されたスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。

本書の要点

  • 要点
    1
    新しい価値を創造するスタートアップにおいては、誰もがいいと思うアイデアは「いいアイデア」とはいえない。聞いた人が戸惑うようなアイデアがいい。
  • 要点
    2
    最初に検証するべきなのは、「そもそも課題が存在するのか」である。スタートアップは「顧客の課題を解決する」ものだ。自分たちがやりたいことを優先しているだけでは、ありもしない課題の解決策を作ってしまうことになりかねない。
  • 要点
    3
    スタートアップはタイミングが命だ。早すぎれば商品は未熟になり、遅すぎれば大手に勝てなくなる。

要約

【必読ポイント!】 アイデアを検証する

「いいアイデア」とは?
phototechno/iStock/Thinkstock

スタートアップは単なる起業とは異なり、すでにある市場をターゲットにするのではなく、新たな価値を作りだして急成長するものである。ゆえにすべての起業がスタートアップとは限らない。

スタートアップにとってもっとも重要なのは、アイデアの検証だ。そのアイデアが「いいアイデア」かどうかを検証できないうちは、他のことはなにも始めてはいけない。では「いいアイデア」とはどんなものなのだろうか。

いいアイデアはソリューション(解決策)ではなく、課題にフォーカスしているものだ。技術やプロダクトなど、自分たちがやりたいことを先行させて考えてはいけない。ソリューションは顧客の課題を解決するためにある。ゆえに重要なのはそこに課題があるのか、そしてそれが顧客にとって本当に痛みのある課題なのかどうかを見きわめることだ。スタートアップを始めるにあたり、真っ先にしなければならないのは、課題の質を高めることなのである。

誰もがいいと思うアイデアは、スタートアップにおいてはいいアイデアとはいえない。なぜならそうしたアイデアは、すでに他の企業でも検討されている可能性が高いからだ。競合が多い市場だと、スタートアップは不利である。まだ市場が定義されていないような状態の課題に取り組むべきだ。誰かに話したときに相手が戸惑うようなアイデアのほうが、スタートアップには向いている。

スタートアップで絶対にしてはいけないこと

一般企業では通用しても、スタートアップでは絶対にしてはいけないことがある。

まず詳細なビジネスプランを作ってはいけない。スタートアップではプロトタイプを作り、顧客からのフィードバックを得ていく過程で、プランやビジネスの方向性が大幅に変わることもしばしばだ。詳細なビジネスプランを作るのは時間の無駄である。

また、競合や差別化を意識するあまり、はじめから機能を盛りこみすぎるのもよくない。あくまで考えなければならないのは、「顧客の課題を解決できるかどうか」である。はじめは本当に必要な機能だけに絞り、課題を解決できるかどうかを考えるべきだ。「あったら便利な機能」は、あとから追加すればいい。

さらに、スタートアップはPRを重視しがちだが、これも間違いだ。プロダクトが未熟な段階でPRを進めてしまうと、最悪のコメントやレビューが永遠に残されることになりかねない。はじめの段階では試作品を顧客に使ってもらい、そこからフィードバックを得て、プロダクトを磨きこむ作業に注力するべきである。

スタートアップはタイミングが命
donskarpo/iStock/Thinkstock

スタートアップが成功するかどうかを左右するもっとも大きな要因はタイミングである。「なぜいまそのアイデアを実行するのか」という質問に答えられないならば、それはいいアイデアとはいえない。市場に早く参入しすぎると、コストが高かったり性能が未熟だったりする可能性が高いし、遅すぎると市場が込みあい、大手に勝てなくなってしまう。

ベストなタイミングをつかむには、進化が止まっている領域に目を向ける手もある。「みんなが使っているから」といった理由で、不便なのに顧客がそのまま使用しているケースは意外に多い。そうした硬直化した領域には、「市場を再定義するプロダクト」を投入しやすく、スタートアップならではのイノベーションを起こし、成功できる可能性が高いのだ。

課題を検証する

課題は本当にあるのか?

スタートアップのプロダクトは、「顧客が抱える課題を解決するための手段」である。しかし失敗する多くのスタートアップは、自分たちで解決できる範囲内に収めるため、そもそもの課題をでっちあげてしまっている。「自分たちが作りたいから作る」のではいけない。スタートアップの命となるのは、「本当にその課題が存在しているのか」の検証だと肝に銘じるべきだ。

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要約公開日 2018.03.08
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