インサイド・アップル
ジョブズ最大の遺産は「究極の組織」だった――。

未 読
インサイド・アップル
ジャンル
著者
アダム・ラシンスキー 依田卓巳(訳)
出版社
早川書房
定価
1,728円
出版日
2012年03月23日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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インサイド・アップル
インサイド・アップル
ジョブズ最大の遺産は「究極の組織」だった――。
著者
アダム・ラシンスキー 依田卓巳(訳)
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ジャンル
出版社
早川書房
定価
1,728円
出版日
2012年03月23日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

あなたはアップルという会社について、どれくらい知っているだろうか。

アップルほど身近な存在でありながら、その内幕が秘密のベールに隠された会社はないだろう。今では多くの人がiPhoneやMacBookなどのアップル製品の恩恵を受けているにもかかわらず、スティーブ・ジョブズ以外にアップルにはどんな人がいるのか、どんな組織構造をしているのか、どんな製品開発プロセスを辿るのか(これは他社も同じかもしれないが)・・・ということは、一部のアップル信者を除くと明らかになっていないことばかりだ。

本書はそんなアップルの組織構造について述べた一冊だ。ハイライトで触れている通り、アップルの社内システムは現代の開かれた経営とは真逆の、アップルをアップルたらしめる独自の機構になっている。アップル製品を魅力的なものにするために作られたこのシステムは、メーカーに勤める方などには参考になるかもしれない。

さらに興味深いのは、ジョブズがいたからこそ機能していたとも言えるこのシステムは、CEOがティム・クックに交代してどのように変化したのか、という点についても述べられていることだ。クックはカリスマ経営者の有能な後継者として歴史に名を刻むことができるのだろうか。アップルから発表される製品だけでなく、本書を読んで組織構造の変化についても考えを巡らせながら、クックの手腕を評価することを提案したい。

苅田 明史

著者

アダム・ラシンスキー

「フォーチュン」誌シニアエディター。専門はテクノロジー・金融。イリノイ大学で歴史学および政治学の学位を取得。シリコンバレーとウォール街をフィールドとするトップジャーナリストの一人として知られ、「フォーチュン」誌ではアップルの他、グーグルやHP等に関する特集記事を多数執筆。とりわけ本書の元となった、アップルの組織図や内部システムを明らかにした2011年5月のスクープ記事"INSIDE APPLE"は大きな反響を呼んだ。

本書の要点

  • 要点
    1
    アップルでは対外的なものだけでなく対内的にも秘密がある。社員は自分が関わらないプロジェクトの内容は一切知らされず、もし秘密を外にもらしたら即時解雇される。
  • 要点
    2
    アップルでは「デザインが製品の出発点」とされ、工業デザイナーの地位が異様に高い。さらにアップルは製造設備を所有していないが、ハードウェアとOSの両方を完全にコントロールしており、垂直統合の新しい形をとっている。
  • 要点
    3
    明確な指示、個人の説明責任、緊張性、恒常的なフィードバック、ミッションの明確性――こうした特徴によって明らかになるアップルの価値観がどれほど深く浸透しているかが、ジョブズ亡き後を占う鍵となるだろう。

要約

ジョブズ信仰を超えて

アップル=ジョブズなのか?

アップルのCEOを長く務め、圧倒的な存在感を示し、亡くなったスティーブ・ジョブズは、この先どのくらいアップルの企業文化に影響を与え続けるのだろう。ジョブズの死後、この話題があいかわらずメディアをにぎわしている。

「僕の一部は会社のDNAに組みこまれているけど、単細胞生物はあまりおもしろくない。アップルは複雑な多細胞生物だ。」ジョブズは亡くなる数カ月前にそう語った。ジョブズが後年、組織に浸透させようとした企業文化は、まさに彼の不在によって強度を試されることになる。何年も先の話になるだろうが、世界はいずれ、スティーブ・ジョブズその人がアップルだったのか、それとも彼がみずからの死後も生き残るたくましい複合生物を作り上げていたのかを知ることになる。

【必読ポイント!】 インサイド・アップル

iStock/Thinkstock
アップルにおける2つの秘密主義

アップルでは秘密にふたつの形態がある――対外的なものと、対内的なものだ。対外的なもの、つまり会社として製品や業務を競合他社などほかの世界から隠しておくのは当然である。一方で、対内的な秘密は受け入れるのがむずかしい。

アップルでは突如、自社ビルのなかに新しい壁が作られ、ドアがつき、新しいセキュリティ規則が示される。内容を知らされていない社員は、何か極秘の新しいプロジェクトが始まり、自分はその内容をしらないということだけしか想像がつかない。アップルの本社、通称「インフィニット・ループ」で販売されているTシャツにはこのような言葉が入っている「私はアップルのキャンパスを訪問した。でもそれだけしか言えない」と。

アップルが秘密とセキュリティを重視する理由の一つは、ある製品を発売する際に、直前まで秘密のベールに包まれていれば、とてつもなく価値の高い報道や取材や評判が生まれるからだ。アップルの製品発売はハリウッドの超大作映画の公開のようなもので、それまでに詳細を発表してしまうと、期待に水を差すことになる。

もうひとつの理由は、すでにある製品への興味を失わせないためだ。次に何が出るか、消費者が正確に知ってしまったら、どうせ次世代製品に代わるのだからと、いまの製品を買い控えるかもしれない。たとえば、アップルの報告によると、2011年夏のiPhoneの新機種に対する期待で、既存のiPhone4の売上が落ちた。

もしアップルの秘密を外にもらしたらどんな罰則が待っているのか。当然、即時解雇である。

すべてをコントロールする
Creatas Images/Creatas/Thinkstock

アップルの細部へのこだわりが端的に表れるのはデザインだ。アップルの製品は、限られた社員しか入れない厳重に管理された部屋、工業デザインスタジオで生まれる。その責任者はデザイナーのジョナサン・アイブ。ジョブズを除くアップル幹部のなかで、もっとも有名な人物だ。

アップルのデザイン哲学の鍵は、「デザインが製品の出発点」ということだ。

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