アップルvs.グーグル

どちらが世界を支配するのか
未読
アップルvs.グーグル
アップルvs.グーグル
どちらが世界を支配するのか
未読
アップルvs.グーグル
出版社
新潮社
出版日
2013年12月18日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

2013年後半、日本のスマートフォン販売台数におけるiPhoneのシェアは実に7割を誇っているが、欧米ではシェアが低下し、米国では半数を割り込んでいる状況だという(カンター・ジャパン調べ)。アップルが勝者となっているのは日本くらいのものなのである。

世界で多数派を占めるのは、グーグルが提供するスマートフォンやタブレット端末向けのプラットフォーム、Android(アンドロイド)だ。アンドロイドはアップルが手がけるiOSよりも後発でありながら、既に世界のスマートフォン市場の8割近くを占め、さらにシェアを拡大させている。

本書はアップルとグーグルによって繰り広げられる苛烈なドッグファイトの全貌を書いた一冊だ。スティーブ・ジョブズが行った伝説的なiPhoneの発表プレゼンを見聞して、アンドロイド開発チームが打ちひしがれる様子や、ジョブズがグーグル経営陣に裏切られたと感じるに至った背景、アップルによる激しい特許訴訟合戦など、キーパーソンの証言をもとに描写されたリアルな各シーンは思わず息を飲むほどである。

さらに本書では、この2社の闘いが単にシリコンバレーの将来を占うものではなく、メディアやコンテンツ、通信などの在り方をも再定義してしまうだろうと述べている。日本ではドコモ、KDDI、ソフトバンクによる競争が激化しているが、iPhone一本足打法のソフトバンクは今後どういった戦略を採るべきだろうか、などと想像を働かせながら読むと一層面白いだろう。

ライター画像
苅田明史

著者

フレッド・ボーゲルスタイン
ワイアード誌の寄稿編集者として、技術およびメディア産業に関する記事を執筆。フォーチュン誌、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、USニューズ&ワールド・レポート誌のスタッフライターも務め、ニューヨーク・タイムズ・マガジン、ロサンゼルス・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙にも記事を提供している。

依田 卓巳(翻訳)
1962年愛媛県生まれ。東京大学法学部卒業後、大手通信会社に勤務しながら、1998年より翻訳活動を開始。 『1分間セルフ・リーダーシップ』(ダイヤモンド社)、『バズ・マーケティング』(ダイヤモンド社)、『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』(加賀山卓朗名義、日本経済新聞社)、『あなたのなかにあるセールスの才能』(加賀山卓朗名義、日本経済新聞社)、『これが答えだ!』(加賀山卓朗名義、日本経済新聞社)など

本書の要点

  • 要点
    1
    2008年の登場以降アンドロイドはシェアを拡大し、いまではスマートフォン市場の75%を占めている。
  • 要点
    2
    アップルはアンドロイドに対抗してiPadを発表した。iPadは本・新聞・雑誌・映画・テレビといった5つのメディアを一つのデバイスに集約(コンバージェンス)したという点でiPhoneを上回る革命的な商品だった。
  • 要点
    3
    アンドロイドとアップルのプラットフォーム戦争は、単にどちらが「テクノロジー」の未来を支配するかという争いではなく、「メディア」の未来をかけた争いでもある。

要約

【必読ポイント!】 アップルvsグーグル

iPhone誕生
Anatoliy Babiy/iStock/Thinkstock

本書は序章に続く全10章を通じて、アップルとグーグルの闘いを描いた一冊だ。その第1章ではiPhone開発秘話が語られている。

2007年1月9日、アップルのCEOスティーブ・ジョブズは、実に2年半もの歳月を経て開発されたiPhoneを発表した。このとき発表されたiPhoneはまだ「試作品」で、実際に販売するまでに解決しなければならない項目が山のようにあった。まだ製造ラインもできておらず、そのとき存在していた試作品は100個ほどしかなかった。そのため、報道関係者以外の一般人が現物に触れることもできなかった。

しかし、そんな未完成のiPhoneにも関わらず、ジョブズがおこなったデモは完璧だった。iPhoneで音楽をかけ、美しい画面で動画を再生し、電話をかけ、タッチスクリーンのキーボードでタイプしてメールを送るといった様々な機能を披露すると、会場は狂喜した。

発表から24週間後にiPhoneはついに発売された。その後の大ヒットはここで語るまでもないだろう。発表から1年後にはアップルの株価は2倍になった。本書の第3章では不具合だらけのiPhoneを出荷するまでの苦労話が描かれている。

グーグルの落胆
XiXinXing/XiXinXing/Thinkstock

アップルのiPhone開発秘話に続いて、第2章ではグーグルのアンドロイド開発について言及されている。極秘で進められていたアンドロイド・プロジェクトは、約50人のエンジニアが15か月以上にわたって週に60から80時間働き、携帯電話業界を変える革命的な製品を生み出そうとしていた。プログラムを作ってテストし、ソフトウェア・ライセンスの交渉をし、適正な部品の供給者と製造者を探して世界中を飛び回った。半年前から試作品に取りかかって、年末に発表しようと考えていた・・・ちょうどそのとき、ジョブズが華々しくiPhoneを初公開したのだった。

アンドロイド・プロジェクトを率いるアンディ・ルービンは車で移動中にウェブキャストでジョブズのプレゼンを見ていたという。「なんてことだ」ルービンは同乗していた同僚にこう言った。「あの電話は出荷できなくなった」

そのときアンドロイド・チームが開発していた暗号名<スーナー>という電話は、iPhoneで明らかにされたものをおそらく上回るソフトウェアを搭載していた。当時のiPhoneは定期的にiTunesにつながなければならず、同時にふたつ以上のアプリを動かすこともできず、オンラインストアらしきものもなかった。一方、<スーナー>はこれらに対応し、しかもインターネット・ブラウザーの全機能に加えて、検索、マップ、ユーチューブといったグーグルのすぐれたアプリケーションのすべてを使うことが出来たのだ。

<スーナー>の問題は見た目がひどいことだった。ブラックベリーのように従来型のキーボードと、タッチ式ではない小さな画面がついていた。これに対して、iPhoneは見た目のクールさに加えて、仮想キーボードを使うことで、画面の大きさは市場に出回っているあらゆる機種の2倍はあった。タッチスクリーンつきの電話はグーグルも検討していたが、アップルの新製品は彼らの想像を大いに上回っていた。

アンドロイド・チームは、予想外にすばらしかったiPhoneにショックを受け、目標の修正を余儀なくされる。

グーグルの裏切り
Natalia Vasina Vladimirovna/iStock/Thinkstock

第4・5章では、いよいよグーグルとアップルの攻防の仔細が語られている。

グーグルではiPhone向けのサービスを提供しているチームの存在などから内部に不協和音が鳴っていたが、アンドロイドの発表がグーグルとアップルのもたらした衝突に比べればかわいいものだった。スティーブ・ジョブズは、アンドロイドの発表を完全な不意打ちととらえ、「どこもかしこもうちのくそ模造品だ」と言って激昂した。

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要約公開日 2014.02.10
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