完全無欠の賭け

科学がギャンブルを征服する
未読
完全無欠の賭け
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科学がギャンブルを征服する
未読
完全無欠の賭け
出版社
出版日
2017年11月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ギャンブルの必勝法」と聞いて興味をそそられない人は、おそらくほとんどいないだろう。実際ギャンブルは、これまで数多くの人の心を惹きつけてきた。

「ギャンブルの必勝法」というと、「運を味方につける方法」などとして語られていることが多い。しかし本書ではそうした話など、一切出てこない。

本書が明らかにするのは、科学者たちが「運」や「偶然性」について考え、あらゆるゲームの仕組みを解明し、勝つ方法を研究してきた軌跡だ。ルーレット、宝くじ、スポーツベッティング、ポーカー、ブラックジャック――ギャンブルについての研究はやがて確率論やゲーム理論、カオス理論につながった。最適戦略の考え方も、ギャンブル研究から生まれた側面が大きいという。

ギャンブルで楽に勝てる方法を見つけるために本書を手に取ると、もしかしたら肩透かしを食らうかもしれない。とはいえ科学にもとづいた戦略を実行した際の成功談や苦労話も盛りこまれており、単純に読み物としてもおもしろいつくりになっている。

著者は「絶対に勝てない」ゲームもないが、「絶対確実に勝てる」システムもないとしている。ギャンブルで儲けるためには地道な研究の積み重ねと周到な準備、そして柔軟な発想による創意工夫が必要なのだ。ギャンブルで儲けたい人も、数学や統計学に興味がある人も、それぞれ読む意義のある一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

アダム・クチャルスキー (Adam Kucharski)
1986年生まれ、ロンドン在住。ケンブリッジ大学で数学の博士号を取得。ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディスン(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)で数学モデリングを教えながら統計学や社会行動の論文を発表する一方、サイエンスライターとしてポピュラーサイエンスの記事も執筆している。2012年にはウェルカム・トラスト・サイエンスライティング賞を受賞した。

本書の要点

  • 要点
    1
    ギャンブルの研究は、数学や統計学の発展に大きく寄与してきた。
  • 要点
    2
    物理学的な知見を用いれば、ルーレットで出る目を高い精度で予測できる。
  • 要点
    3
    宝くじを確実に当てる方法を見つけ出し、利益を出しつづけているシンジケートが存在する。
  • 要点
    4
    スポーツの試合結果を当てるスポーツベッティングは、もはやギャンブルというよりも投資と化している。
  • 要点
    5
    「絶対に勝てない」ゲームはないが、「絶対確実な」ゲームもない。ギャンブルで勝ちつづけるためには、地道な研究と周到な準備が必要である。

要約

ギャンブルの魅力

ギャンブル必勝法が生んだ科学

これまで多くの人々が「ギャンブル必勝法」を模索してきた。完全無欠のベッティングシステムには、人を引きつける魅力があるからだ。

かつてギャンブルで勝つには、運や迷信に頼るしかないと考えられていた。しかし科学にはギャンブルを制する力がある。ギャンブルでかならず勝つ方法を探ることは、数学や統計学について研究することにつながる。現在では当たり前に知られている「確率」という概念は、ギャンブラーたちが生み出したといっても過言ではない。

ギャンブル必勝法の研究は、「偶然性」や「運」といったものについての新たな見解を生みつづけてきたのである。

ルーレットは予測不能か

ルーレットの数の出方は一律ではない
mazartemka/iStock/Thinkstock

ルーレットには1から36までの数字が書かれた赤と黒のポケット、0と00の緑のポケット、合計38のポケットが並んでいる。ルーレットでは親元(カジノ)が絶対的に優位だとされているが、それは「どの数も出る可能性が同じである」という前提に立っている。

しかし実際の出方には偏りがある。ルーレットには物理的な欠陥がある場合もあるからだ。実際に出方に偏りのあるルーレットを観察することで、儲けを出すことに成功した人もいる。

とはいえ偏りのあるルーレットを見つけるだけで、勝ちつづけることは難しい。どう賭ければ儲かるかも考えなければならない。さらに最近では、予測できるほど偏りのあるルーレットも減ってきている。

統計学ではなく物理学から予測する

カルフォルニア大学ロサンジェルス校で物理学の博士課程に在籍していたエドワード・ソープは、まったく新しい角度からルーレットの研究を始めた。彼の試みは統計学ではなく、物理学からルーレットを分析しようというものだった。つまりスピンするホイールの上で、ボールが描く軌道の法則を研究しはじめたのだ。

ソープはボールの位置と速度と加速度、ホイールの回転位置と速度と加速度を計測すれば、ルーレットの予測もできると考えた。そして実際、ボールがホイールに対してどう動いているかがわかれば――つまりボールが特定の場所を通過するときのタイムを計れば――予測できたのである。

言うまでもなく、より正確な予測をするには、ハイスピードカメラでボールの軌跡を測定しなければならない。だがストップウォッチでタイムを計って計算するだけでも、ある程度の成果をあげられた。

しかし問題はここからだった。カジノのセキュリティに見つからないように、こうした測定や計算をおこなうのは困難を極める。そのためあまり大きな儲けは出せなかった。

宝くじの抜け穴

宝くじで儲かるのは「運」なのか
SIphotography/iStock/Thinkstock

宝くじで一等の当選番号を予測するのは不可能に近い。しかし意図的にある程度の利益を得ることはできる。

当選者が出なかった場合、その賞金は次の回に繰り越される。このときあまり当選者が出ないと宝くじの売り上げが落ちてしまうため、運営会社は「ロールダウン」をおこなう。ロールダウンとは繰り越された賞金が一定の金額を超えた場合、賞金を一等の当選者一人に与えるのではなく、数字を3つか4つほど的中させた人々に分配する仕組みだ。ロールダウンが起きると、もらえる金額は少なくなってしまうものの、賞金を手にする可能性は格段に上がる。

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要約公開日 2018.05.20
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