科学が教える、子育て成功への道

強いココロと柔らかいアタマを持つ「超」一流の子を育てる
未読
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おすすめポイント

子供を、これからの時代を生き抜けるように育てるには、どんなことをしてやったらいいのだろう。子を持つ親、もしくは教育関係者にとって、気にならずにはいられないトピックである。本書は、子育ての「成功」を、「健康で思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる、幸せな子供を育てること」と定義し、そのために学校や家庭、地域社会で実現すべき教育のモデルを提示する。

モデルの中核となっているのは、「6Cs(6つのC)」というスキルを育てることである。仲間とコラボレーション(Collaboration)し、それを促すためにもコミュニケーション(Communication)をとる。コミュニケーションを通して知識コンテンツ(Contents)を身につけ、クリティカルシンキング(Critical Thinking)によって情報を判断する。その上で新しいアイデアを生み出すクリエイティブイノベーション(Creative Innovation)を実現し、コンフィデンス(Confidence、自信)によってプロジェクトを成功させる。というように、以上の6つのCこそがこれからの社会に求められる力だと著者は示す。本書では、この6つのスキルとそのレベルについて詳述しながら、これからの教育が進むべき道筋を明らかにしている。

そしてこのスキルは、子供だけが身につけるべきものでは決してない。教育者である読者自身もしっかりと身につけるべき能力であり、大人の成長こそが子育てを「成功」させるための条件だとも言えるだろう。一流の子育てを実践するとともに自らも一流の社会人となるべく、本書で6つのCを紐解き、身につけていただきたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ
コーネル大学でPh.D取得。デラウェア大学教授。最も権威ある学術誌『Child Development』の編集委員を務め、150を超える論文、14冊の本とモノグラフを執筆した。発達科学の知見を一般の人々に広めることにも情熱を傾け、言語や空間認識の発達、プレイフルラーニングについて親や教育者向けの著書を出し、多くのメディアにも登場。世界各地で講演活動も行っている。また、学びと遊びの科学を楽しむイベントUltimate Block Partyを共著者のキャシーとともに始め、NYセントラルパークに5万人もの人を集めた。

キャシー・ハーシュ=パセック
ペンシルバニア大学でPh.D取得。テンプル大学教授。ブルッキングス研究所シニアフェロー。ロバータと共著『Einstein Never Used Flash Cards』は世界中で翻訳され、2003年に最も優れた心理学書に贈られるBook for BetterLife Awardを受賞。卓越した研究業績だけではなく、認知心理学・発達心理学の基礎的な研究を教育に活かし、社会に貢献するために様々な重要なプロジェクトに関わり、世界から注目されている。『ニューヨークタイムズ』などアメリカ全国紙での幼児教育・幼児発達についてのスポークスパーソンとしても活躍している。

本書の要点

  • 要点
    1
    情報社会である21世紀における子育ての「成功」とは、「健康で思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる、幸せな子供を育てること」である。
  • 要点
    2
    「成功」のために必要な思考能力を向上させるには、テストの点数で測定可能な「ハードスキル」ではなく、他人とのコミュニケーション能力や、自らの感情の機微に賢く対応するといった「ソフトスキル」を身につける必要がある。二種類の融合のため、著者らが提示するモデルが、「6Cs(6つのC)」を伸ばす教育である。

要約

21世紀における、子育ての「成功」とは何か

これからの子供達に求める姿

優良企業における共通認識は、これからの重要な仕事は思考スキルを持った人間によってなされるということである。現状で世界において優勢な、どれだけ事実を覚えたかを評価する教育方法は、時代遅れのものだといえる。

これから必要となる共通スキルを踏まえた、教育において共有すべき目標は、次のようなことになると著者らは考える。「健康で思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる、幸せな子供を育てること」。これこそ、子育てにおける「成功」であり、そうやって育った子供が、他者と協力して、自分の能力を存分に発揮して、責任感ある市民となり社会を活性化するのだ。

6Csで教育のイメージを変える

こうした子供たちを育てるために、子供たちが身につけるべきスキルはどのようなものか。

テストによって簡単に測定可能な学力は「ハードスキル」、それ以外のスキルは「ソフトスキル」と呼ばれる。ソフトスキルとして定義されるものは、例えば、適応力、自立性、コミュニケーション能力、想像力、多様な文化背景への気付き、共感力、リーダーシップなどだ。学習科学の研究と実験では、ソフトスキルが人生での成功を果たすのに重要な役割を果たすことが明らかになっている。ハードスキルは、ソフトスキルの基盤なくして身につかないのだ。

ハードスキルとソフトスキルの融合のため、著者らの提示するモデルは、「6Cs(6つのC)」を伸ばす教育である。6Csとは、コラボレーション(Collaboration)、コミュニケーション(Communication)、コンテンツ(Contents)、クリティカルシンキング(Critical Thinking)、クリエイティブイノベーション(Creative Innovation)、コンフィデンス(Confidence)である。

【必読ポイント!】 6Csの養い方

コラボレーション
gpointstudio/iStock/Thinkstock

コラボレーションは、人が学び、課題を達成し、パフォーマンスを向上させる上で本質的な役割を果たす。能力が異なる人が手を組めば、お互いに足りない部分を補い合って素晴らしい仕事をすることができる。

コラボレーションする力を伸ばしてやるには、まず、自己調整できるようになるのを促してやらねばならない。赤ちゃんが何かしたくてうまくできないとき、親は他の選択もあることに気づかせてやり、支援していくとよい。

幼児は、はじめは横並びで各々勝手に作業をする。やがて助け合う必要性に気づいたとき、互いに協力する段階へと移っていく。ひとつの作業をどのように進めるか会話でやりとりをしながら協力することは、競い合って誰か一人を勝者として選ぶよりも多くのスキルを学ぶことができる。自分の考えを述べる言語スキルはもちろん、自分からは出てこない他人の意見を聞くことで、問題解決のためには他者に注意を向ける必要があることを知るだろう。

大人は子供が上手くコラボレーションできるよう、友達と分け合ったり、交代で何かしたりすることで面白さを実感できる機会をつくってやることが大切だ。そして、子供がどんなことをしたかを一緒に振り返り、望ましい社会的な行動をしたときは素直に褒めよう。

コミュニケーション

効果的なコミュニケーションは、前述のコラボレーションを促進するためにも必要とされる。グローバル経済の世の中だからこそ、情報を共有し、他の人を説得するためのコミュニケーションスキルが重要である。

最も初歩的なレベルのコミュニケーションは、感情をむき出しにすることだ。子供は思い通りに物事が進まなかったとき、怒ったり泣き叫んだりする。そのときに親が関わって、別の考えに気づかせたり、怒りの感情を表す言葉を使うように促したりすることで、感情をコントロールしたり、適切に表現することを教えることができる。

子供が感情をコントロールできるようになったら、次に必要なのは「人の話を聞く」スキルを磨くことである。一方的に自分のことを話すのではなく、誰かが話をするときは聞き役に徹するといったトレーニングを積むことによって、誰かの発言に集中することができるようになる。感情的にならずに話をすること、そして誰かの発言に耳を傾けることのあとの段階として、ようやく他者との対話が生まれる。

その上で、コミュニケーションする際の量や質、トピックの関連性や相手を考えた作法にまで配慮できると、非常に高度なコミュニケーションが成立する。

大人がこうしたコミュニケーションスキルを磨く手伝いをするためには、まず子供との対話中にスマートフォンを閉じておくことが必須となるだろう。会話のマナーについて意識し、実際の会話を注意深く観察して、どのようにコミュニケーションが作用するのかを学べるように支援せねばならない。

コンテンツ

コンテンツは、今までの学校教育の中で最も重要とされていた「知識」と言い換えることができる。知識コンテンツは問題を解決するために非常に大切なものだ。しかし、21世紀においては、ただ物事を知っているだけでは意味がない。必要に応じて臨機応変に学び、既に知っていることを組み合わせて新たな知識を生みだし、創造的に考える能力が求められている。

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要約公開日 2018.05.29
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