新・日本の階級社会

未 読
新・日本の階級社会
ジャンル
著者
橋本健二
出版社
定価
900円 (税抜)
出版日
2018年01月20日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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新・日本の階級社会
新・日本の階級社会
著者
橋本健二
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定価
900円 (税抜)
出版日
2018年01月20日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
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レビュー

「格差社会」という言葉が聞かれるようになって久しい。だが現実は「格差」という生ぬるい状態ではない。たとえばひとり親世帯の半数が貧困層で、男性の3割は経済的理由で結婚できないのをご存知だろうか。900万人を超える人々が「下層階級(アンダークラス)」での苦しい生活を強いられている。しかも階級は固定化し、負の連鎖が次世代に継承されている。日本はいまや、歴然とした「新しい階級社会」に突入したのだ。これが本書の骨子である。

理論社会学を専門とする著者は、SSM調査(社会階層と社会移動全国調査)や2016年首都圏調査など、さまざまな社会調査データや官庁の統計などを駆使し、説得力のある論を展開する。肌感覚で薄々は感じていても、つい見て見ぬふりをしたくなるような社会の断絶ぶりが、膨大なデータに裏付けられ衝撃の事実として迫ってくる。

しかも現代日本の社会構造は、従来の理論や学説では説明しきれないものだという。書名に「新」がついているのは、そうした意味合いだ。格差の是非については意見が分かれるだろうが、いずれの立場を取るにせよ、現代日本を論じるうえで知っておくべき現実がある。まずはそれを解き明かしたいというのが著者の意図だ。

著者自身は、現在の格差は容認できないほど大きいと見ている。格差を縮小させ、より平等な社会を実現するべきという立場だ。本書にはそのための解決策も示し、とりわけ「弱者」と「リベラル派」に行動を呼びかけている。平坦な道のりではなさそうだが、一筋の希望が感じられる内容となっている。

小島和子

著者

橋本 健二 (はしもと けんじ)
1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。専門は理論社会学。主な著書に『階級社会』(講談社選書メチエ)、『「格差」の戦後史』『はじまりの戦後日本』(以上、河出ブックス)、『階級都市』(ちくま新書)、『戦後日本社会の誕生』(弘文堂)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「一億総中流」は虚実だった。戦後日本は、農民層中心の社会からダイナミックな変化を遂げ、いまや「アンダークラス」と呼ばれる下層階級を含めた、前例のない階級社会に突入している。
  • 要点
    2
    資本家階級から正規労働者までが一体となり支配・抑圧しているアンダークラスの人々は、経済的に逼迫しているだけでなく、ソーシャル・キャピタルも脆弱で不安に苛まれている。
  • 要点
    3
    社会全体に弊害をもたらす格差を縮小させ、平等な社会を実現しなければならない。行動の担い手となるのは「弱者」と「リベラル派」だ。その受け皿となる政治勢力がいま求められている。

要約

「中流」が分解した現代日本の階級構造

「一億総中流」は虚実だった
Miyuki-3/iStock/Thinkstock

日本では1970年代後半から約30年にわたり、「一億総中流」が常識と考えられていた。この根拠となっていたのは、総理府(当時)による「国民生活に関する世論調査」である。自分の生活程度を6段階から選ぶもので、1975年には90.7%の人が「中の上」「中の中」「中の下」のいずれかを選んでいる。

だがこの結果が示すのは、自分の生活を中程度だと「思っている」人の割合であって、実際の生活程度ではない。1970年代の人々の階層帰属意識と実際の収入や社会的地位の間には、大きなズレがあったことが近年の研究で明らかになっている。「一億総中流」は虚実だったのだ。

いま人々の階層帰属意識は大きく変わってきている。職業や学歴、収入といった現実の階層的位置を示す要因が、階層帰属意識と対応するようになった。つまり豊かな人々は自分の豊かさを、貧しい人々はその貧しさを自覚し、格差の存在を認識するようになったのである。

劇的な変化を遂げた社会の「かたち」

収入や生活程度、意識などによって、人々はいくつかの階級に分けられる――こうした考えを社会学では「階級論」と呼ぶ。階級の区別方法として、昔からよく使われているのが、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級を区別する4階級分類だ。

資本家階級とは5人以上の従業員を雇う経営者や役員のことであり、新中間階級は被雇用者のうち管理職や専門職を指している。それ以外で非正規を含めた被雇用者が労働者階級に当たる。旧中間階級とは、従業員規模が5人未満の経営者・役員・自営業者、家族従業者のことである。

この階級区分をもとにすると、戦後日本の社会の「かたち」が、ダイナミックかつ急激に変化してきたことがわかる。資本主義が未発達だった1950年には、有業者の6割近くを旧中間階級が占め、その多くは農民層であった。だがその後、経済復興・高度成長とともに農民層は激減し、1960年代に入ると旧中間階級と労働者階級の割合が逆転。1995年にかけて資本家階級も急増した。

新しい階級「アンダークラス」の出現
FreedomMaster/iStock/Thinkstock

階級ごとの格差に目を向けると、大きな問題となっているのが労働者階級内部での格差拡大である。労働者階級の貧困率は、1975年まで低下した後、1985年から上昇に転じた。これは日本全体の格差縮小・拡大のトレンドと一致している。だが2015年にふたたび貧困率が低下している点に注目したい。この背景にあるのが、正規労働者と非正規労働者の分裂という大きな構造変化である。

両者の経済状態を2005年と2015年で比較すると、全体的には収入減が続くなか、正規労働者の個人年収は、男性で19.3万円、女性で15.3万円増加している。世帯年収も同じ傾向だ。対照的に非正規労働者は、女性の個人年収がわずかに上昇しているものの、ほかは大きく低下している。

2015年の正規労働者の貧困率は、男女ともに6%台だ。だが非正規労働者の貧困率は、男性で28.6%、女性にいたっては48.5%ときわめて高い。同じ労働者階級とはいえ、正規と非正規の間には大きな差がある。

このことから非正規労働者は、従来の労働者階級よりもひとつ下の階級を構成しはじめているといえる。階級以下の存在という意味で、「アンダークラス」と呼ぶのがふさわしいだろう。

【必読ポイント!】 新しい「階級社会」の誕生

支配・抑圧の上に成り立つ階級構造

アンダークラスの登場によって、現代日本の階級構造は大きく転換しつつある。「新しい階級社会」を迎えたのだ。

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