ミライのつくり方 2020-2045の表紙

ミライのつくり方 2020-2045

僕がVRに賭けるわけ


本書の要点

  • 2012年に発表された『オキュラス・リフト』では魚眼レンズが使われている。魚眼レンズ用に最初から映像を歪ませておくことで視界を広げることに成功し、VRの映像に実在感と没入感を与えた。

  • 人は見慣れないものに怖さや不安を感じる。それは昔、パソコンを使う人たちを「キモい」と感じたのと同じで、著者はその溝をキャズムならぬ「キモズム」と呼んでいる。

  • VR機器の浸透には「キモズム超え」が必要だ。そのためにはデザインを良くすることが先決であり、多くの人にとって見慣れたものにしていかなければならない。

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パソコン通信からインターネットの時代へ

プログラミングが大好きだった子ども時代

ValeryBrozhinsky/iStock/Thinkstock

普通のサラリーマン家庭で育った著者が最初にコンピュータに触れたのは、幼稚園の頃だった。新しいモノ好きな父親が中古で『PC-6001mkⅡ(NEC、1983年)』を買ってきたのだ。それはまだファミコンが登場する前の、パソコンが「マイコン(マイクロコンピュータ)」と呼ばれていた時代のことである。1980年代、駄菓子屋にはアーケードゲーム機があった。その性能は当時のパソコンや家庭用ゲーム機より高く、著者は40円のソース焼きそばを食べながらゲームをプレイするのがなにより好きだった。しかしアーケードゲームは安価とはいえお金がかかる。その点マイコンなら、家に帰ればタダでゲームができる。著者はゲームを楽しみながら、マイコンの仕組みやプログラミング言語「BASIC」を理解していった。そのうちゲームの改造や解析を通してプログラミングを学び、小学4年生ではじめてオリジナルのプログラミングを作った。自分の思い通りにコンピュータが動く。そのことに著者は喜びを感じた。

パソコン通信局を作った中学時代

中学1年の時、開業直後のディズニーランドへ行く代わりに「モデム」を買ってもらう。この頃になると電話回線でコンピュータ同士をつなぎ、それぞれが「ホスト局」と「ゲスト」としてコミュニケーションをとる「パソコン通信」が登場していた。著者もパソコン通信にハマったものの、当時はまだ遠距離通話の電話代が高かった時代だ。使いすぎると当然、高額な電話代の請求書が届いてしまう。親の逆鱗に触れてしまった著者は、パソコン通信を禁止される。それでもどうにかしてパソコン通信をしたかった著者は、発想を転換して自宅をホスト局にした。そうすれば向こうから電話がかかってくるので、電話代を気にする必要はない。こうして誕生したのがパソコン通信局「GORO-NET」である。 パソコン通信の世界では、中学生らしい雑談中心のカジュアルな世界に惹かれた人たちがたくさん集まった。しかし現実の世界では、パソコンをやることに「暗い」というネガティブなイメージがあり、まるで隠れキリシタンのような生活を送った。

インターネットと出会った大学時代

NicoElNino/iStock/Thinkstock

高校2年の時、インターネットができる大学があることを知る。当時のパソコン通信は「同じホスト局の会員同士」のため、閉じられた世界だった。かたやインターネットは海外のネットワークとも相互接続が可能な通信手段である。著者の目にはものすごい可能性があるように映った。プログラミング推薦でインターネットがある大学に入学して2年が過ぎた頃、ウィンドウズ95が登場した。その頃のウィンドウズ95搭載ノートパソコンといえば、65万円もする代物である。それでもどうしても欲しかった著者は、36回払いのローンを組んで購入した。著者がプログラマーになった契機もここにある。購入費用の足しになればと思い、ダイヤルアップ・ルーターの『MN128-SOHO(1997年)』を制御するソフトを作ってシェアウェアとして提供してみたところ、これが大ヒットした。インターネット接続は、いまでは常時接続が当たり前だ。しかし当時は使う時だけモデムを使ってつなぐ「ダイヤルアップ接続」の時代である。著者が作った、不意の接続を避けるためのソフトは多くの人のニーズを満たし、結果として200万円以上ものお金を手にすることができた。その後、著者は大学を中退してゲーム会社に入社。プログラマーの道を歩みはじめる。

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ゲーマーから経営者へ

デザイナーを地獄の配置作業から解き放つ

日本のゲーム業界が成長期を迎えていた1996年、著者はゲームソフトの開発会社にプログラマーとして入社した。そこで最初に完成させたのは、同じ会社のデザイナー向けの作業効率化ツールだった。

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要約公開日 2018.08.14
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