アクティブラーニング
学校教育の理想と現実

未 読
アクティブラーニング
ジャンル
著者
小針誠
出版社
定価
950円
出版日
2018年03月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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学校教育の理想と現実
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小針誠
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950円
出版日
2018年03月20日
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レビュー

アクティブラーニングについて書かれたものは多いが、本書ほど猜疑的な立場のものはなかなかないだろう。アクティブラーニングとは、学習者が能動的・主体的に学びをおこなう教育活動とされる。一見理想的な教育法に聞こえるが、はたして本当にそうなのか。アクティブラーニングをめぐる「幻想」について考えるところから本書は始まる。

「能動的・主体的な学び」と聞くと、平成中期の「ゆとり教育」を連想する人も多いかもしれない。しかし歴史を見れば、アクティブラーニングという言葉こそ使われていないものの、戦時下や大正時代でもこれと近い教育の導入が見られた。本書では近代教育史を紐解きながら、それぞれの時代の〈アクティブラーニング〉を検証し、現在の教育政策の課題を考えるという構成になっている。

理想論ばかりが先行し、見切り発車で教育政策をおこなうとどうなるのかは、歴史が多くを語ってくれる。いまの日本は「アクティブラーニング」や「主体的・能動的な学び」など、「よさそう」な感じのする甘い言葉に飛びついて、安易に教育改革をおこなってはいないだろうか。

新学習指導要領への移行はすでに始まっている。現場は待ったなしだ。これからの未来を担う子供たちの教育について、子供がいない人も他人事ではいられない。10年後にはこうした教育政策で学んだ新入社員が入社してくるかもしれないのだ。教育関係者はもちろん、まったく教育にかかわりをもたない人にこそ読んでほしい一冊である。

池田 明季哉

著者

小針 誠(こばり まこと)
1973年、福島県生まれ、栃木県育ち。慶應義塾大学文学部卒業、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は教育社会学・教育社会史。同志社女子大学現代社会学部准教授などを経て、現在、青山学院大学教育人間科学部准教授。著書に、『教育と子どもの社会史』(梓出版社)、『〈お受験〉の社会史』(世織書房)、『〈お受験〉の歴史学』(講談社選書メチエ)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    アクティブラーニングとは、さまざまな活動や体験を取り入れることも含め、アクティブな視点で学習者の主体的・能動的な学びを促進し、深めていくこととされる。
  • 要点
    2
    ゆとり教育の失敗を受け、新しい学習指導要領では「確かな学力」の確立を目指し、「主体的・対話的で深い学びの視点」が導入されたが、その裁量と責任は学校にゆだねられている。
  • 要点
    3
    アクティブラーニングには課題も多い。理想論が先行しがちだが、実現の難しさを認識し、現場での教育をどうするのか今考えなければならない。

要約

【必読ポイント!】 アクティブラーニングとはなにか

能動的・主体的な学びへ
Monkey Business Images/Monkey Business/Thinkstock

いま日本の学校教育が大きく変わろうとしている。先生が一方的に説明し、子供たちが教科書やノートの内容を覚える「受動的な学び」から、子供たちが主体的に考えたり、グループ内で意見を交換しあったりすることで、各自が学びを深めていく「能動的・主体的な学び」へと変化しようとしているのだ。パッシブからアクティブへ、学びは「アクティブラーニング」へと移行しようとしている。

「アクティブラーニング」とは、さまざまな活動や体験を取り入れることも含め、アクティブな視点で学習者の主体的・能動的な学びを促進し、深めていくこととされる。なおここでいう「アクティブな学び」には2つの意味がある。能動的・主体的な学びと、活動的な学びだ。両者は当然のように結びつけられ、活動的な学びをおこなえば、子供たちは能動的・主体的な学びができるという意識がそこにはある。

即戦力を求める人材育成

アクティブラーニングはもともと、一部の教育現場でおこなわれていた自主的な取り組みだった。しかしある時期から、教育政策として実施されるようになったという経緯をもつ。

「アクティブラーニング」という言葉が国の教育政策のなかではじめて使われたのは2008年のことだ。当初は大学の授業について述べられたものだった。

その後一度この言葉は削除されるものの、2012年に中央教育審議会の答申でふたたびあらわれ、大学の授業のあり方そのものを見直すきっかけとなった。社会が国際化・情報化していくなかで、生涯にわたって学びつづける力、主体的に考える力をもった人材の育成が急務とされたのである。

この背景には経済界からの影響もあった。バブル経済の崩壊後、企業は人材育成の余裕をなくしており、その対策として大学での「即戦力」の育成が期待されたわけだ。

小学校から高校までのアクティブラーニングが提言されたのは2014年のことである。この時点で小学校から大学までの教育を、一貫してアクティブラーニングへと転換する動きが始まった。小学校から高校までの教育においては、各教科における基礎的な知識の習得をもとに、思考力・判断力・表現力の育成をめざすとされ、そこには「豊かな人間性」といった道徳的な内容も含まれた。

授業改善の「視点」による問題点
Deklofenak/iStock/Thinkstock

小学校から高校までの教育現場において「アクティブラーニング」は、「体験・活動中心の授業活動」と捉えられた。討論や校外活動を取り入れ、挙手や発言の回数を評価するような、形式的な方法ばかりが注目されたのだ。これは「活動あって学びなし」などと批判されることになる。

こうした批判への対応として、アクティブラーニングは教育方法の「型」ではなく、授業改善のための「視点」であることが強調された。そして「アクティブラーニング」に代わり、「主体的・対話的で深い学び」というキーワードが使われるようになる。2016年の答申では、「アクティブラーニング」は具体的な方法論から、目標・内容・評価を一体化した学びの「視点」へと変更された。この「視点」への転換により、以下の問題が明らかになった。

第一に、カリキュラムの構成に無理が生じた。各教科のみならず教科外活動、さらには部活動についても「主体的・対話的で深い学び」をめざす、という強引さだ。

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