女の機嫌の直し方

未読
女の機嫌の直し方
女の機嫌の直し方
未読
女の機嫌の直し方
出版社
集英社インターナショナル

出版社ページへ

出版日
2017年04月12日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

「あなたって、どうしてそうなの?」「なんで、わかってくれないの?」こんな言葉を女性から投げかけられたことがあれば、本書の出番だ。恋人、妻、母親、女性の上司・部下。男性なら、女たちの機嫌の地雷を踏んで「とほほ」となったことは、一度や二度あるのではないだろうか。「女の機嫌はわからない」、これは、男性たちの永遠のテーマかもしれない。しかし、脳科学上は、いとも簡単にその解決の糸口を見つけられるという。

男女の脳は、とっさの信号特性が違い、ときに全く別の装置になる。典型的な違いの1つは、会話の紡ぎ方である。一般的に男性はまずゴールを知りたがり、女性は共感を求めプロセスを語ろうとする。これでは相容れないのも当然だ。

著者は、男女の脳の違いが織り出す男女の機微を研究し、『妻のトリセツ』などのベストセラーを数多く生み出してきた人工知能研究者。本書は、研究の知見を活かしたコミュニケーションの秘訣の宝庫だ。読めば、「だからすれ違っていたのか!」と胸のすく思いがするだろう。「女心は複雑怪奇」と思っていた男性たちへの福音の書といってもいい。

女の機嫌の直し方を知れば、家庭や職場の人間関係が好転すること請け合いだ。女性も本書を読むことで、よりあたたかい目で男性を見つめられることだろう。もちろん、男と女のおかしくも哀しいすれ違いがあるからこそ、人生は面白い。男女が互いの個性を尊重しながら、幸せに生きるための、新たなコミュニケーションの教科書として、本書をおすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

黒川 伊保子(くろかわ いほこ)
人工知能研究者、脳科学コメンテーター。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、2003年(株)感性リサーチ設立。著書に『日本語はなぜ美しいのか』(集英社新書)、『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す!』(集英社)、『ヒトは7年で脱皮する』(朝日新書)、『恋愛脳』(新潮文庫)、『英雄の書』(ポプラ社)、『ことばのトリセツ』(インターナショナル新書、6月7日発売)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    脳の「とっさの使い方」には性差があり、それゆえ、男女の間には深いミゾがある。しかし、女性の機嫌の真相を学べば、よりよいコミュニケーションが生まれる。
  • 要点
    2
    女性の対話は「プロセス指向共感型」である。「思う存分経緯を思い出すこと」により、課題への答えが見えてくる。共感によって上手に話を聞いてもらうと、女性脳の演算の質が上がる。これに対し、男性の対話は「ゴール指向問題解決型」である。全体の主幹をシンプルにとらえようとし、結論を先に求める。女性と話す際は、相手の言葉を反復して共感で返すとよい。
  • 要点
    3
    心にないセリフでもかまわない。ことばが優しい気持ちを連れてくるからだ。

要約

【必読ポイント!】 脳には性差があるのか

人工知能研究から見えた「男女のミゾ」
BrianAJackson/gettyimages

男と女の間には、深いミゾがある。なぜ女性たちは、男性の思いもかけないところで機嫌を損ねるのか。さしたる法則性もないように見える。しかし、女の機嫌の損ねようには類型がある。本書の狙いは、人工知能や脳科学の観点から、男女の脳の違いと女の機嫌の直し方を学んで、対処できるようになることだ。

ヒトの脳の機能を精査していくと、男女の性差は歴然と存在することがわかっている。著者はかつて、人とロボットの対話の設計に関わっていた。感性の領域に踏み込む人工知能エンジニアとして、男女の対話を徹底的にシミュレーションしてきた。そこで発見したことの1つが、男女の対話スタイルの違いである。女性は、ことの発端から時系列に沿ってプロセスを語りたがる。一方、男性は、最初に話のゴールを知りたがる。これらが相容れないのも当然だ。

さらには、画像認識のシステムをつくるにあたり、男女の視点の運び方の違いにも気づいた。男性は遠くと近くを交互に見て、ものの輪郭と距離感をつかむ。これに対し、女性は、比較的近くにあるものの表面をなめるように見て、微細な変化も見逃さない。このため、デートをする際、女性は男性が注意力散漫に見えてしまう。自分に集中してくれておらず、愛が足りないと勘違いしてしまうのだ。これが人工知能の研究室で著者が知った、悲しい男女のミゾであった。

男と女の対話は、どうしたってすれ違う

では、先述したように、女性脳がプロセスを語ることを重視するのはなぜなのか。じつは女性は、ことの経緯を語るうちに、そこに潜む真実を探っている。そして、人間関係のひずみや自分の失言などに気づいていく。女性の対話は「プロセス指向共感型」なのだ。

重要なのは「思う存分経緯を思い出すこと」である。五感をフル回転して認識した状況をリアルに再体験し、経緯をこと細かに話すなかで、答えが見えてくるのだ。そのため、話の腰を折られると、真実を探る演算が中断されてしまう。逆に共感によって上手に話を聞いてもらうと、演算の質が上がる。これが女性脳には共感が必要といわれる所以だ。

これに対し、男性の対話は「ゴール指向問題解決型」である。男性は、全体の主幹をシンプルにとらえようとする。長らく狩りを担ってきた性であるためだ。全体を俯瞰して、ものの位置関係と距離感を正確に把握しようとし、公平性を重視する。

よって、女性の、着地点のわからない話に寄り添うことは、男性にはかなり難しい。つい、「何がいいたいんだ?」「結論は?」と話を遮ってしまう。

たとえば、妻が「なんだか、腰が痛くて」といったとしよう。男性がいきなり「医者に行ったのか」と返したら、対話は破綻する。正解は、相手の言葉を反復して共感で返すことだ。「腰が痛いのか。それはつらいね」。これだけで女性の脳のストレス信号が減少し、不調が軽減することもある。

このように、対話には、女性が好むプロセス指向共感型と、男性が好むゴール指向問題解決型の2種類があることに留意したい。

女性はなぜ共感してもらいたがるのか?
Tamara Dragovic/gettyimages

男性なら、こんな疑問をもつかもしれない。女性はなぜ、「転びそうになって転ばなかった話」をし、共感を求めるのか。じつは、男性脳からすると情報量ゼロの話が、女性脳にとっては情報価値の宝庫なのだ。

「怖い」「つらい」といったストレスを伴う感情が起こるとき、女性脳は、ストレス信号が男性脳の何十倍も強く働き、何百倍も長く残る。ただし、共感してもらうと、この余剰な信号が沈静化していく。安心感を得て、自分の感情を客観視できるためだ。

この余剰な信号は、危険な事態を記憶して、二度と同じ状況に自分を追い込まないための防衛手段である。哺乳類のメスにとって、自分や自分の子どもを守るためには、「自己保全」が第一の条件となる。そのため、脳が強く反応した体験を思い返すことで、今後に活かせる知恵やセンスを創出していくのである。

したがって、女性の部下をもつ男性上司は、女性のこうした感情の吐露には、共感する必要がある。余剰な感情が長引かない男性脳には、共感は難しいかもしれない。しかし、共感が女性の仕事への集中力やモチベーションを高めることにつながっていく。

右左脳連携の違いが、脳の性差を生む

脳の性差は生まれたときから存在する。それは、右脳と左脳を連携させる神経線維の束(脳梁)が、女性脳のほうが太いことに起因する。しかも、女性脳のほうが連携の頻度と密度が高い。右脳は「感じる領域」、左脳は「顕在意識と直結して言葉を紡ぐ領域」である。このため、右脳と左脳の連携がよい女性脳は、感じたことが、次々に言葉になって意識に上がってくる。これが、女たちが察する天才であり、臨機応変に行動できる理由だ。

もちろん、男性にも女性にも、その性に生まれたからといってできないことは何一つない。職能のような恣意的な領域で、「女性だから」という理由で劣っていることなど、何もない。

ただし、脳には性差がないと考えると、男女は互いに同じ入力に対し、同じ出力を期待して、すれ違いに悶々としてしまう。脳には明らかに性差があると認めたほうが、日々の暮らしはずっと楽になる。

女性脳とはいかなる装置か

女性脳の真骨頂、臨機応変力のカギは「共感」にあり

女性脳は共感でまわっている。女性たちが口にする「カワイイ~」は、「可愛い」という評価を伝える言葉ではない。「私、心が動きました、あなたも動いた?」というほどの意味である。

女性脳では、一部の体験記憶が、その体験時の「心の動き」とセットでしまわれており、「心の動き」を検索キーとして、検索エンジンにひも付けされていく。そのため、予想外のことが起きたとき、「心の動き」をトリガーにして、過去の関連記憶を芋づる式に引き出せる。よって、女性はとっさに行動するのが得意なのだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り1534/3941文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2019.06.15
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
科学的に証明された究極の「なし遂げる力」
科学的に証明された究極の「なし遂げる力」
児島修(訳)ショーン・ヤング
未読
すべては「好き嫌い」から始まる
すべては「好き嫌い」から始まる
楠木建
未読
実験思考
実験思考
光本勇介
未読
会話は、とぎれていい
会話は、とぎれていい
加藤綾子
未読
死ぬ瞬間の5つの後悔
死ぬ瞬間の5つの後悔
ブロニー・ウェア仁木めぐみ(訳)
未読
自己啓発をやめて哲学をはじめよう
自己啓発をやめて哲学をはじめよう
酒井穣
未読
頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き
頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き
塚本亮
未読
科学的に正しい筋トレ 最強の教科書
科学的に正しい筋トレ 最強の教科書
庵野拓将
未読
法人導入をお考えのお客様