「ホットケーキの神さまたち」に学ぶビジネスで成功する10のヒント

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2019年05月02日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

誰もが一度は食べたことがあるであろう、家庭の味ホットケーキ。これをわざわざ外食で食べる必要があるのか、と考える人もいるかもしれない。しかし、本書を読むと、そんな考えは吹き飛んでしまうだろう。

本書はじつに不思議な本だ。ホットケーキの名店のガイドブックでありながら、ホットケーキの繁盛店からビジネスのヒントを探るビジネス書でもある。ホットケーキの名店には、海外からの観光客も多い。ある米国人家族は、黒塗りのハイヤーで板橋の大山にあるピノキオという名店に乗りつけ、ホットケーキを食べ、銀座の高級ホテルへと戻っていったのだという。なぜホットケーキはここまで世界を魅了するのだろうか。

著者の遠藤功氏も、ホットケーキに魅せられた一人だ。思い出の店であった「万惣フルーツパーラー」の閉店にショックを受けた著者は、それ以来、ホットケーキを提供する個人経営の店の食べ歩きを始める。そしてホットケーキの魅力だけでなく、ビジネスを成功に導く経営戦略の肝までも学んだのだという。

本書は二部構成になっている。前半では、都内、神奈川、関西の31ものホットケーキの名店を紹介していく。後半では、各繁盛店の「差別化」に焦点を当て、そこから見えてくる「ビジネスで成功するためのヒント」を解説する。

読み終わる頃には、ホットケーキが食べたくなるとともに、ホットケーキの名店の見事な差別化の手法に舌を巻くにちがいない。一冊で二度おいしい本としておすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

遠藤 功(えんどう いさお)
ローランド・ベルガー日本法人会長。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現職。経営コンサルタントとして、戦略策定のみならず実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングとして高い評価を得ている。ローランド・ベルガーワールドワイドのスーパーバイザリーボード(経営監査委員会)アジア初のメンバーに選出された。株式会社良品計画社外取締役。SOMPOホールディングス株式会社社外取締役。日鉄日新製鋼株式会社社外取締役。株式会社マザーハウス社外取締役。株式会社ドリーム・アーツ社外取締役。コープさっぽろ有識者理事。『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』(以上、東洋経済新報社)、『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)など、ベストセラー著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    ホットケーキは日本では家庭の味として親しまれているが、その一方で、シンプルであるうえに奥深く、店の個性が出やすい食べ物である。名店のホットケーキは、日本国内外の多くの人を長年魅了し続けている。
  • 要点
    2
    ホットケーキの繁盛店は「差別化」に成功している。繁盛店から学ぶべきヒントは、「競争戦略の視点」「現場力の視点」「マーケティングの視点」「経営理念の視点」の4つの視点で整理できる。

要約

ホットケーキに魅せられて

名店閉店のショックから、ホットケーキ食べ歩きへ

著者がホットケーキに魅せられたきっかけは何か。それは、神田須田町にあった「万惣(まんそう)フルーツパーラー」というホットケーキの名店を訪れたことだ。小学生の頃、弟と一緒によく父に連れていってもらったお店で、初めてホットケーキを食べた店でもある。

しかし、「ひさしぶりにホットケーキでも食べよう」と同店に出向くと、2012年に閉店していたことが判明する。著者は「たかがホットケーキ」で、自分でも不思議なくらいショックを受けた。のちに、著者は「万惣には思い出を食べに行っていた。ホットケーキは特別な食べ物だ」と思い至ったのである。

ホットケーキという「昭和の食べ物」は、このままではなくなってしまうかもしれない。そう気付いた著者は、美味しいホットケーキを探し求め、食べ歩きを始めるようになった。

本書の前半では、著者のおすすめする31ものホットケーキ繁盛店がエリアごとに紹介されている。本要約では、その一部をとりあげる。

ホットケーキとはどんな食べ物?
santypan/gettyimages

まずはホットケーキの定義を確認しよう。多くの人は、ホットケーキとパンケーキは何が違うのか、と疑問に思うかもしれない。欧米ではこれらは区別されていないが、日本人は別の食べ物として認識している。

森永製菓によれば、2つの違いは「甘さ」と「膨らみ」だそうだ。大まかにいうと、ホットケーキはふっくらふんわりしていて、甘みのある生地そのものを楽しむもの。一方、パンケーキは、薄い生地自体の味は控えめで、スイーツとしても食事としても楽しめるものである。

昭和の時代、西洋の文明や文化が徐々に入り込んできた。その頃でも、店で食べる西洋の食べ物は、庶民にとっては高嶺の花だった。そこで、自宅でも作れるホットケーキの人気が高まっていった。それを加速させたのが、加糖された「ホットケーキミックス」の誕生だ。

それ以来、ホットケーキは家で食べるものとして認識されるようになり、喫茶店やフルーツパーラーのメニューから消えていくこととなる。しかし、それでもホットケーキにこだわり、家庭では食べられない味を提供する店が残っていった。人気店は、それぞれ独自のこだわりや味、食感、デザインを持ったホットケーキを提供している。

都内で食べられるバラエティ豊かなホットケーキ

クラシックな下町エリアのホットケーキ
bhofack2/gettyimages

台東区、江東区、足立区、荒川区などが含まれる「下町エリア」。そこでは、ホットケーキを提供するレトロな喫茶店が存在する。とりわけ昔ながらのクラシックなホットケーキが多い。

錦糸町にある喫茶ニットは、錦糸町駅の南口から数分のところにある。赤煉瓦造りの建物に入ると、テレビ撮影でも使われる、レトロ感満点の店内につながる。もとはセーター工場であったが、1964年に改装。40年ほど前、現在のビルに建て替えた頃からホットケーキを提供し始めた。

当時の従業員が「ホットケーキが人気らしい」と、新橋の人気店でレシピを教えてもらい、それがやがて店の名物となった。厚さ3センチはあるホットケーキが2枚で670円。バターが楊枝で刺さっているのがトレードマークだ。外はかためで中はしっとり。甘さ控えめな生地にたっぷりのシロップがよくなじみ、溶けたバターと一緒に食べると実に美味しい。生地をあらかじめつくっておいて寝かせることで、しっとり感が出る。個体差がないようにと、銅のセルクル(型枠)を使って、銅板でじっくり焼いているそうだ。

モダンな都心エリアのホットケーキ

千代田区や渋谷区、文京区といった東京の中心にある「都心エリア」。このエリアのホットケーキは、モダンで洗練されたものが多い。

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要約公開日 2019.07.06
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