本書の要点

  • ミクシィは、SNSのmixiの低迷によって、一時は存続の危機にまで立たされた。しかし、スマートフォンゲームアプリのモンストの大ヒットによって、V字回復を遂げた。

  • ミクシィは常に、「コミュニケーションの力で人々の人生を豊かにする」という哲学を信じてきた。

  • この哲学のもと、ミクシィはコミュニケーションサービスのノウハウを生かして、今後はスポーツやウェルネスの分野でも事業の柱を育てていく予定だ。

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mixi低迷からモンスト誕生まで

キーワードは「近しい間柄のコミュニケーション」

fizkes/gettyimages

2004年にミクシィがリリースしたmixi。日本のSNSの草分け的存在となり、コミュニケーション革命を起こしたといえるほどの影響力を持っていた。ところが、TwitterやFacebookの台頭に押され、ミクシィの業績は低迷していった。

転機は2013年。モンスターストライクのリリースにより、業績はV字回復を遂げた。現在、ミクシィの売上高である1891億円(18年3月期)の9割を、この関連事業が占めている。

mixiとモンストは、まったく異なる分野のサービスだと思われるかもしれない。だが、どちらも友人、知人や家族など、親しい間柄の人たちがお互いにコミュニケーションをするという点で共通している。ミクシィは創業以来、この近しい間柄のコミュニケーションに大きな価値を見出し、これを得意な領域としてきた。まずは、ミクシィがモンストという新たな事業の柱を、どのように生み出してきたのかを見ていこう。

mixiパークからの撤退

業績が右肩下がりだった2012年、著者は「mixiパーク」という、スマホ向けアプリの企画・開発を担当していた。このアプリは、自分の似顔絵をもとにしたキャラクターを通じて、mixiの友だちとコミュニケーションができるサービスだった。

インターネットの普及とともに、顔の見えない相手とのコミュニケーションが増えていた。ミクシィでは、そのような人間関係を「バーチャルソーシャル」と呼び、友達や家族などとの人間関係、「リアルソーシャル」と区別していた。

当時、ゲームやインターネットの業界では、リアルソーシャルでのマネタイズは難しいと言われていた。しかし、知り合いとワイワイ楽しむコミュニケーションの場なら流行するはずだと、著者は考えていた。

この事業はコナミとの共同事業であったが、意思疎通に課題があった。思い描いていたプロダクトがつくれず、ユーザー数も継続率も伸び悩む一方。どんな打ち手も成果につながらなかった。こうして2012年10月のリリースからわずか2ヶ月後、著者は当時ミクシィの代表だった笠原健治氏に呼び出された。mixiパークの撤退が決定したのである。

撤退決定後すぐに生まれたアイデア

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撤退が決まった瞬間から、著者は次のゲームのことを考え始めた。ここで生まれたアイデアの種が、1年も経たずしてモンストへつながる。

著者はmixiパークが失敗した要因を次のように考えた。それは、意思疎通のしづらい開発体制、マネタイズの仕組みの欠落、ゲーム性の弱さである。これらを解消した上で、リアルソーシャルでもマネタイズできることを証明するようなゲームをつくりたい。そんな思いのもと、アイデア出しを行った。このとき用いたのは、会議の主催者が質問をコントロールし、答えを誘導する「ブレーンステアリング」という手法である。これにより得られたアイデアが、ビリヤードを基本動作にするというものだ。

つづいて活躍したのが、「事業アイデアコミュニケーションシート」である。プロジェクトに関わるメンバーへ、企画意図をロジカルに伝えるためのツールだ。著者は口頭で説明する際、比喩やエキセントリックな表現を多用するという自覚があった。そのため、このシートを用いて、テキストだけで精緻に描写することで、コミュニケーションの齟齬を防いだのである。

実現すべきは、「みんなでワイワイ」という世界観だ。著者は、モンストがめざすコンセプトを明確なステートメントの形でチームに共有した。こうしたことが奏功し、2013年10月、開発着手から約7ヶ月という異例のスピードで、モンストのiOS限定配信へと漕ぎ着けたのである。

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【必読ポイント!】 起死回生の一手となったモンスト

「リアルソーシャル」が勝った瞬間

リリース当初、ミクシィはあえて大々的なプレスリリースは出さなかった。社内のメンバーとその知人や家族からスタートさせ、徐々にユーザーを伸ばしていくのが理想的だと考えていたためだ。

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要約公開日 2019.06.26
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