5Gビジネス

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出版社
日本経済新聞出版社

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出版日
2019年06月14日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

2020年春にサービス開始を控えた5G(第5世代移動通信システム)に関するニュースを、最近見かける機会が多くなってきた。移動通信システムが4Gから5Gに移行することは、映画が一瞬でダウンロードできるなど、一般的には通信速度アップのための施策として認識されている。

しかしそれは5Gの一側面にすぎない。5Gは私たちのライフスタイル自体をも激変させる可能性を秘めている。いま多くの企業が5Gを利用して、ビジネスをいかに進化させるかを模索している。今後5Gは、さまざまな分野でビジネスチャンスをもたらすだろう。

本書は5Gの概要、その基幹技術、消費者やビジネスに与える影響を解説した、いわば5Gビジネスの入門書である。エンターテインメント、モビリティ、医療・介護などのサービスが5G時代にはどのようになるのか。また電気・ガス・水道などのユーティリティ産業、防犯・警備といった公衆安全、公共交通産業、製造業がいかに5Gを活用していくのか。こうした論点が具体的な事例とともに解説されているので、5Gビジネスのイメージが具体的に掴めるはずだ。

米国や韓国では5Gサービスを2018年より開始して、すでに5G時代に突入している。世界を激変させる可能性を秘めた5Gに関する理解を深め、5Gビジネスのチャンスをいち早く掴むためには必携の一冊である。

ライター画像
木下隆志

著者

亀井 卓也(かめい たくや)
野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 テレコム・メディアグループマネージャー。東京大学大学院工学系研究科卒業後、2005年野村総合研究所入社。現在は情報通信業界における経営管理、事業戦略・技術戦略立案、および中央官庁の制度設計支援に従事。

本書の要点

  • 要点
    1
    5Gの特徴は(1)高速大容量通信、(2)超信頼・低遅延通信、(3)多数同時通信接続にある。
  • 要点
    2
    これまでの通信事業者のビジネスモデルは、消費者や事業者から通信料金を得る「B2C」や「B2B」といった「B2X」型であった。だが5G時代では「B2B2X」が基本型になるだろう。
  • 要点
    3
    B2B2Xモデルでは、通信事業者が5Gに付加価値をつけて、他産業の「センターB事業者」に提供する。そしてセンターB事業者が、自社単独では不可能だった新たなサービスをユーザーに提供する。
  • 要点
    4
    5G時代の主役はセンターB事業者だ。

要約

5Gの現状

3つのビジョン

「5G」とは「5th Generation」、つまり「第5世代移動通信システム」のことである。5Gがもたらす変化を知るためには、5Gの技術的な特徴を理解しなければならない。

移動通信システムが1Gから4Gへと移行する過程において、常に「標準化」という作業がつきまとった。各国の通信業界関係者で国際標準を策定するためには、「5Gとはどういうものを実現するのか」というビジョンをすり合わせる必要があるからだ。

通信に関する国際標準化団体である国際電気通信連合では、標準化に先立って5Gのビジョンを発表している。それが(1)高速大容量通信、(2)超信頼・低遅延通信、(3)多数同時通信接続の3つである。

高速大容量通信
metamorworks/gettyimages

5Gと4Gにおける最も大きな違いは、これまで活用が難しかった高い周波数の電波を制御する技術にある。5Gに割り当てられた電波は「サブ6帯」の3.7GHz帯と4.5GHz帯、そして「ミリ波帯」の28GHz帯だ。これまでの4Gで最も高い周波数は3.5GHz帯であることから、5Gはより高い周波数を利用していることがわかる。

また、基地局のアンテナを集積する「Massive-MIMO」という技術と、基地局のアンテナから一定方向に高い指向性を持つ電波を発信して端末に送る「ビームフォーミング」という技術を組み合わせることで、基地局間の干渉を抑制。短距離しか飛ばない高周波数の電波を遠くまで飛ばせるようになった。

さらに5Gでは、高い周波数で連続した電波帯域の確保が可能だ。すなわちデータを運ぶ電波のカタマリ幅を長くできる(=大きな電波のカタマリとしてデータを送信できる)。

こうした技術を組み合わせることで、5Gは4Gの10倍以上の速さを実現するのだ。

超信頼性・低遅延通信
MF3d/gettyimages

5Gの遅延は1ミリ秒と、4Gの10分の1にまで短縮している。これも多数の技術の組み合わせによるものだが、その中でも直感的でわかりやすい技術革新として「エッジコンピューティング」を紹介する。

現在のスマホで、ネット上のコンテンツをアクセスする場合、以下のような流れをとる。

・スマホ→基地局→通信事業者のネットワーク→インターネット上のサーバー

一方でエッジコンピューティングを活用した場合、次のような短い通信経路で完結する。

・スマホ→基地局→基地局近傍に設置されたサーバー

エッジコンピューティングのような方式を導入できるのは、5Gのネットワークが「C/U分離」という仕組みをとっているからである。

通信には2種類あり、どの端末がどの基地局と接続しているかといった「制御を目的とした通信」と、コンテンツのダウンロードのような「データを伝送することを目的とした通信」に分けられる。現在これら2つの通信は一体となって運用されているが、5Gでは制御系の通信が「C(コントロール)プレーン」、データ伝送系の通信が「U(ユーザー)プレーン」という分離設計になっている。

多数同時通信接続

多数同時接続とは、ひとつの基地局に大量の端末が収容できることを指す。4Gでは、ひとつの基地局の限界は100台程度だった。しかし5Gでは、1万台程度の端末が同時にアクセスしても、しっかり接続できる。これはとりわけ、あらゆる場所にセンサーが埋め込まれ、通信によってデータが収集されるIoT(モノのインターネット)時代を想定したものだ。

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要約公開日 2019.09.30
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