池上彰の教養のススメ

東京工業大学リベラルアーツセンター篇
未読
池上彰の教養のススメ
池上彰の教養のススメ
東京工業大学リベラルアーツセンター篇
著者
未読
池上彰の教養のススメ
著者
出版社
日経BP
出版日
2014年04月03日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」この言葉にドキリとした人はいないだろうか?

理系分野の研究を牽引する東京工業大学(以下東工大)では、2011年に教養を専門に教える「リベラルアーツセンター」が設立された。即効性ある最先端の知識は、陳腐化の波を逃れられない。日本企業が創造できなくなったのは、大学や企業が「実学志向」に傾き、教養を身につけることが軽視されているからではないか? 池上彰氏は警鐘を鳴らす。

本書を紐解くと、「教養=役に立たないもの」というイメージがすぐさま崩れ、教養こそが、日本のビジネスパーソンに必要不可欠な「一生使える知の道具」であることを実感できるだろう。

ここでの「教養」とは単なる知識インプットにとどまらない。歴史や哲学、生物学、数学などの様々な分野の知の体系を学ぶことで、世界・自然・人の理を知り、正解のない世の中で新しいものを創造する源泉になっていくのだ。

池上氏と東工大の教授たちとの対談を通じて、哲学や文化人類学、生物学を切り口に、「いかに教養が社会の課題解決に役立っているか」を臨場感たっぷりに味わえるようになっている。また、MITやハーバードなど、アメリカのトップ大学が徹底的に教養教育を施している現場は目から鱗である。

池上氏が標榜する「新しい教養」の習得の一歩を踏み出す意欲がわいてくるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

池上 彰
ジャーナリスト・東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。地方記者から科学・文化部記者を経て、報道局記者主幹に。1994年4月より11年間「週刊こどもニュース」の「お父さん」役として、子供から大人までが理解できるよう、さまざまなニュースをわかりやすく解説、人気を博す。2005年3月、NHKを退局、以後フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年2月から東京工業大学リベラルアーツセンター教授に就任、理系の大学生に現代史などの「教養」を教える。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間の土台を支え、コミュニケーションやケアの思想を伴った「新しい教養」を身につけることは、正解のない課題の解決策を探るときはもちろん、新しいものを創造するときに、非常に役立つ。
  • 要点
    2
    新しい教養はコミュニケーション、コミットメント、クリエイション、そしてケア(4C)の思想を伴う。
  • 要点
    3
    アメリカの一流大学が教養を重視する理由は、教養が、次々に入れ替わる先端科学の知識とは違い、陳腐化せず確固とした各教科の土台であり続けるからである。

要約

なぜ今、教養が必要なのか?

教養とは何か
MIQUEL_LLONCH/iStock/Thinkstock

池上彰氏が定義する教養とは、次の3つの能力を指す。

①与えられた前提を疑い、正解のない現実社会の問題と答えを探る能力

②新しいルールを創造する能力

③自然環境の変化に対応する能力

教養は、即効性はないものの、発想を豊かにし未知のものを生み出す力になる。スティーブ・ジョブズはカリグラフィー(ペンによる西洋書道)という教養学問に傾倒したからこそ、洗練されたアップルのデザインを生み出すことができた。

日本企業が画期的な商品やサービスを創造できなくなっているのは、すぐに役立つ知識が重用され、教養が軽視されているからではないだろうか? 教養を学ぶことは、歴史や哲学、生物学など様々な知の体系を学ぶことで、人間や世界の理を知ることである。根源的な知恵だからこそ、本質的な課題解決や新しい創造において「実用的」なのである。

教養を学ぶ第一歩

教養は学生だけでなくビジネスパーソンにとっても重要なものである。教養を学ぶための最初のステップは何か? 池上氏は次の3つを勧めている。

①複眼的思考を身につけるために、自分の専門分野から関係のない学問を学ぶこと

②本を手当たり次第に読むこと

③人間の行為の普遍性を知るために、歴史を学ぶこと

教養は、何かの分野に時間をかけて熱中する体験によって培われていくものである。

「新しい教養」の重要性

専門思考の理工系大学である東工大に、教養を専門に教えるリベラルアーツセンターができた理由は何なのか?

1つ目の理由は、自ら枠組みを設定し、現実的な解を探し出す「新しい教養」が理系学生にこそ重要だという認識が広がったためである。

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要約公開日 2014.06.13
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