今を生きるための「哲学的思考」

“想定外の世界”で本質を見抜く11の講義
未読
今を生きるための「哲学的思考」
今を生きるための「哲学的思考」
“想定外の世界”で本質を見抜く11の講義
未読
今を生きるための「哲学的思考」
出版社
日本実業出版社
出版日
2012年10月06日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

「哲学」と聞くと学生時代に少し習った、難解な哲学書にチャレンジしたが途中で諦めた、という方も多いのではないか。本書でもデカルト、カント、ニーチェと言った哲学者は登場するが、彼らの考えを紹介することが本書の主題ではない。タイトルにもある通り、本書では「哲学的に考える」とはどういうことなのか、そして「今を生きる」ためにどう考えるべきなのかを紹介している。

「哲学的に考える」とは、「そもそも、それは何だったのか」を考えることだ。常識、当たり前と思われていることを、まずは疑ってみることから「哲学」は始まる。これまでの常識を疑うことで、新しい常識を見つけることが「哲学的に考える」ことの根本なのだ。

では、「哲学的に考える」ことは「今を生きる」ことに一体何の役に立つのだろうか。現代は、人類がかつて経験したことのない早さでテクノロジーが進化しており、今こうしている瞬間にも時代は刻一刻と変化している。時代の大きな変化という視点を抜きに、「人生、いかに生きるべきか」を考えても、ずれた展望しか見えてこないだろう。では、その大きな変化とは何なのか。

本書では、それを「想定外の世界」と表現している。デジタル時代、ネットワーク時代、そして福島の原発事故を取り上げ、「想定外の世界」である「今」をどう捉えるべきなのかを述べている。

本書を読んでも、我々はこのように生きるべきだ、こう生きれば幸せになれるという答えは見つからないかも知れない。しかし、「今を生きる」とはどういうことなのか、を根本的に見直し、考えてみるよい機会になるのではないだろうか。

著者

黒崎政男
哲学者。東京女子大学教授。1954年仙台市生まれ。東京大学大学院博士課程(哲学)満期修了。専門はカント哲学。人工知能、電子メディア、カオス、生命倫理など現代的諸問題を哲学の角度から解明している。NHKEテレ「サイエンスZERO」(2003‐2012年)やNHKテレビBS2「熱中時間~“忙中”趣味あり~」(2004年‐2010年)にレギュラー出演するなど、TV、新聞、雑誌など幅広いメディアで活躍。著書に『哲学者クロサキの哲学する骨董』(淡交社)、『身体にきく哲学』(NTT出版)、『デジタルを哲学する』(PHP出版)、『哲学者クロサキの写真論』(晶文社)、『カント「純粋理性批判」入門』(講談社)、『哲学者はアンドロイドの夢を見たか』(哲学書房)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    哲学的に考えるとは、ものを深く考える、疑って考えてみる、ものごとの本質を見ようとすることである。この哲学的な考え方で、激変する今をもう一度考えてみるべきだ。
  • 要点
    2
    デジタル化社会は、ネット上にも「私」がいる、知っていることの価値がなくなるというような、従来とは全く異なる社会を作りだした。
  • 要点
    3
    フクシマは、「自分で作ったのになんともならない」「世界をコントロールできない」という新しい世界観を私達にもたらした。「世界との新しい関わり方」を見つけるべき時が来ている。

要約

哲学的に考えるとはどういうことか

Matt Olsen/iStock/Thinkstock
哲学は「そもそも、何なのか」を考える

哲学はヨーロッパ語系でPhilosophy。これは、Philo(愛する)とSophy(知)が合わせてできた言葉で、「知を愛する学」という意味だ。哲学者は、ものごとをよく知っている人ではなく、知らないということを自覚し、本当を知ることがいかに難しいかを知っている人だ。そして、哲学は、読み物ではなくて、哲学「する」こと、つまりものを深く考える、疑ってみる、物事の本質を見ようとする動きだと言える。

本書で紹介する哲学的思考は、常識や当然と思われていることを「そもそも、それは何だったのか」と疑うことから始まる。通常の学問は、土台を作りその上に体系を積み上げていくが、哲学はその土台を疑う。世の中の動きが安定していて、土台を疑う必要すらない時代であれば、哲学は余計かもしれない。しかし、科学とは、宗教とは、人間とは、と改めて問い直さなければならない今のような時代には、その根本をつかむために哲学的思考を使うべきなのだ。

哲学は「今に使えるのか」
violetkaipa/iStock/Thinkstock

哲学的思考は、今の時代にどのように使えるのか。本書では、今という時代を理解するために、テクノロジーを基軸にその大きな変化の根本を捉えようとしている。

近年のテクノロジーの進化が、この世の中を大きく変えてきたことは明白だ。コンピュータ、携帯電話、インターネットの出現により、これまで人類がやってきたこととは、まったく別次元のことが始まったと言える。

電話を例に人間関係の変化を考えると、携帯電話が登場する前は、電話は一家に一台で家の中心にあり、家族という単位で管理していた。それが、電話の子機の登場で自分の部屋でも電話をとれるようになり、携帯電話の出現により全く家族を通さずに個人と個人のコミュニケーションができるようになった。これは、テクノロジーが家族と個人の関係性を変えた例だ。

また、デジタル・ネットワークの成立による影響を考えると、意見を言う、考えを公表するという事の変化が挙げられる。以前は、世の中に公表される意見は新聞やオピニオンリーダーなどごく少数の人の考えを、一般の多くの人が受け取るという形であった。しかし、デジタル・ネットワークの成立によってすべての読み手が書き手になった。これもテクノロジーが従来の情報発信の仕組みを根本から変えた例だろう。

ここ50年ほどのテクノロジーの進化により、人間関係、考えの公表など、これまで当たり前と思っていたことが、根本的に変わってきた。現代とは何かを考えるために、この変化で起こっていることをきちんと捉えるためにも哲学的思考が必要なのだ。

【必読ポイント!】デジタル化社会は私達をどう変えるのか

新しい「私」

哲学的思考を現代に当てはめて実際に使ってみるために、デジタル・ネットワーク時代をテーマにその変化の根本を考えてみたい。デジタル・ネットワーク時代は、すべての人やモノがネットワークでつながっている社会と言える。すべてがつながった社会では、人と人とのコミュニケーションはどうなるのだろうか。

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要約公開日 2014.04.22
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