分断を生むエジソン

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分断を生むエジソン
出版社
出版日
2019年11月28日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、経営に失敗した女性起業家アンナが経営コンサルタント黒岩に出会い、再生するまでの一年を追った物語である。前半では、優秀な経営者がもつべき考え方とともに、世界は「4つの国」で成り立っているという壮大な理論が展開される。4つの国の住人たちが担う役割と、陥りがちな罠は何か。その罠に陥らないようにするために、私たちがもつべき「影響力の地図」とは何なのか。本書は、アンナの成長を追いながら、こうしたことが明らかになり、偉大なリーダー像が腑に落ちるような仕立てになっている。

後半では、世界のサービスを「人々の苦痛を取り除くペイン(Pain)型」と「人々に楽しみと価値を与えるゲイン(Gain)型」に分けていく。これまでは、ペイン型のサービスが幅を利かせてきた「支配力の時代」だった。だが、これからは、個々人の価値を大きくしてくれるゲイン型のサービスが力を増す「影響力の時代」へと移り変わるという。

こうした変化を見据えて、私たちはどのようなマインドで生きるべきか。また、企業はどのように人々を幸福にすべきか。本書には、経営者に限らず、あらゆる立場のビジネスパーソンが今後に活かせるヒントがたくさん詰まっている。

何より、アンナの再生のストーリーには胸を打つものがある。その軌跡から、読者は自分なりの物語を見出すことができるだろう。ビジネス書の枠を超えて、人間と社会の本質に迫った『分断を生むエジソン』。至福の読書体験を味わってみてほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

北野 唯我(きたの ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者、子会社の代表取締役を兼務。著書に『転職の思考法』『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』(ダイヤモンド社)『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)。

本書の要点

  • 要点
    1
    優れた経営者は、起業家・投資家・戦略家という3つの側面をもつべきである。
  • 要点
    2
    ビジネスパーソンは、ビジネスのおける主観と客観のあり方を意識し、役割の異なる「4つの国」と、その国の人たちが陥りやすい4つの罠を認識する必要がある。今後は、主観と客観を超えて4つの国を繋ぐ偉大なリーダーが求められる。
  • 要点
    3
    サービスには、人の苦痛を取り除くペイン型と、人に楽しみと価値を与えるゲイン型がある。ペイン型は支配と結びつき、ゲイン型は影響力と結びつく。
  • 要点
    4
    これからは支配力から影響力の時代へと変化を遂げる。そこでは、ペイン型のサービスより、ゲイン型のサービスが大きな価値をもつようになる。

要約

影響力の地図

本書のあらすじ

本書の主人公は、前著『天才を殺す凡人』に登場した上納アンナ(以下、アンナ)。天才起業家として活躍していた彼女が、自分の会社を追われ、冴えない表情で街を歩くシーンから、ストーリーがはじまる。自分が愛した仕事から不要だという烙印を押され、岐路に立たされたアンナ。意味があると信じてきたものは全て幻想だったのだろうか。

アンナは、かつて無名だったアンナを見出し、初めて投資をした白石徹のもとを訪れる。白石は「君が会うべき人がいる」と、経営コンサルタントの黒岩仁を紹介する。アンナが愛ある革命家、偉大なリーダーへと成長・成熟するために何が必要なのか。黒岩との会話のなかで、アンナは復活を遂げるために大事なものを学んでいく。本要約では、そのポイントを抽出して紹介する。

優れた経営者は、心の中に3つの人間を飼う
Julia_Sudnitskaya/gettyimages

社会のビジネスフィールドには、3種類のメインプレーヤーが存在する。それは起業家(発明家)、投資家、そして戦略家である。この3つは職業としての側面もあるが、根本的な人間の特性ともとらえられる。

起業家は新たな価値を信じて、ゼロから何かを生み出す存在である。その役割は、未来から現在へエネルギーをもってくることだ。では投資家や戦略家の役割はどのようなものか。戦略家は目標に行きつくまでの知恵とリーダーシップを提供する。これに対し、投資家は知恵とリーダーシップの代わりに金を出す。この両者はキャリアの途中で「時を待つ」ことを覚えていく。

優れた経営者は、未来へ向かう起業家としての側面だけではなく、膨大な時間を待つことができる戦略家と投資家の側面も求められるのだ。

主観と客観

旅に出るとき、私たちは地図を頼りにする。地図の本質とは広さと距離であり、目的地に到着するまでどれくらいの時間がかかり、その場所がどれほど広いかを伝えてくれるものだ。これは「物理的な地図」の話だが、「認識の地図」についてはどうだろうか。

地図とは本来、私たちの世界には存在しない絵にすぎない。私たちは普段、「主観」でのみ物事を認識し、世界を切り取っている。一方で、地図を見ることは第三者の視点から世界を見つめること、つまり「客観」の立場に立つことになる。

偉大なリーダーに求められるもの

現代は、人類史上もっとも主観と客観が離れた時代である。膨大な情報が行き交う中で、人は見たい世界だけを選択できるようになった。その一方で、世界はどんどん客観的な地図を整え、完璧な地図をつくれるようになっている。

人にとって重要なのは客観よりも主観だ。しかし、偉大なリーダーは、主観や客観を超えた「認識の世界を繋ぐもの」でなければならない。

テクノロジーや社会制度は、中世や近世に比べればはるかによくなっている。にもかかわらず、主観と客観が離れすぎているために、断絶を感じてしまう。それゆえ現代社会は、格差が広がり、分断されているように見える。その断絶を繋ぐことが、偉大なリーダーに求められる役割なのだ。

東と西と中部と南部
『分断を生むエジソン』p56 より「影響力の地図」

認識の地図の中で、世界は「4つの国」に分けられる。まずは技術と変化の「西の国」。アメリカでいうシリコンバレーのような革新派の集まりで、最先端のものを生み出していく。

その「西の国」と対立することが多いのは、「東の国」だ。これはニューヨークのような金融街であり、保守的で、経済や組織に重点を置く。

その間で、中立的な立場をとるのが「中部」だ。この国は法律をつくる立場にあり、国家や公益を重視し、新しいものと古いものとの間で全体最適を考える。アメリカではワシントンD.Cに近い。

最後に挙げるのは「南部」だ。この国は共感できるものを好み、生活や家族を大切にする。彼らの価値基準は生活の満足・不満足にある。

4つの国のバランス

この4つの国には最適なバランスがある。それを理解しながら4者を繋ぐことができる存在を、「偉大なリーダー」と呼ぶ。もし世界が3000万人超えの人口であれば、各国の人口バランスはおおよそ次のようになる。西の国に30万人、中部に60万人、東の国に300万人、南部に3000万人だ。

この4つの国の比喩から、2つのことを学ぶことができる。1つは「自分の世界が絶対ではないこと」。もう1つは「4つの国の違いは、役割の違いでしかないこと」である。それを認識していなければ、4つの国の国民はたちまち「4つの大病」にかかってしまうだろう。

4人の病める王と「繋ぐもの」たち

西の病:エジソンの罠

4つの病とは何なのか。まず、西の国の人たちがかかりやすい病は、エジソンの罠という。病人は「分断を生むエジソン」と呼ばれる。

発明家は、好奇心にすべてを捧げ、非常に速い速度で物事を進める。それにより、世界に大きな分断を生んでしまうことがあるのだ。

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要約公開日 2019.12.24
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