会社を潰すな!の表紙

会社を潰すな!

崖っぷち社員たちの企業再生ドラマ


本書の要点

  • 銀行員だった主人公は、「破綻懸念先」に区分されているクイーンズブックスへの出向を命じられた。彼がなすべき役割は、リストラや店舗閉鎖を伴う徹底した債権回収か経営再建かという、2つに1つであった。

  • 着任した主人公は、決算書を経理や税理士に任せきりにしている社長に、財務諸表を教えることからはじめた。

  • 主人公は、店舗のひとつをコンビニと共同出店にすることを提案した。売上の低下を懸念する社長に猛反対されたが、現状を打破するために必要だと説得し、一歩を踏み出すこととなった。

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明るいとは言えない未来

破綻懸念先への出向

smolaw11/gettyimages

3月のある日、鏑木健一(以下、鏑木)が出勤すると、すぐに上司の片山部長に呼ばれた。朝一番の呼び出しがいい話だったためしがない。鏑木が最後に支店長を勤めた金沢銀行桜町支店は今年の1月に成績不振で閉店していた。出向の辞令を待つ身であった鏑木には、話の内容の察しがついていたのだ。予想通り、言い渡された辞令は、専務としてクイーンズブックスという書店に出向するという内容だった。創業者が病気で急逝し、その妻が継いだ、5期連続赤字の書店である。片山部長は、鏑木が金沢銀行の業績改善に貢献する方法として、2つの選択肢を提示した。まず、クイーンズブックスへの過剰貸付の回収だ。店舗の閉鎖、人員の大幅削減、資産の処分などを行い、貸付金を返済させる。もうひとつは、経営の抜本的な改革だ。金沢銀行では、クイーンズブックスを貸付先として「破綻懸念先」で区分している。貸付金は「貸し倒れ引当金」として、既に経費として計上されている。売上も収益も伸ばせるようになれば、「破綻懸念先」から「正常先」に区分が変わり、「貸し倒れ引当金」の経費計上が不要になる。もちろん片山部長は、「強引に一気に行う資産の処分の方が、いろいろあっても簡単だよ」と付け加えるのを忘れなかった。クイーンズブックスの決算書は、目を覆うばかりの内容だった。経費がコントロールされていない上に、借入金が多く、債務超過寸前だ。売上増のための新たな取り組みもない。「破綻懸念先」に区分されて当然だった。しかも出版不況の今、書店の未来が明るいとは言い難い。「私はこの本屋と、どう向き合ってゆくことになるのだろうか……?」。鏑木の頭によぎるのは、不安ばかりである。

気まずい歓迎懇親会

初出勤の鏑木を、黒木社長が出迎えた。経理部の坂出部長や事務員たちは、歓迎どころか、明らかに警戒の色を示している。初出勤の夜、鏑木の歓迎懇親会が開かれた。鏑木はそこに集まった全6店舗の店長たちに、『社会人の基礎知識』という小冊子を配布した。企業会計やマーケティングに関する基本知識をまとめた、オリジナルのものだ。「一つずつ、一緒に勉強していきましょう。この知識は、経営再建には必要な知識だと思っています」と語りかける鏑木専務に、本店の西田店長は「書類を読んで売上がよくなるんだったら、みんなとっくにやってますよ」「私たちには書類でお勉強している暇なんかないんですから!」と猛反発する。鏑木も負けじと言い返し、歓迎会の場は凍り付いた。自分は、経営陣どころか、店長たちにも歓迎されていない。大リストラで一気に債権回収したほうが楽なのかもしれない――そんな思いが、鏑木の頭をよぎるのだった。

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【必読ポイント!】 鏑木のレクチャー

車の運転と財務諸表

MangoStar_Studio/gettyimages

鏑木は黒木社長に、決算書に基づいた会社の現状の説明を求めた。しかし黒木社長は、悪びれることなく、決算書のことは分からない、坂出部長と税理士に任せていると答えた。そんな黒木社長に対し、鏑木は「決算書が分からなくて、会社の経営をしてはいけません」と説くのだった。

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要約公開日 2019.12.23
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