経営参謀としての士業戦略の表紙

経営参謀としての士業戦略

AI時代に求められる仕事


本書の要点

  • 技術進歩によって単純作業が自動化されていくなかで、士業は顧客との関わり方を「作業者」から「参謀」へと変化させる必要がある。

  • 「自動化されやすい業務」については、効率化と低コスト化を行い、相場が下がっても利益が出せる体制を構築するべきである。

  • 「自動化されやすい業務」の効率化によって生まれた時間を使い、「自動化されにくい業務」を拡充させるべきだ。そして参謀、経営参謀としての付加価値を高め、高単価で顧客を獲得するのである。

  • 顧客が抱えている課題を引き出す上で重要なスキルは、「質問力」と「共感力」だ。

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これからの士業に求められること

日本のビジネスを左右する潮流

時代の流れを先読みして、人より先に動いてビジネスモデルを構築し、それを一気に横展開してシュアを確保する――ビジネスの成功者はそのような動きを取るものだ。ここで押さえるべきポイントは、「時代の流れに合ったビジネス展開をするべき」ということである。では現代で先読みすべき「時代の流れ」とは何であろうか。業種業態を問わずに大きな影響を与える時代の流れとして、「少子高齢化」「グローバル化」「機械化」の3つが挙げられる。相続関連の市場拡大が見込まれる「少子高齢化」と、国際業務の機会が増える「グローバル化」の潮流は、士業にとってビジネスチャンスだ。一方で「機械化」という潮流は、士業にとって脅威となる。

機械が人間の仕事を奪う

Good_Stock/gettyimages

近年、機械化という文脈で注目を集めているのがAI(人工知能)だ。「AIが人間の仕事を奪う」「技術進歩によって機械が人間の仕事を奪う」といったニュースを耳にすることも多い。この「機械が人間の仕事を奪う」という言葉が意味するのは、「技術進歩により業務の生産性が向上して、1人の人間がこなせる仕事量が増え、仕事をこなすのに必要な人間の数が減る」ということである。技術進歩によって従業者が仕事を失うことを「技術的失業」と呼ぶ。ここでは「技術的失業」をさらに「直接的技術的失業」と「間接的技術的失業」の2つに分けて、士業に与える影響を分析していく。

2つの技術的失業

まず「直接的技術的失業」とは、自動改札や製造ロボットのように、新たな技術の登場で人間が不要になることを指す。近年、AI関連分野で急速に進歩しているのが、学習機能によるパターン認識や「RPA」(Robotic Process Automation)による作業プロセスの自動化技術である。これにより影響を受ける代表的な業務が、会計の仕訳入力だ。AIなら過去の会計仕訳の内容を学習し、摘要や金額から内容を推測して自動作成できる。その他にも、パソコン上の単純作業は自動化が進んでいくと思われる。一方で「間接的技術的失業」とは、技術革新により業務の低価格が進むことで、利益が出なくなり、ビジネスモデルが成り立たなくなることを意味する。会計事務所であれば、かつては手書きで会計帳簿を作り、電卓を使って計算が合うかを確認し、合わなければその原因を調べて訂正していた。決算書ももちろん手書きだ。しかしいまでは会計システムに入力するだけで、会計帳簿も決算書も自動的に作成できるようになった。このように技術革新で低コスト化に成功した企業は、売価を下げても利益が出る。そのため売価を下げることでより多くの顧客を獲得し、業界の相場を押し下げていく。

人間にしかできない仕事とは

Feodora Chiosea/gettyimages

どういった仕事が「人間の仕事」として残るのであろうか。

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要約公開日 2019.12.26
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