孫正義 事業家の精神

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孫正義 事業家の精神
出版社
出版日
2019年12月23日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「まだまだ事業家として何も成し得ていませんが、志はあります」。2018年8月11日、孫正義氏61歳の誕生日のメッセージだ。

ソフトバンクグループの創業者兼代表の孫正義氏。傘下にはヤフー、アリババがあり、2019年にはZOZOを4000億円で手中に収めた。フォーブス「日本の長者番付」では、2011年より連続で1位か2位。それでも「何も成し得ていない」とはどういうことか?

しかし、こうした発想こそが彼の魅力の1つだ。「一番でないと嫌」と言い切る正直さ。なりふり構わずに前進する泥臭さ。ダメなときには格好つけずに開き直る、ある種のプライドのなさ。そんな人間らしさに溢れた稀代の事業家・孫氏に憧れる若者も多いことだろう。

本書は、50 万部を突破した『志高く 孫正義正伝』を著した、作家・井上篤夫氏が、起業家、および起業家を志す人々のために書き下ろした「起業家のバイブル」と呼ぶべき一冊である。 孫氏の生い立ちから現在まで、起業家や新しい挑戦をする人たちに響くエピソードを中心として、英語訳とともに全7章36項にまとめられている。序章では、起業家を「馬」「ユニコーン」にたとえて、独自の成功論を展開する。また、彼の小さい頃のエピソードも興味深い。孫氏の卓越した創造力は、親の育て方が大いに影響していることがわかる。子育て中の人が読んでも面白い内容だ。

これから自分の道をどのように切り開いていけばいいのか。孫氏の熱い言葉に耳を傾けていただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

井上篤夫(いのうえ あつお)
作家。1986年、ビル・ゲイツ、テッド・ターナーを単独取材。1987年孫正義を初インタビュー、以来30年余にわたって密着取材を続けている。『志高く 孫正義正伝 新版』(実業之日本社文庫)『とことん 孫正義物語』(フレーベル館)『ポリティカル・セックスアピール 米大統領とハリウッド』(新潮新書)『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』(集英社新書)など、著書多数。訳書に『今日という日は贈りもの』(角川文庫)『マリリン・モンロー 魂のかけら』(青幻舎)『ミシェル・オバマ 愛が生んだ奇跡』(アートデイズ)など。鋭い観察眼に定評がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業家には狂ったほどの情熱が必要だ。起業家とは1ビリオン(10億ドル)を生み出す者を指し、それ未満は起業家もどき。さらに30ビリオン、100ビリオンと企業価値を上げることができれば、事業家となる。
  • 要点
    2
    人真似をしても絶対に勝つことはできない。失敗しても試行錯誤を重ねれば、必ずオリジナルな結果が出る。
  • 要点
    3
    経営者は従業員の300倍考えなければならない。あらゆる場面を想定して徹底的に準備をし、実践し続けることが大切だ。

要約

【必読ポイント!】 100ビリオンを生み出すユニコーン

馬とユニコーン
Warpaintcobra/gettyimages

起業家はクレイジーでなければならない。これが孫正義氏(以下、孫)の持論である。今まで存在しなかったものを生み出すことが、起業家のやることだ。だから、少し一般の感覚からずれた人が向いている。常識を覆すような発想は、むちゃくちゃでないと生まれない。

しかし、「ユニコーンレベル」まで成長させることができるのは一握り。同じ狂気を持った起業家の中でも、突破力を持っている人たちだ。彼らは、1ビリオン(10億ドル)を超える企業価値まで引き上げることができる。彼らこそがユニコーン、いわゆる立派な起業家である。ジャンプするだけでなく、空を飛び続けること。この翼の有無が、馬とユニコーンを分けるのだ。

1ビリオン未満の人は、起業家もどきである。気持ちはあっても実力が伴っていない。チャレンジしたが鳴かず飛ばずならば、ユニコーンレベル未満。しょせん、ありきたりな馬なのだ。

起業家が、企業価値をさらに30ビリオン、100ビリオンと上げていくと事業家になる。スティーブ・ジョブズは、クレイジー過ぎて一度アップルから弾き出された。しかし多くの苦悩を経て復帰し、瀕死のアップルを世界一の会社にした。起業家が事業家に生まれ変わった瞬間といえる。

AIは残り93%の世の中を変える

AIにより、全く新しい競争のステージが生まれようとしている。これまでのインターネット時代は、大きく分けて2つの産業を革新してきた。1つは広告産業。インターネットの新しいメディアが紙の新聞や雑誌、テレビといった既存のメディアを駆逐していった。もう1つは小売産業。アマゾン、アリババなどのECサイトが小売の世界を変えた。しかしこの2つの産業は、米国GDPのたった7%を占めるに過ぎない。

AIは、残りの93%を含めた全ての世界を変えるだろう。AIを活用して新しい薬を作る、フィンテックの世界を生み出すというように、あらゆる産業を変革していく。これからの時代、AI技術に対する知見だけではなく、それぞれの産業を深く理解することが大切だ。AIを道具として動かせるだけのリアルな知識やマネジメント能力が欠かせない。つまり、これまで以上に専門性が要求されるということだ。

インターネットの時代も、最初はPC言語のソフトなど、「道具」を売る人たちがもてはやされた。しかし今では、そんな会社はほとんど残っていない。最後に王者になったのは、インターネットを道具として、永続的なサービスを提供しているアマゾンなどの企業だ。同じようにAIを道具として活用すれば、需要はたくさん見込める。潜在需要が10兆円、100兆円あるような産業をAIで変革する会社が、今後は主役になっていくだろう。

もっと狂え
Kateryna Mashkevych/gettyimages

孫は、事業がサステイナブルであるためには、市場を選ぶことが大事だという。くわえて、行動し続けるしつこさも必要となる。ぱっとアイデアを思いつく人はいっぱいいる。最初に発想することは重要なことだ。だが、最初にテレビをつくった会社が今も一番かといえば、そうではない。

事業を続けていく道中、泥臭い問題が山ほど起こる。晴れの日もあれば、雨の日も嵐の日もある。そんな中でも諦めず、へこたれずにあらゆる困難を乗り越えていかなければならない。そんな苦難の道を歩み続ける原動力は、狂ったほどの情熱、そして強烈な思い入れだ。

常識で考えていたら嵐のときには飛んではいけない。だからみんな安全策をとって休んでしまう。しかし、そこにチャンスがある。馬100頭くらいが競争して走っている中で、ひとりだけ飛ぼうと思ったら、みんなが休んでいるときに走らなければならない。狂ったように走り続けていると、途中から翼が生えてくる。狂ったほどやらないで事を成せるほど、世の中は甘くない。嵐の中でも駆け抜けて駆け抜けて、あの崖を飛び越えようと飛ぶ。だが崖に落ちて、また走って飛ぶ。これをくり返すうちに翼が生えてくる。思い入れと狂ったほどの努力なくして、翼は生えない。

天才たれ

人に倣うな

孫家の家訓に「人に倣うな」というものがある。孫の15歳年下の弟、孫泰蔵氏(以下、泰蔵)がまだ小学生だった頃のことだ。泰蔵が帰宅すると、父・孫三憲氏が「おかえり。今日は何を習った」と声をかけた。泰蔵が分数の割り算を習ったと答えると、驚く返答が返ってきた。「先生の言うこと、聞くなよ」。父は「学校の先生、嘘言うぞ。信じるな」と畳みかけたというのだ。

後に泰蔵少年も人の親となり、ようやく父の真意が理解できた。父が伝えたかったのは、自分の頭で考えること、クリティカル・シンキングの大切さである。

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要約公開日 2020.04.14
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