世界史の針が巻き戻るとき
「新しい実在論」は世界をどう見ているか

未 読
世界史の針が巻き戻るとき
ジャンル
著者
大野和基(訳) マルクス・ガブリエル
出版社
定価
1,056円(税込)
出版日
2020年02月28日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
3.5
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世界史の針が巻き戻るとき
「新しい実在論」は世界をどう見ているか
著者
大野和基(訳) マルクス・ガブリエル
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定価
1,056円(税込)
出版日
2020年02月28日
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3.5
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応用性
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レビュー

NHK Eテレ『欲望の時代の哲学』に出演したことでも知られる、新進気鋭のドイツ人哲学者マルクス・ガブリエル氏。本書を読んで驚かされたのが、”資本主義社会”の第一線にいるビジネスパーソンからは、絶対に出てこないような視点の数々だ。資本主義社会を一歩引いてところから俯瞰しており、「そんな考え方アリ?!」とハッとさせられることも多い。

私たちの「当たり前」に対して、ガブリエル氏はどんどん異議を投げかける。もし彼が身近にいたら、ひょっとすると少し「偏屈だな」と感じてしまうかもしれないぐらいに。とはいえ非常に興味深いのは間違いない。たとえば、トランプ米国大統領に対する見解。多くの知識人がトランプ氏を「暴君」と批判するなか、ガブリエル氏は異なる立場を取る。曰く、トランプ大統領は新しいルールを確立し、アメリカのような民主国家を守ることで、自分なりに民主主義を守ろうとしているのだという。

強調したいのは、ガブリエル氏の主張はけっして「議論のための議論」ではないということだ。現実世界を捉えるうえで、確かな視点を与えてくれる。ガブリエル氏の口から出てくる言葉の数々は、一見すると突飛なもののように思えるかもしれないが、そこには「たしかにそうかも」と納得できるだけの論拠がある。凝り固まってしまって思考をほぐし、私たちの「当たり前」を再考するうえでは、うってつけの本だろう。

ライター画像
若旦那

著者

マルクス・ガブリエル (Markus Gabriel)
1980年生まれ。史上最年少の29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の正教授に抜擢される。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新しい実在論」を提唱して世界的に 注目される。また、著書『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)は世界中でベストセラーとなった。NHK・Eテレ『欲望の時代の哲学』等にも出演。
他著書に『「私」は脳ではない』(講談社選書メチエ)、『新実存主義』(岩波新書)、『神話・狂気・哄笑』(S・ジジェクとの共著、堀 之 内 出版)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    移民問題や財政問題をきっかけに、ヨーロッパで「国民国家の復活」が起きている。時代の針が巻き戻り始めた世界で、著者の提唱する「新しい実在論」(New Realism)は新しい開放宣言となりうる。
  • 要点
    2
    「新しい実在論」とは、2つのテーゼが組み合わさったものだ。1つは「あらゆる物事を包摂するような単一の現実は存在しない」というもの、もう1つは「私たちは現実をそのまま知ることができる」という考え方である。
  • 要点
    3
    私たちは「価値の危機」、「資本主義の危機」、「民主主義の危機」、「テクノロジーの危機」に直面しており、それらの根底には「表象の危機」がある。

要約

【必読ポイント!】 なぜいま、新しい実在論なのか

「新しい解放宣言」
francescoch/gettyimages

移民問題や財政問題をきっかけに、ヨーロッパで「国民国家の復活」が起きている。フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、ハンガリーなど、どの国も古い型のモデルに戻ろうとしている。

時代の針が巻き戻り始めた世界で、私たちは特に、ソーシャル・メディアから自分自身を解放する必要がある。ソーシャル・メディアは純然たる「擬態」だ。ソーシャル・メディアはまるで社会であるかのように見えるかもしれない。だがそれはリアルではない。インターネットには法廷も権力分立もない。完全に非民主的だ。インターネットこそ民主主義の土台を揺るがしている。民主主義大国でポピュリズムのような非民主的な意思決定が増えているのは、リアルな世界がインターネットに近くなったからだ。

その結果、いま私たちは5つの危機を迎えている。すなわち「価値の危機」、「資本主義の危機」、「民主主義の危機」、「テクノロジーの危機」、そしてそれらの根底にある「表象の危機」である。これらの現状を理解するためには、まず著者が提唱する「新しい実在論」(New Realism)について説明しなければならない。

新しい実在論とは何か

「新しい実在論」とは、2つのテーゼを組み合わせたものだ。

1つめのテーゼは、「あらゆる物事を包摂するような単一の現実は存在しない」というものである。言い換えるならば、「現実は1つではなく、数多く存在する」。2つめのテーゼは「私たちは現実をそのまま知ることができる」というもので、なぜなら私たちはその現実の一部だからである。私たちが自分の精神状態を知れるのは、自分がその精神状態そのものだからであり、たとえば数学について勉強すれば、数学について知ることができる。現実は「すべて知ることができるもの」と想定するのがこの実在論だ。

「新しい実在論」が、なぜいま注目を集めているのか。それは21世紀の哲学における新しい発見だからであり、「新しい実在論」はデジタル革命の結果として出てきた知見だからである。デジタル化によって、私たちの存在するもの・しないものに対する認識は大きく変わった。人間はこの現実に対応すべく、絶えず新たな精神的現実をつくりだしてきた。「新しい実在論」は現状に対応するため、ポストモダン以降ではじめてできた新しい哲学である。

さらに「新しい実在論」は、リアルとバーチャルの境界線を明確にした。このデジタル時代では、ソーシャルネットワークやポピュリスト政治が横行し、現実と非現実との境界線がぼやけている。この境界線を再度明確に引くのが、「新しい実在論」である。

「意味の場」とは
francisblack/gettyimages

「新しい実在論」において重要なのが「意味の場」という概念だ。「意味の場」とは、特定の解釈をする際、対象をいかにアレンジメント(配列)するかを示す。

たとえばテーブルに、青と白と赤の3つの立方体があるとする。そこにやってきた人に「テーブルにいくつ物体があるか」と尋ねれば、「3つ」と答えるだろう。しかしもし理論物理学者のヴェルナー・ハイゼンベルクであれば、原子の数を数えてその数を言うはずだ。あるいはフランスの大統領なら、「1つ」と言うかもしれない。3つの色を1つにすれば、フランスの国旗になるからだ。もちろん「立方体はいくつあるか」と問えば、答えは「3つ」に統一される。

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