カラスの教科書

未 読
カラスの教科書
ジャンル
著者
松原始
出版社
雷鳥社
定価
1,760円(税込)
出版日
2012年12月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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カラスの教科書
カラスの教科書
著者
松原始
未 読
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ジャンル
出版社
雷鳥社
定価
1,760円(税込)
出版日
2012年12月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
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レビュー

我々の生活と切っても切りはなせないアイツ。ゴミを荒らし、漆黒の羽を大きく掲げ、今にも襲ってきそうなアイツ。そう、カラスだ。マイナスのイメージを持っている方も少なくないだろう。「え?カラスはお嫌いですか?」そう問いかける著者はいう。「冗談じゃない、あれほど面白くてカワイイ鳥はいないのだ。こんな興味深い鳥を見ないのは人生の楽しみを半分くらい損している」と。

本書は、カラスを愛して止まないカラスの動物行動学者、松原始氏がカラスのことを丸裸にした一冊だ。ページ数は多く見えるかもしれないが、軽やかに進む文章運びで、気がつくとなんだかとてもカラスが可愛く思えてくる。おっと、もう著者の思惑にはまってしまったようだ。

カラスの特徴は特殊化していないことだと著者はいう。くちばしが多少大きいことを除けば、そのシルエットは基本的な鳥の形をしていて特に特徴もなく、シギほどの長いくちばしもなく、猛禽のような鋭い爪もない。いわば「これ一本でだいたい間に合う」万能包丁のようなものだ。逆にいえば、なんでもできるということでもある。あえて、得意分野を作らず、どんな場所でも、何を餌とする場合でも、そこそこの成功を収める「60点主義」を活用するカラス流の渡世術は、もしかしたら我々の生活においても有用な方策の一つかもしれない。

著者

松原 始
1969年奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。京都大学理学博士。専門は動物行動学。2007年より東京大学総合研究博物館勤務。研究テーマはカラスの行動と進化。カラスに燃え、カラスに萌えるカラス馬鹿一代。カラスに関しては仕事もオフも関係ない。趣味を何か一つだけと聞かれれば敢えて言おう、カラスであると!

本書の要点

  • 要点
    1
    身近な生き物でありながら、マイナスなイメージを持たれているカラス。実はカラスにはさまざまな種類があり、世界中に分布している。
  • 要点
    2
    カラスは戦闘能力の低さゆえ、獲物を仕留める際に手間取ったり、見るからに弱い相手しか襲えないことから、世間からは残虐というレッテルを貼られてしまうことが多い。その一方で、カラスの掃除屋としての役割が、朝の繁華街で活躍することもある。
  • 要点
    3
    カラスの食生活や採食方法についてフォーカスすると、カラスがどのようにして、どの場所でもある一定の成功を収められるジェネラリストになり得たのか読み解くことができる。

要約

【必読ポイント!】カラス?それは何ガラス?

ueapun/iStock/Thinkstock
カラスはいろいろいる

カラスという鳥はいない。そのため、カラス研究者の前で不用意に「あ、カラス!」など言おうものなら、「何ガラス?ブト?ボソ?」と聞き返されてしまうので注意しよう。カラス科カラス属に含まれる、いわゆるカラスっぽいカラスは40種もいるという。さらに、カラス属には含まれない、カラス科は70種余りおり、彼らはニュージーランドと南極を除く世界中に分布している。カラス類の故郷はオセアニアと考えられているが、著者いわく、ニュージーランドにカラスが入らなかった理由は説明できないそうだ。

日本で記録されているカラス属は7種いるが、その中でも我々が最も普通に目にすることができるのはハシブトガラスとハシボソガラスだ。先に「ブト?ボソ?」と聞かれると書いたのはこのためである。ハシブトガラスは都市部でよく見かけられ、ハシボソガラスは河川・田園地帯に生息している。

カラスを見たら試してみよう。ハシとブトの見分け方
KoCsAti/iStock/Thinkstock

ハシブトガラスとハシボソガラスは名前も似ているが、外見もよく似ている。「大きくて真っ黒な鳥」であることは間違いないのだが、よく観察してみると判別することができる。姿、形でいうと、名前のとおりくちばしの形で判別が可能だ。くちばしが長く、太くアーチ状になっているのがハシブトガラス、それに対してハシボソガラスのくちばしは曲ってはおらず、ストレートな形をしている。

また、鳴き声でも区別することができる。ハシブトガラスはいわゆるカラスの声で「カア、カア」と鳴く。一方、ハシボソガラスは「ガー、ゴアー」としゃがれた声で鳴くらしい。著者の言葉を借りれば、『ただし、ハシブトガラスの音声は非常に多彩で、怒ったときなど「ガラララ・・・」とハスキーな声もだすこともあるから要注意だ。ハシボソガラスが「カア」と鳴くことはない』そうだ。読者の方もぜひ「注意」して観察していただきたい。

著者の長年の経験による、図鑑にはあまり載っていない私的な見分け方も紹介されている。たとえば、歩き方だ。ハシブトガラスは、地上に降りた時にピョンピョン飛び跳ねるか、「よいしょ、よいしょ」と大義そうに歩くのに対し、ハシボソガラスは脚を延ばしてスタスタ歩き、急ぐ時は早足になる。

東京都心部においては、1960年代から70年代にかけてハシブトガラスが優勢となっているが、その他の日本国内の都市では2種が混じって生息しているのが普通らしい。世界的にみるとハシブトガラスは東南アジア方面の鳥であり、日本以外ではそれほど数も多くなく、山奥や森林の中で暮らしている鳥のため、本来、街なかでは見かけない鳥だという。そのため、日本以外ではあまり研究されていないというのが現状だ。実際、著者の共同研究者は台湾の研究者に「東京でカラスを観察するって、あれは山の鳥じゃないんですか」と言われたことがあるという。

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