チューリングの大聖堂
コンピュータの創造とデジタル世界の到来

未 読
チューリングの大聖堂
ジャンル
著者
ジョージ・ダイソン 吉田三知世(訳)
出版社
早川書房
定価
3,780円
出版日
2013年02月22日
評点(5点満点)
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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レビュー

本書を一言で説明するならば、デジタル世界の「創世記」である。20世紀中ごろのコンピュータ開発の壮大なプロジェクトや、様々な文献、写真資料、インタビュー取材をもとに描かれた18章に及ぶ大作だ。著者は、2003年のTEDでコンピュータ誕生の物語についてスピーチを行った科学史家、ジョージ・ダイソン氏である。

 今やビジネスマンのみならず、ほぼすべての人々の生活に浸透している検索エンジンやソーシャル・ネットワークといったデジタル世界の産物の基礎となっているコンピュータ。自分たちの意思で使っていると信じているiPhoneやパソコン、手首などにはめて健康状態を記録できるウェアラブルデバイスなど、コンピュータは私たちの生活の利便性を高める一方、体への密着度が増し、もはや体に組み込まれていく気配に、少なからず不安がよぎる方もいるのではないだろうか。このままコンピュータに支配され、自己が曖昧になってしまうかもしれない。いや、もはやコンピュータに支配されている自分が自分だと信じて疑わなくなるかもしれない。

ライプニッツ、チューリング、フォン・ノイマンら、デジタル・コンピュータ史の預言者たちはなにを示唆してくれていたのだろうか。本書は、コンピュータの誕生から、今のデジタル宇宙の拡張、コンピュータによる人間の行為や思考の支配を駆動している「力」とはいったいなんなのかを綴った、現代の預言者ジョージ・ダイソン氏からの壮大なメッセージだ。

著者

ジョージ・ダイソン
アメリカの科学史家。著書に本書のほか、アリュート族のカヤックに関する『バイダルカ』Baidarka、デジタルコンピューティングとテレコミュニケーションを題材にしたDarwing among the Machines、宇宙探索に関するProject Orionなどがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    コンピュータの出現は水素爆弾の開発を加速させた。しかし、その兵器の破壊的な力からわれわれを守ることができるのは、やはりコンピュータの総合的な知性以外にないだろう。
  • 要点
    2
    アラン・チューリングが提唱した理論上可能である「チューリング・マシン」は数学者ジョン・フォン・ノイマンの手によって実現された。
  • 要点
    3
    1953年、熱核兵器、プログラム内蔵コンピュータ、生命が自らの命令をDNAの鎖にどのように保存するかの解明を目指した3つの技術革命が始まった。

要約

【必読ポイント!】核開発の歴史とともに語られる、デジタル宇宙の「創世記」

Digital Vision./Photodisc/Thinkstock
核開発のなかでデジタル宇宙の「創世記」における「核」は形づくられた

1945年後半、ハンガリー生まれの数学者ジョン・フォン・ノイマンは技術者達の小さなグループを立ち上げ、一台の電子デジタル・コンピュータの設計、制作、そしてプログラミングをはじめた。彼らは、はるか遡ること1936年、アラン・チューリングが理論上は可能であると示した、あらゆる計算が可能な万能計算機、いわゆる「チューリング・マシン」を具現化しようとしていたのだ。

「記憶容量はわずか5キロバイトで、メモリ位置のアテンション切り替えには24マイクロ秒かかった」と言われるこのマシンは、今日ではコンピュータ画面上の1個のアイコンを表示するにも足りないメモリ容量だという。しかし、これこそが「高速ランダムアクセス・ストレージ・マトリクスを使いこなした最初のコンピュータ」の一つであり、現在のデジタル宇宙のすべてが、元をたどればこの32×32×40ビットの小さな核につながっているのだ。

その後、産業に縛られることもなく、米国政府から大々的な支援を受け、5年に及ばぬ短い期間で、フォン・ノイマンらによりコンピュータの設計から制作がおこなわれた。そして、時は第二次世界大戦も終わりに近づいたころ、原子爆弾を製造した科学者たちが次に開発すべきものを訝しげに探しているなか、フォン・ノイマンは、より高性能な兵器、つまり水素爆弾の開発に取り組みたいと考えていた。

「コンピュータは、核爆発を起爆させるために、そして、爆発に続いて何が起こるかを理解するためにも、不可欠だった」という背景の上に、フォン・ノイマンのコンピュータを作り上げたいという願望が重なり、水爆製造競争はより一層加速された。実際、彼がコンピュータを使って、核爆発をより物理的に実体に近似する方法を見出したおかげで、核兵器の効果について、実際に役立つ予測(数値シミュレーション)を立てることが初めて可能になったのだ。

「人間の発明品のうち、最も破壊的なものと最も建設的なものがまったく同時に登場したのは偶然ではなかった。コンピュータのおかげで発明することができた兵器の破壊的な力からわれわれを守ることができるのは、コンピュータの総合的な知性以外にないだろう」と著者は述べている。

万能計算機械「チューリング・マシン」

agsandrew/iStock/Thinkstock
フォン・ノイマンが実現させた、「チューリング・マシン」開発の理論的背景

パソコンを購入しようとあれこれ迷った経験がある方なら、ビットという言葉を聞いたことがあるだろう。「ビット(bit)」とはバイナリー・ディジット(binary disit)の短縮語であり、統計学者のジョン・W・テューキーが1945年、フォン・ノイマンのプロジェクトに加わった直後に作った造語だ。

5キロバイトというわずかな記憶容量であれ、インターネット全体であれ、デジタル宇宙はどれも二種類のビットからなっている。それは「空間における変化と、時間における変化、それぞれに対応する二種類」だという。すべてのデジタル・コンピュータは、情報をこの二種類の形のあいだで厳密なルールに則って翻訳している。

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未 読
チューリングの大聖堂
ジャンル
産業・業界 テクノロジー・IT サイエンス リベラルアーツ
著者
ジョージ・ダイソン 吉田三知世(訳)
出版社
早川書房
定価
3,780円
出版日
2013年02月22日
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