そして、奇跡は起こった!

シャクルトン隊、全員生還
未読
そして、奇跡は起こった!
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シャクルトン隊、全員生還
未読
そして、奇跡は起こった!
出版社
評論社
定価
1,760円(税込)
出版日
2000年09月01日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「ボス、あなたならもどってきてくれると信じていました」――本書で印象的なこのことばは、厚い信頼に満ちている。

ボス、と呼ばれているのはアーネスト・ヘンリー・シャクルトン。欧米諸国が競うように南極へ探検隊を送った20世紀初頭、やはり南極に魅せられた男のひとりである。アムンゼン、スコットにより、南極点制覇が果たされた後の1914年、シャクルトン率いる英国探検隊は南極大陸横断を目標にかかげ、出航した。

しかし、氷に閉ざされた船は大陸を目の前にして遭難し、沈没。南極海では冬には気温がマイナス70度を下回り、地球上でもっとも強い風が吹く。苛酷な環境で、彼らには外界と連絡をとる手段は一切なかった。こうした絶望的な状況にもかかわらず、およそ1年半後、彼らは一人も欠けることなく生還したのである。

南極大陸横断という目標は達成できなかった。だが、極限の状況から全員が生きのびて帰ってきたという事実は、心をうつ奇跡的な偉業である。このことはシャクルトンのリーダーシップなしには成しえなかったであろう。彼は個性も職種もバラバラの人々を団結させ、死を意識せざるをえない状況に置かれても前向きな力を引き出しつづけた。

本書は、シャクルトン隊の探検の軌跡をたどるノンフィクション作品だ。白い戦場、南極を闘いぬいた、シャクルトンと隊員たちの姿は、ずしりとした感動を与えてくれる。そして、困難に遭遇したときにリーダーはどういう姿を示すべきなのか。その真髄を教えてくれることだろう。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

著者 ジェニファー・アームストロング
若い人向けの歴史小説を中心に、絵本からノンフィクションまで、幅広い分野で活躍中の新進作家。本書が初の邦訳だが、すでに50冊以上の本を出版している。代表作は、Black-Eyed Susan, The Dreams of Mehanなど。今回初めてノンフィクションに挑戦し、高い評価を得た。最新作In My Handsもノンフィクションで、ホロコーストを扱ったもの。スミス・カレッジ卒。大の犬好きで、ニューヨーク郊外のサラトガに、夫と三匹の犬とともに住む。

訳者 灰島かり
国際基督教大学卒。資生堂『花椿』編集部、コピーライターを経て、英国のローハンプトン大学院で児童文学を学ぶ。子どもの本を中心に英文学の翻訳、研究に携わる。著書に、『こんにちは』(講談社)、訳書に『猫語の教科書』(ポール・ギャリコ著、筑摩書房)、『それぞれのかいだん』(アン・ファイン著、評論社)など。猫派、鎌倉市在住。

アーネスト・ヘンリー・シャクルトン
1874年2月15日、アイルランドに生まれる。1890年から商船に乗り組み、1901年英海軍予備役中尉となる。同年、スコットの南極探検に志願して参加。種々の職業を転々とするが、1907年、自らの南極探検計画を発表。極地到達はならなかったものの、歓呼に迎えられて帰国。ナイトに叙せられる。1914年に乗り出したのが本書の探検。この後、1922年、4度目の南極に向かい、サウスジョージア島にて永眠。墓は同島の斜面に、南を向いて立てられている。

本書の要点

  • 要点
    1
    どんな危機的な状況でも、しなやかに対応することが、リーダーのあるべき姿だ。希望を捨てずに次の目標を定めて、取り組むことが大切である。
  • 要点
    2
    リーダーは、部下の状況に常に気を配り、団結のために必要な措置をとる。たとえばシャクルトンは、船が氷に閉じ込められた環境において、隊員たちが心の健康とやる気を保てるように日課をつくり、固くそれを守らせた。さらに不和が生じたときには、すみやかに対策をとったという。
  • 要点
    3
    リーダーは、部下たちの信頼に応え、常に部下のことを思って行動する。シャクルトンは、危険には隊長として率先して立ち向かった。

要約

雪と氷に閉ざされる

氷山の上の冬

南極大陸横断を目指し、シャクルトンが率いる探検隊は、母国英国を後にした。乗り込んだ船はエンデュアランス(不屈の忍耐)号。出発前、想像もできない困難を乗り越えていく力がシャクルトン隊長にあるのだろうか、と尋ねられた隊員は、「あの人は立派な隊長さね。部下を危険な目にあわせることは、できるかぎり避ける。しかし、どうしても避けられない危険があるときには、賭けてもいいが、あの人が先頭に立って向かっていくのさ。」と語っている。

南へ向かう船を阻んだのは、例年にない多くの氷だった。出発した1914年の翌年、1915年の1月半ば、ついに船は氷に閉じ込められ、動くことができなくなってしまった。

冬が近づいても状況は変わらず、氷上の越冬は避けられない事態になった。だが、エンデュアランス号の乗組員は全員、船が頑丈なことを確信していたため、この時はまだ予定が遅れること以外は退屈することだけを心配していたのである。

隊員たちの中には、船乗りもいれば、大学の研究者もいて、さまざまなタイプの人間の寄せ集めだった。それに、行くこともやることもない船の中に男だけで閉じ込められている。しかし、シャクルトンがリーダーであるかぎり、けんかが起こることがなかったそうだ。

隊員たちが閉所症候群で気が変になってしまうのを防ぐため、シャクルトンは日課を定め、それが守られるよう工夫を重ねた。また、トランプや推理ゲーム、物まね、レコード鑑賞、スライドを使った講義、朗読など、楽しく過ごす方法が編み出された。船の外では、連れてきた犬でそりを引いてレースが催されることもあったという。

【必読ポイント!】夢は断たれた

船を失う
Chantale Jeanrie/Hemera/Thinkstock

だがしかし、南極の冬は船員たちの想像を超えていた。船の周りで凍った氷が、ぎりぎりと船を圧迫していた。春が訪れても水路はひらかず、とうとう恐れていた日がやってきた。とてつもない自然の力が船を圧迫し、ついに船倉から水が噴出したのだ。奮闘の末に、ついにシャクルトンは救命ボートと食糧を降ろし、氷上に移動せよという命令を出した。

いまや南極大陸横断の夢は断たれた。だが、隊員全員が生きている。「今後成すべき仕事とは、探検隊全員が無事、故郷に帰り着くことだ」と、シャクルトンは日記に記している。

氷結した海で船が難破することは、必ずしも確実な死を意味するわけではない。海水が凍結するとき、水温が下がると、まず表面の水が凝縮しはじめる。個々の氷晶が核のようになって、まわりの水はこの核にくっつくようにして凍る。このとき、塩は下の水の中に押し出される。すると、氷自体は真水となるので、解かせば飲料水にすることができるのだ。

船外で、シャクルトンは金のシガレットケースと何枚かの金貨をポケットから取り出し、雪の上に捨てた。聖書も、1ページだけを残して捨てた。隊員たちにどうすべきかを示したのだ。生きのびたければ身軽になれ。物への愛着を断ち切れ。シャクルトンは、その場に応じてしなやかに対処することを信条としていた。

それでも、食糧を積んだ救命ボートは1トンを越え、雪に吹きつけられながらボートを引きずって運ぶ行程は遅々として進まなかった。

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要約公開日 2014.07.18
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