復活の日

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復活の日
出版社
定価
836円(税込)
出版日
1975年10月30日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

人類のほとんどが免疫を持っていない新種のウイルスが世界中に蔓延し、混乱が広がる。まるで現在の世界の様子を描いているかのようであるが、これはSFの大御所である著者・小松左京氏が1964年に発表した作品『復活の日』のあらすじだ。緻密な取材にもとづいて書かれた本作には、現在の状況を予見していたのではないかと思われるほどの著者の洞察が詰まっている。

著者の息子である実盛氏の解説によれば、第二次世界大戦の戦禍のなかで思春期を過ごした著者は、本土決戦で命を落とす覚悟をしていた。しかし思いがけず生き残り、終戦を見届けた著者を待ち受けていたのは、平和な時代ではなかった。第三次世界大戦が勃発すれば、今度こそ世界が滅んでしまうかもしれない。そうした危機感のなか、本作の執筆が決まった。それは奇しくも現在と同じように、東京オリンピックを翌年に控えた1963年のことである。

こうした流れを見ると、著者が現在のようなウイルスによる混乱を予見し、人類の未来を悲観していたように感じられるかもしれない。しかし本作はむしろ、人類が断崖に追い詰められた姿を描き出すことで、私たちが「理知的」にふるまうことを促そうとしている。作中の人類はほとんど滅びてしまうが、何かが少しでも違えば、誰かがもう少しだけ理知的にふるまっていれば、違った結末があったのではないかと思わされる。

今日の混乱のさなかにいる私たちは、はたして理知的にふるまえているだろうか。日本SFの金字塔と呼ぶにふさわしい名作である。

ライター画像
池田友美

著者

小松左京 (こまつ さきょう)
1931年大阪生まれ。京都大学文学部卒。幾多の職を経て、62年作家デビュー。その後、日本SF界の草創期から現在に至るまで中心的役割を果たし、数々の秀作名作を発表。74年『日本沈没』で第27回日本推理作家協会賞、85年『首都消失』で第6回日本SF大賞を受賞。2011年7月永眠。

本書の要点

  • 要点
    1
    イギリスの細菌戦研究所から非常に増殖力の強い新型ウイルスのサンプルが盗み出され、スパイの手に渡ってしまう。そして新型ウイルスを載せたスパイ一行の飛行機は、アルプスで墜落される。
  • 要点
    2
    ウイルスは世界中に広がり、感染症や突然死が相次ぐ。有効な手立てもないまま、人類は南極調査で隔離されていた1万人を残すのみとなった。
  • 要点
    3
    南極生活4年目、北米で起こると予想される地震を攻撃と勘違いした米ソの報復システムが、南極へミサイルを発射するという可能性が示唆される。
  • 要点
    4
    報復システム停止のために決死隊がアメリカに向かうも、予想より早く地震に見舞われ、報復システムが作動してしまう。

要約

プロローグ

調査行からの帰還
Bulgac/gettyimages

1973年3月、アメリカ人艦長のマクラウド大佐が率いる原子力潜水艦ネーレイド号は、調査行で日本を訪れていた。正確にいえば、艦長の祖国はもうないのだから、彼をアメリカ人と呼ぶことはできない。彼だけではなく、ミハイロヴィッチ兵曹の祖国であるソ連もない以上、彼はスラブ人と呼ぶほかないし、航海士ヴァンカークの祖国もオランダでなければ、操舵手オリンダの国籍もイギリスではない。

日本出身である吉住に故郷を見せてやろうと、一行はテレビ気球で東京の様子を観察した。すると2年半前は活気に満ちていた港街の何万という住民は、街のいたるところでぼろぼろの服をまとった白骨と化していた。

古代から発展を続けてきた人類の世界は、1960年末期に突如としておわりを告げ、1970年代からは南極大陸に閉じ込められた1万人そこそこの世界を残すのみとなった。吉住は1960年代の世界に残してきた同胞たち、とりわけ郷里の家に横たわっているであろう年老いた母の白骨のことを思った。そして兄夫婦たちの骨、甥の骨、大東京という墓地のどこかに横たわっているはずの、幼馴染みの女性の骨のことも。

年ごとに草におおわれ、朽ち果てていく墓場を見回るだけの調査行を終え、潜水艦は1960年代の世界を背に、雪に閉ざされた極寒の地へと帰っていった。

災厄の兆し

機密アンプルの漏洩

196X年2月はじめ、イギリス陸軍の細菌戦研究所に所属するカールスキイ教授が、試験中であった新型ウイルスのアンプルを密かに持ち出した。摂氏5度以上になると驚異的な増殖性と毒性を発揮するこの「MM-88」を、ウイルス核酸の権威であるライゼナウ教授に届け、対抗薬の開発を試みてもらうつもりだった。

しかしカールスキイ教授はスパイに踊らされ、アンプルは持ち去られてしまう。そしてスパイ一行を乗せた小型飛行機は吹雪のなか、アルプス越えの難所で墜落。アンプルを入れた容器は砕け散った。その後、自殺したカールスキイ教授の姿が発見される。

国際俳優の交通事故
photostio/gettyimages

3月13日午後2時頃、記録にあらわれている限りでは、「それ」らしきものとしての最初の事件が起こる。

国際的な二枚目俳優トニオこと、アントニオ・セヴェリーニの運転するアルファロメオ“バルカ・ヴォランテ”が、チヴィタヴェッキアからローマに向かう自動車道路で事故を起こした。そのスポーツカーは時速90キロ前後で直線路を走っていたが、突然頭をふってセンターラインをこえ、対向車のトレーラーのバンパーのはしに引っかかりながらガードレールにぶつかったのだ。

運転席のトニオは、一見なんの外傷もないにもかかわらず死亡。助手席の女性は重傷を負い、救出時には口から血を吹いていたものの生きていた。その後、この女性がNATOのスパイ事件に巻き込まれ、国際的に有名になったコールガールであることが判明し、トニオには結婚間近といわれた中東の王女の恋人がいたことから、世間からは暗殺説や陰謀説が飛び交った。

またバルカ・ヴォランテは、アルファロメオ社が新技術を多数搭載してトニオに提供した、初のガスタービンの試乗車であった。高性能車の発表で先を行かれたライバル社からは、車の欠陥を疑う声があがった。

1週間後、コールガールとの面会がようやく許された。

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