志を育てる

リーダーとして自己を成長させ、道を切りひらくために
未読
志を育てる
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リーダーとして自己を成長させ、道を切りひらくために
未読
志を育てる
出版社
東洋経済新報社
出版日
2011年12月15日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

ビジネスリーダーを育成するグロービス経営大学院では、「志」を見つけ、育てるということを、特に大きな教育のポイントと位置づけているという。

「志」を持って生きることの重要性は多くの偉人たちが大昔から説いてきたが、その重要性は今も変わらない。いや、むしろ今だからこそ重要性は増しているといえるかもしれない。

右肩上がりの経済において、自然な成り行きの中で昇進、昇格し、責任の範囲も広がり、給料も部下の数も増える――こうした状況は、日本では既に過去のものとなってしまった。現代日本にあって、先が見えずに働くことの苦しさや、何のために働くのかという疑問を全くおぼえずに勤めてこられた方は、かなり幸運な部類に属する方であろう。

明るく元気に、有意義に働きつづけるためには、自分の中に何か強い気持ちを持たねばならないと、私たちは皆、すでに気づいている。「志」は、まさに今、私たちが意識せねばならない事柄ではないだろうか。「志」は私たちを仕事へ向かわせ、追い詰められた局面でも踏ん張る力をくれ、成長させてくれるのだ。

著者らは、「志とは何か」「志はどのようなプロセスで醸成されるのか」「どうすれば、志を醸成することができるのか」ということを明らかにするための調査研究をおこなった。さまざまな分野で活躍する32名のビジネスパーソンに「志」についてインタビューし、本書はその結果から共通性や法則性を抽出してレポートするものである。本書の後半ではたっぷりとページを割き、8人の詳細な事例を提示している。

この本を読むことは、自分の「志」について改めて考える時間を持つための良いきっかけになるはずだ。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

著者 グロービス経営大学院
社会に創造と変革をもたらすビジネスリーダーを育成するとともに、グロービス・グループの各事業を通じて蓄積した知見に基づいた、実践的な経営ノウハウの研究・開発・発信を行っている。グロービス・グループは以下の事業がある。
・グロービス経営大学院(経営大学院/東京・大阪・名古屋)
・グロービス・マネジメント・スクール(ビジネス・スクール事業/東京・大阪・名古屋)
・グロービス・オーガニゼーション・ラーニング(人材育成・組織開発事業)
・グロービス・キャピタル・パートナーズ(ベンチャーキャピタル事業)
・オンライン経営情報誌「GLOBIS.JP」(経営情報サイト運営事業)
http://www.globis.co.jp

執筆・監修 田久保善彦(たくぼ よしひこ)
グロービス経営大学院経営研究科副研究科長、学校法人グロービス経営大学院常務理事。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDプログラム終了。株式会社三菱総合研究所を経て株式会社グロービスに参画。グロービスでは、企画・運営業務に従事する傍ら、「経営道場」「企業の理念と社会的価値」などのコースに登壇。著書に『ビジネス数学力を鍛える』『社内を動かす力』(共にダイヤモンド社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「志」=一定の期間、人生をかけてコミットできるようなこと、と本書では定義する。
  • 要点
    2
    「志」は、紆余曲折を経て、自問自答するなかで、段階的に成長していくものである。
  • 要点
    3
    「志」は困難な状況を乗り切る精神的な支えとしての役割や、リーダーシップを発揮して周囲を巻き込み、目標や目的を意識し続ける役割がある。
  • 要点
    4
    「志」は、自律性、社会性を高めながら成長していくものである。

要約

志の醸成と、成長

志とは何か

本書では、「志」を「一定の期間、人生をかけてコミットできるようなこと」と定義している。解説を含めて言い換えると、2~5年程度の期間に、意志に基づいて自分の時間や意識を傾けて取り組むこと、を指している。

生涯をかけて取り組むような崇高な目標が大志だとすれば、本書で取り扱うのは小志といえるであろう。はじめに大志ありき、ということはよく言われるが、今回行った調査では、最初から大志をもって生きているという人はほとんどいなかった。つまり、なかなか難しいことなのである。しかし、大志がないから志がないとあきらめてしまわないでほしい。小さい志を積み重ねることが大きな志につながっていくと考えて、まずは自分の小さな志を見つけてみよう。志の成長を通じて、より実りの多い人生を歩む可能性が高まるし、個々人の志の成長は社会にとっても新しい価値をもたらす可能性が高いのだから。

本書のベースとなっている調査研究は、さまざまな分野で活躍する、さまざまな年齢、性別、ポジションの32名を対象にグロービス経営大学院で実施された。アンケート調査とインタビューから得られた個人の生の体験を紹介しつつ、考察をすすめていこう。

志の醸成サイクル
Maxim Krasnov/iStock/Thinkstock

インタビューを通して、ほぼ全員にいえたことは、「紆余曲折を経て、『志』も少しずつ変化をしながら『成長』していく」ということだった。

具体的には、「志」は5つのフェーズからなるサイクルを1サイクルとして、サイクルを終えるごとに一段階成長するというモデルをあてはめられることがわかった。らせん階段のようにぐるぐる回りながら上に行くイメージだ。

5つのフェーズとは、①達成への取り組み、②取り組みの終焉、③客観視、④自問自答、⑤新たな目標の設定、である。

まず、あるきっかけで、人生最初の目標設定をする。これがゼロ地点となる。自らの意志で「一定期間、人生をかけてコミットできるような目標」を設定できた瞬間を「初めて志が生まれた瞬間」とする。

こうして新しく目標が生まれると、①達成への取り組みという実行のフェーズに入る。

次に、活動自体が本人の意向によらず終了したり、もしくは本人にやりきったという実感が生まれたり、別の目標が生まれたりする状況によって、②取り組みの終焉が訪れる。本人がもともとコミットする期間を定めている場合もあるだろう。

そしてその後に訪れる③客観視のフェーズこそが、「志」のサイクルを成長させる大きな肝となることが多い。取り組みの終焉を迎えたとき、インタビュー対象者の多くが、ふとしたタイミングで自分を見つめなおしている。あるシンクタンクに勤めていた、当時30代のあるビジネスパーソンは、社内の引っ越しの際、自分が書いてきた報告書の数をかぞえる機会があったという。そこで初めて自分のやってきたことが、社会へどれだけのインパクトをもたらすことができたのか、と改めて考えることになったそうだ。

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要約公開日 2014.07.22
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