豊田章男

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豊田章男
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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2020年04月23日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

メイドインジャパンのブランド力が失われて久しい。そんななかでも、日本を代表するメーカーとして高い存在感を示し続けているのがトヨタだ。時価総額日本一を誇るこの巨大企業の社長を、豊田の姓を持つ創業家の章男氏が担うとあって、興味を抱いた読者も多かったのではないだろうか。なかには、こう思った方もいたに違いない。創業家の御曹司に任せて大丈夫なのだろうかと。

しかし、章男氏は、社長就任後に次々に襲い掛かる、リーマン・ショックやリコール問題、そして東日本大震災といった空前の危機を乗り越えていく。そして、失われた30年ともいわれる平成の時代において、見事な成長を果たした。さらには、自動車メーカーからの脱却を目指して、モビリティーカンパニーに転換すると宣言するなど、さまざまな挑戦を続けている。

いままでの延長線上に、トヨタの未来はないと断言する章男氏は、創業家の精神を重要視しながらも、従来の在り方をダイナミックに破壊し、再生への道の途上にいるように見える。それはきっと、創業家だからこそ成しえることなのだろう。自動車業界に大きなパラダイムシフトが起ころうとしているからこそ、創業家の力が必要なのかもしれない。

これからも章男氏は、さまざまな挑戦を続けることになるはずだ。きっとそれは、クルマという枠を超え、私たちの社会や生活を変えるものになるだろう。

ライター画像
香川大輔

著者

片山修(かたやま おさむ)
愛知県名古屋市生まれ。経済、経営など幅広いテーマを手掛けるジャーナリスト。鋭い着眼点と柔軟な発想力が持ち味。長年の取材経験に裏打ちされた企業論、組織論、人事論には定評がある。
『時代は踊った――オンリー・イエスタディ ‘80s』(文藝春秋)、『ソニーの法則』『トヨタの方式』(ともに小学館文庫)、『本田宗一郎と「昭和の男」たち』(文春新書)、『なぜザ・プレミアム・モルツはこんなに売れるのか?』(小学館)、『ふるさと革命――“消滅”に挑むリーダーたち』(潮出版社)、『社員を幸せにする会社』『技術屋の王国――ホンダの不思議力』(ともに東洋経済新報社)、『パナソニック、「イノベーション」企業に進化する!』(PHP研究所)など、著書は60冊を超える。
公式ウェブサイト http://katayama-osamu.com/wordpress/

本書の要点

  • 要点
    1
    御曹司の宿命を背負う豊田章男は、トヨタ自動車に入社したあとも、持ち前の利かん気の強さや上司に支えられ、さまざまな部署を渡り歩きながら成長していく。
  • 要点
    2
    社長就任後、次々と危機が襲い掛かったが、自らが陣頭指揮を執り、責任を負うという姿勢を貫くことで、その危機を乗り越えていく。
  • 要点
    3
    自動車に訪れる変革期を乗り切るために、章男は電気自動車やAIを使った自動運転への投資に力をいれており、トヨタをモビリティカンパニーに転換しようとしている。

要約

【必読ポイント!】 トヨタ御曹司、豊田章男とは

御曹司の宿命を背負って

「失われた30年」と呼ばれた平成において、トヨタ自動車は国内で最も時価総額を伸ばした。ある役員は、「豊田章男は突然変異ですよ」と評する。世界一に上り詰めたトヨタを牽引する豊田章男(以下、章男)とはどんな人物なのか。

豊田章男が名古屋市に生まれたのは1956年。利かん気が強く、腕白でやんちゃな子供だった。こうした気質こそが、今に続く章男の本性といえるのかもしれない。幼少期からイジメに遭うなど、「御曹司の宿命」を背負い、ときには孤独な心の葛藤と戦うこともあった。

そんな章男は1975年に慶應大学法学部に進学し、ホッケー部に所属。「何事にも考える前にまずやってみる」という体育会系の行動パターンの影響を強く受けた。そして、日本代表としてアジア大会に出場するほどの実力を蓄えていく。

大学卒業後は、MBA取得、投資銀行勤務を経て、27歳のときにトヨタに入社。章男は本格的に御曹司の宿命を背負うことになるが、持ち前の気の強さで乗り越えていく。また、人にも恵まれた。工場勤務や財務部で、当時の上司は厳しく章男を鍛えたのだ。

その後、営業部門に配属された章男が進めたのが、工場の外にまでジャスト・イン・タイムを広げることだった。そのための手段としてITに注目。中古車販売サイト「GAZOO」を立ち上げたのだ。ここで培ったノウハウは、現在トヨタが掲げている「モビリティカンパニーへの転換」につながっている。

豊田章男とモリゾウ
jamesteohart/gettyimages

章男には、トヨタ自動車の社長という公の顔のほかに、「モリゾウ」というドライバーとしての顔がある。きっかけは、テストドライバーへの挑戦だ。46歳で配属された技術部門で運転訓練をおこない、世界一過酷なモーターレースといわれる「ニュル24時間レース」にも出場した。このときに名乗ったのがモリゾウだ。過酷なレースに章男が出場するとなれば、バッシングを受けかねない。だが、モリゾウであればその隠れ蓑になる。

章男がモリゾウの名前を使うのは、レースだけではなくなった。章男がトヨタ社長という鎧を脱ぎ捨てたとき現れる、1人のクルマ好きがモリゾウとして体現されるようになったのだ。モリゾウにとってレースは、「もっといいクルマづくり」を、現地現物で確認する場である。章男は、社長とモリゾウという2つの顔を使い分けることで、最も厳しい時代のトヨタのトップを務めているようにも見える。章男の隠れ蓑にすぎなかったモリゾウは、逆に章男の素を引き出す役割を担うようになった。モリゾウの持つ意味は変化し、その存在感は大きくなっている。

豊田綱領

章男は豊田家のルーツを大切にする。その始まりは、自動織機を発明した豊田佐吉に遡る。佐吉がつくった豊田自動織機製作所は、息子の喜一郎が自動車部をつくったことで、今日に続くトヨタ自動車の礎となった。章男は佐吉や喜一郎を尊敬し、彼らに倣いたいという思いが強い。

章男が経営者としてつねに立ち返る原則として、「豊田綱領」がある。豊田綱領は、トヨタグループの創始者である佐吉の考え方を整理したものだ。章男の経営における、危機対応や新たな取り組みは、豊田綱領に忠実に基づいて判断されていたことがわかる。1935年に発表された豊田綱領は、長らく改定されずにいた。しかし、1980年代以降、グローバル化といった経営環境の劇的な変化をうけて、世界共通の理念が必要となる。そこで1992年に、7カ条の基本理念がまとめられ、1999年には「トヨタウェイ2001」の編集が着手された。不確実な未来を前に、トヨタグループをまとめ上げるうえで、つねに立ち返るべき原理原則を堅持することは、これまで以上に重要となる。だからこそ、創業の精神を刻む豊田綱領を章男は大事にしているのだ。

どうやって危機を乗り越えたのか

波乱含みの社長就任
taa22/gettyimages

豊田家にとって、14年ぶりの豊田の姓を持つ新社長の誕生は待望といえた。しかし、トヨタの世襲劇は初めから波乱含みだった。100年に一度といわれたリーマン・ショックがトヨタを襲ったのである。

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要約公開日 2020.07.02
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