沈みゆく帝国
スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか

未 読
沈みゆく帝国
ジャンル
著者
ケイン岩谷ゆかり 井口耕二(訳) 外村仁(解説)
出版社
日経BP社
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2014年06月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか
著者
ケイン岩谷ゆかり 井口耕二(訳) 外村仁(解説)
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出版社
日経BP社
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2014年06月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
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レビュー

アップルの偉大な経営者スティーブ・ジョブズが存命中には、彼のリーダーシップやプレゼンテーションに注目が集まり、それにまつわる多数の書籍が出版された。その後ジョブズが膵臓がんで亡くなると、『インサイド・アップル』(早川書房)や『アップル帝国の正体』(文藝春秋)といった、アップルの組織構造について言及した書籍が発表されるようになる。

そしていま、世間の関心は「ビジョナリーなリーダーが去っても、偉大な会社が偉大なままでいられるのか」という点に寄せられている。たとえば、昨年末に日本で発売された『アップルvs.グーグル―どちらが世界を支配するのか―』(新潮社)では、グーグルとアップルがテクノロジーの領域にとどまらずメディア業界まで視野に入れた戦いを繰り広げるなかで、アンドロイドがiPhoneのシェアを追い抜き、優勢に立っているのはグーグルだと主張している。

対する本書はアップルの内部について深く掘り下げた一冊だ。社員が辞め、イノベーションが生まれないばかりか、アプリまで失敗作続きという状態に陥ってしまった内情を探るとともに、下請けの台湾企業フォックスコンの労働環境やサムスンとの特許裁判における争点など、次々と明らかにされる事実は衝撃的なものばかりである。

アップルの現CEOティム・クックが「寝言だ」と名指しで批判したと言われる本書だが、仔細にわたる著者の調査や分析は現経営陣が陥っている苦境を白日の下に晒している。日本に多いアップル信者にこそぜひ読んでいただきたい一冊だ。

苅田明史

著者

ケイン岩谷ゆかり
ジャーナリスト。1974年、東京生まれ。ジョージタウン大学外交学部(School of Foreign Service)卒業。父の仕事の関係で3歳の時に渡米、シカゴ、ニュージャージー州で子ども時代を過ごす。10歳で東京に戻ったものの、15歳で再び家族とメリーランド州へ。大学3年の時に1年間上智大学へ逆留学したが、その後アメリカへ再び戻る。アメリカのニュースマガジン、U.S. News and World Reportを経て、ロイターのワシントン支局、サンフランシスコ支局、シカゴ支局で勤務後、2003年末に特派員として
東京支局に配属。通信業界、ゲーム業界などを担当。2006年にウォール・ストリート・ジャーナルへ転職。東京特派員としてテクノロジー業界を担当。2008年にサンフランシスコに配属、アップル社担当として活躍。スティーブ・ジョブズの肝臓移植やiPadの発表など数々のスクープを出したのち、本書執筆のために退職。

本書の要点

  • 要点
    1
    スティーブ・ジョブズの後継者としてアップルCEOに就任したティム・クックは、「在庫のアッティラ王」と呼ばれるほど管理面には強いが、ビジョナリーではなく、イノベーターの経験もない。
  • 要点
    2
    帝国と化したアップルはSiriや地図アプリの失敗、アンドロイドの台頭によるスマートフォン市場でのシェア低下、終わらない特許係争、制御不能になったサプライヤーなど、多くの課題を抱えている。
  • 要点
    3
    ジョブズ亡きあと、問題が噴出しているアップルにはもはや世界を再発明するような製品を生み出す能力はなく、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の例外ではなくなってしまった。

要約

アップル帝国の新皇帝、ティム・クック

帝国になったアップル

iPhoneやiPadなど世界を驚かす新製品を発表してきたアップル。アップルを率いていたカリスマ創業者スティーブ・ジョブズは、自らとアップルをマイクロソフトに対抗する反逆者と位置づけ、体制に逆らうイノベーターとしてのアイデンティティを長年にわたって表わしてきた。

しかしiPhoneやiPadの成功によって市場を支配する立場となるにつれ、アップルは虐げられた者という見方ではなく、傲慢な巨人と言われるようになる。

アドビのFlashをサポートしないと表明したことや、未発表だったiPhone 4の試作品を暴露したジャーナリストに対して手荒な刑事捜査を行ったこと、iPhone 4で発生したアンテナ問題について謝罪がなかったこと。今までアップルの味方だった世間は、これらの行動に対して次第に批判の声を強めていった。

ジョブズのあとを継いだクック
Kevork Djansezian/Getty Images News/Thinkstock

2010年に大きな成長を遂げたアップルだったが、年末に行われた幹部研修は暗い雰囲気に包まれていた。どう見てもジョブズの体調が良くないからだ。2009年に行われた肝臓移植を経て一旦体調が回復していたかのように思えたが、このときのジョブズはいつものように誰かを叱り飛ばすこともなく静かだったという。ジョブズの癌が再発したのだ。

2011年1月17日、ジョブズは全社員にあてて電子メールを送り、病気療養休暇を取得することを発表。しかしその後も癌の進行を食い止めることはできず、7月には癌が体中に広がっていた。会社の経営ができない状態になったら辞任すると公言していたジョブズはついにCEOを辞する決意を固め、後任にティム・クックを推薦する。このときジョブズはクックに「僕だったらなにをしただろうかと考えないでほしい。ただ、正しいことをすればいい」とアドバイスを与えたという。

2011年8月24日に辞任したジョブズは、同年10月5日に死去。アップルという拡大する帝国の舵取りを任せられることになった新CEOのクックは、亡くなってもなお影響力を失わないジョブズに肩を並べる存在になれるのかという問題に直面することになった。

アップルはなにも変わっていない

ジョブズは、彼がいなければアップルが成り立たないほどのスーパースターだった。デザイン、製品開発、マーケティングなどの戦略のすべてに意見し、経営陣も彼の弱みを補い強みを伸ばせることを条件に厳選されていた。

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