電子立国は、なぜ凋落したか

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電子立国は、なぜ凋落したか
ジャンル
著者
西村吉雄
出版社
日経BP社
定価
1,944円
出版日
2014年07月14日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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レビュー

本書のタイトル『電子立国は、なぜ凋落したか』に近い内容が語られた書籍は多い。例えばflierでも紹介している、『日本型モノづくりの敗北』(湯之上 隆著)では半導体業界の凋落にフォーカスを当てて詳しく語られている。これらの本を読んだことがあったとしても、本書からは多くの新鮮な驚きが得られることだろう。この本にはトレンドの変化の激しさがビビッドに伝わる、20年以上の長期にわたる数値・統計が満載だからである。

著者は電子産業の歴史を、1970年~1985年の急速な発達の時期、1985年~2000年までの内需の伸びに伴う堅調な発展の時期、2000年以降の衰退の時期の3段階に分けている。各段階での統計上の変化は、日本の産業を象徴する電子産業の栄枯盛衰を如実に表しており、国を挙げて抜本的な対処ができなかったのか、とやりきれない気持ちにもなる。

日本を代表する他産業の自動車産業では、今もなお機械という比較的安定したテクノロジーが自動車の主要な能力を決定づけている一方で、電子産業の中核である半導体ではムーアの法則で言われるように、その能力が飛躍的に改善され続けているという特徴を持っている。

そのような変化に対応するためには、既に遅きに失した感はあるものの、生産工程の切り出し等の分業化の徹底にこそ道があり、それらこそが工場稼働率の改善と、次なるイノベーションのインフラストラクチャの構築を促進すると著者は主張している。そして本書にはその根拠となる実例が明示されている。電子産業に携わる方にとっては勇気が湧いてくる一冊だと思う。

大賀 康史

著者

西村 吉雄(にしむら・よしお)
技術ジャーナリスト。1942年生まれ。1971年に東京工業大学大学院博士課程修了、工学博士。東京工業大学大学院に在学中の1967~1968年に仏モンペリエ大学固体電子工学研究センターに留学、マイクロ波半導体デバイスや半導体レーザーの研究に従事。1971年に日経マグロウヒル社(現在の日経BP社)入社。1979~1990年、『日経エレクトロニクス』編集長。その後、同社で、発行人、調査・開発局長、編集委員などを務める。2002年、東京大学大学院工学系研究科教授。2003年に同大学を定年退官後、東京工業大学監事、早稲田大学大学院政治学研究科客員教授などを歴任。現在はフリーランスの技術ジャーナリスト。

本書の要点

  • 要点
    1
    電子産業の国内生産金額は2000年の約26兆円から急激に落ち込み、2013年には半分以下の約11兆円になった。
  • 要点
    2
    近年では、半導体工場を持たないファブレス、半導体製造に特化したファウンドリのプレゼンスが大きい。売上規模が巨大なだけでなく、その成長には著しいものがある。
  • 要点
    3
    新しい分業のほとんどを日本企業は避け、垂直統合と自前主義に固執したのは、イノベーションに背を向け続けた結果とも言える。

要約

大きな産業が日本から消えようとしている

iStock/Thinkstock
ICT産業の貿易赤字額は「天然ガス」並み

過去10兆円近い貿易黒字を出し、製品が売れすぎて世界中で貿易摩擦を起こしていた日本の電子産業。しかし今は過去と全く違う状況下にある。電子産業と自動車産業を比較すると、1990年から2000年ごろまでは、8兆円前後でほぼ同水準の貿易黒字を確保していた。しかし2013年は自動車産業が12兆円の貿易黒字を確保しているのに対し、電子産業は貿易赤字に転落している。このような違いが生じたのはなぜだろうか。

電子産業のなかで貿易赤字が大きいのは、コンピュータ関連装置と通信機器である。2013年時点での貿易赤字額は、それぞれ1兆6450億円と2兆870億円にもおよび、合計すれば3兆7000億円を超えている。この水準は約3兆6000億円と言われる原発停止後の天然ガス輸入代金増加分をも超えているのだ。

国内生産は2000年をピークに急激に減少

2012年に日本の電子産業は「総崩れ」の様相を示した。パナソニック、ソニー、シャープの最終赤字額が合わせて1兆6000億円に達し、エルピーダメモリもルネサスエレクトロニクスも経営危機に陥った。エルピーダは会社更生法適用を申請し、米マイクロンテクノロジーに買収され、ルネサスは産業革新機構等に救済されたのだ。

ここに日本電子産業の実態を表す驚くべき統計がある。それは電子産業の国内生産金額である。2000年の約26兆円から急激に落ち込み、2013年には何と約11兆円と半分以下にもなってしまったのだ。GDPは「ほとんど伸びない」程度であるのに対し、電子産業生産は10年で半減している。つまり、国内生産という観点では、日本の電子産業は急激に衰退してしまったのである。

年代による全体感を整理すると、1970年~1985年は輸出主導で急成長、1985年~2000年は内需主導で堅調な伸び、2000年を過ぎてからは著しく衰退ということになる。以降ではこの急速な衰退の過程で何が起きたのかを追っていきたい。

100年ぶりの通信自由化がもたらしたもの

電信も電話も放送も、日本では国営で始まった

日本における電信事業は1869年に国営で開始された。電話に関しては、国営か民営かで論争が起きたが、結局は国営で決着し、1890年に公衆電話事業が始まった。ラジオ放送は1925年に始まり、翌1926年に社団法人 日本放送協会が発足、NHKが誕生した。

電信電話業務では、第2次世界大戦後に動きが活発になる。1952年に特殊法人 日本電信電話公社(電電公社、NTT)が設立、翌年には特殊会社 国際電信電話株式会社(KDD)が設立され、国際電信電話業務がKDDに移管される。電信電話事業は国の直轄業務ではなくなったが、国の関与は依然大きかった。

放送事業では戦後に民間放送が始まったものの、放送規格の決定などは今も政府主導となっている。

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電子立国は、なぜ凋落したか
ジャンル
経営戦略 産業・業界 政治・経済 テクノロジー・IT
著者
西村吉雄
出版社
日経BP社
定価
1,944円
出版日
2014年07月14日
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