スポーツ立国論の表紙

スポーツ立国論

日本人だけが知らない「経済、人材、健康」すべてを強くする戦略


本書の要点

  • 欧米のスポーツビジネスは市場規模が拡大しており、アメリカだけで約60兆円となっている。だが日本では有力なビジネスとして認識されておらず、市場規模も4兆円程度だ。

  • もともとアメリカでも、スポーツは金食い虫だった。だが(1)スタジアム・アリーナ改革、(2)リーグ・団体改革、(3)大学改革、(4)女性スポーツ改革、(5)メディア改革を通して、多大なる利益をもたらすようになった。

  • 最大の原動力はスタジアム・アリーナの改革だ。街の中心にスタジアムを作り、ロイヤリティを確実にマネタイズすることが求められる。

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スポーツの稼ぐ力とは

欧米ではカネのなる木、日本では?

スポーツ先進国であるアメリカにおけるスポーツ産業の市場規模は、1994年時点では約22.6兆円だったが、現在では約60兆円にまで成長した。一方で1994年頃の日本のスポーツ市場は約5.8兆円あったが、現在は約4兆円と差は広がるばかりだ。だがそれは同時に伸び代でもある。

スポーツは、本質的に稼ぐ力を持っている。欧米において、スポーツは金の卵であり、それを努力してカネのなる木に育ててきた。その反面、日本はスポーツが金の卵だとすら気付いていない。そもそもの認識が大きく異なっているのだ。

3つの本質的価値

skynesher/gettyimages

スポーツの本質的な価値は、次の3つに定義できる。(1)経済、(2)教育、(3)健康だ。

スポーツは経済を動かす。特に地域経済を活性化し、内需を作り雇用を拡大する。ここで重要なキーワードは「ロイヤリティ」だ。スポーツビジネスにおいては、「地域のロイヤリティを喚起し、経済を回す」ことが基本となる。内需を作り出すため、為替や海外情勢に影響されない強さがある。

またスポーツは教育としての側面も併せ持つ。水泳やサッカーなどのスポーツ教室や部活動は、教育面での効果が期待され、人材育成の基盤のひとつとなっている。

さらにスポーツには、健康寿命や現役年齢を伸ばす効果があるとされている。日本の社会保障費は年々増加しており、2020年度の予算は約35兆8608億円だ。健康=スポーツを促進させれば、この社会保障費を抑制できる。

アメリカスポーツビジネスの改革

スポーツをビジネスへ変える転換点となったのが、1984年のロサンゼルスオリンピックだ。経済的に大成功したこの大会を経て、官民一体となった5つの改革が行われた。(1)スタジアム・アリーナ改革、(2)リーグ・団体改革、(3)大学改革、(4)女性スポーツ改革、そして(5)メディア改革だ。

スポーツ産業が急成長を遂げた背景には、「モノからコトへ」というパラダイムシフトにうまく乗れたということもある。スポーツは体験=コトそのものだからだ。家族でスタジアムに行き、最高の体験をする。最高のカスタマーエクスペリエンスが成功のカギだったのである。

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【必読ポイント!】 カギはスタジアム改革

スポーツビジネスの1丁目1番地

Kruck20/gettyimages

アメリカでスポーツが巨大産業と化した理由のひとつに、スタジアムやアリーナを街の中心に作り、パーク化したことが挙げられる。1992年、メリーランド州ボルチモアに建設された「カムデン・ヤード」がその流れを作った。ボルチモア市の都市再開発と一体となって進めた新スタジアムは多くの観客を動員し、スタジアム建設費をわずか数年で回収したと言われている。

この成功が、「ボールパークは儲かる」という実績になり、ボルチモア・モデルとして全米に広がった。そして街の中心に数万人が数時間熱狂する空間が生まれたことで、あらゆる分野の専門家がそれをマネタイズするようになった。設計段階から顧客目線でスタジアムの最適化を図り、カスタマーエクスペリエンスを最大化する。これがスタジアム・アリーナ改革だ。いまも新しいスタジアムの建設が、進化を繰り返しつつ進んでいる。

日本のプロ野球戦略

これに対し、日本のスタジアムの状況は大きく異なる。

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要約公開日 2020.07.24
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