その名を暴け

#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い
未読
日本語
その名を暴け
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#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い
未読
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その名を暴け
出版社
定価
1,045円(税込)
出版日
2022年05月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

2017年10月、「ニューヨーク・タイムズ」紙が「ハリウッドの大物プロデューサーによる性的暴行」を報道した。これをきっかけに、性暴力の告発運動である「#MeToo」が巻き起こり、アメリカに留まらず世界的ムーブメントへと発展した。女性たちはソーシャル・メディアに#MeTooタグを付け、次々と過去に受けた性被害を告白していった。「#MeToo」運動は「自分が発言することが(誰かの)行動に繋がる」という、価値観の転換を促した。

本書は、記事を担当したふたりの女性記者によるノンフィクションである。約400ページに及ぶ重厚な作品だが、あまりの展開に一気読みしてしまった。ハリウッドの有名女優やアカデミー賞に輝いた名作も多数登場し、まるで映画作品さながらであるが、胸を締め付ける内容の実話だ。

本作は「女性たちによる勇気の物語」に変わりない。一方で、声を上げることで負うリスクや副産物も描いており、単なる美談で終わらせていないところが素晴らしい。要約には入れられなかったが、「#MeToo」に後押しされた女性が「個人的なけじめ」として告発を決意する話も登場する。彼女は図らずも「時の人」に祭り上げられ、平穏な市民生活を脅かされてしまう。昨今問題となっている、SNSの誹謗中傷に通じるものがあると感じた。

何より、女性記者たちの勇気と熱意が、恐怖で閉ざされた女性たちの口と心を開いていく様子は感動的である。一流の社会派ノンフィクションとしても存分にのめり込んで読める力作だ。

※本要約は、単行本刊行時に作成したものです。文庫版刊行にあわせて書誌データを再編集しました。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

ジョディ・カンター/ミーガン・トゥーイー
ともに「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道記者。
カンターは職場問題、その中でも特に女性の待遇について重点をおくとともに、2度の大統領選挙の取材に従事。著書に『The Obamas』がある。
トゥーイーは女性や子供の問題に焦点をあて、ロイターニュース記者時代の2014年にピュリッツァー賞調査報道部門の最終候補者になる。
カンターとトゥーイーは本作の基となったハーヴェイ・ワインスタインについての調査報道で多くの賞を受賞し、ジャーナリズムの分野で最高の名誉とされるジョージ・ポルク賞や、「ニューヨーク・タイムズ」としてピュリッツァー賞公益部門を受賞している。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハリウッドの大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインは、女優たちに役を与える代償として性的暴行を繰り返していた。これはハリウッドの公然の秘密であった。
  • 要点
    2
    ワインスタインのセクハラは会社の女性従業員にも及んでいた。被害者は多額の示談金とともに、黙秘を強いられていた。
  • 要点
    3
    「ニューヨーク・タイムズ」の報道によって、性被害に遭った女性たちが声を上げるようになり、その告発運動である「#MeToo」へ発展した。

要約

発端

ハーヴェイという権力
primoz_design/gettyimages

ハリウッドの敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン。「人を出世させる力」を持つワインスタインは、グウィネス・パルトロー、マット・デイモンなど数々の若手俳優をスターダムに押し上げ、『セックスと嘘とビデオテープ』『クライング・ゲーム』ほか多くの独立系映画を大ヒットさせてきた。アカデミー賞をはじめ数えきれないほどの賞も獲得している。ハリウッドにおいて、「ハーヴェイ」の名は権力と同義語であった。

しかし、その裏でワインスタインは「女性への扱いがひどい」と囁かれていた。2016年、女優のローズ・マッゴーワンは匿名のプロデューサーにレイプされたと訴えていたが、噂ではワインスタインのことだと言われていた。彼女は「ハリウッドやマスコミの間では公然の秘密」と、#WhyWomenDontReport(どうして女性たちは声を上げないのか)というハッシュタグを追加してツイッターに投稿した。

同年5月、「ニューヨーク・タイムズ」紙(以下、「タイムズ」)の記者ジョディ・カーターは、ワインスタインの調査をするためマッゴーワンに連絡を取った。マッゴーワンはオフレコ(非公開前提)を条件に、彼女が受けた恐ろしい体験を打ち明けた。

おぞましい記憶

1997年、マッゴーワンは注目すべき新人女優の1人としてサンダンス映画祭に参加していた。独立系映画の一大発信地だったこの映画祭で、ワインスタインは「統治者」として君臨していた。ワインスタインは「話し合いをしよう」と言って彼女を自分の宿泊するホテルへ誘った。彼の部屋でひとしきり映画の話をして帰ろうとした瞬間、マッゴーワンは浴槽のある部屋に引きずり込まれた。ワインスタインは彼女を裸にし、股のあいだに自分の顔を強引に押しつけた。

数日後、彼女の自宅の電話に、「ほかの大女優たちはぼくの“特別な友だち”で、その仲間にきみも入れるよ」という、身の毛がよだつ内容の伝言が入った。

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