超成長都市「福岡」の秘密

世界が注目するイノベーションの仕組み
未読
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超成長都市「福岡」の秘密
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部

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出版日
2020年02月17日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

都市同士の競争が激しさを増している。少子高齢化による人口減少が進む中、住む人にとって魅力的でなければ転出が進むばかりで、競争力も高まらない。そんな時代に、成功事例として注目を集めているのが福岡だ。

本書によると、福岡における取り組みの中でも特徴的なのは、産官学民の連携だという。そのプラットフォームが、福岡地域戦略推進協議会(FDC)だ。著者は、経済産業省、コンサルティング企業を経て、2015年に35歳という若さでFDCの事務局長に就任した。本書はそんな著者が、福岡躍進の秘密を、豊富な事例と戦略的な取り組み、九州の風土や気質から詳らかに解説している。

福岡は、人口増加率が7%と日本一であるだけでなく、市民アンケート(2019年)では「福岡市が好き」と答える人が96.6%と、住む人に愛されているまちだ。それだけではない。2016年に発表された「世界で最も住みやすい都市ランキング」(2016年)では、第7位に選ばれている。日本で福岡より上にランクインしているのは、東京だけだ。

そんな福岡だが、もともとはネガティブ要素の多いまちだったという。そんな福岡が、いかに今のような勢いをもちはじめたのかが、本書の最大の読みどころだといえるだろう。

本書は、まちづくりのことだけを書いた本ではない。きっと、イノベーションを起こすためのヒントが得られるはずだ。

ライター画像
大島季子

著者

石丸修平(いしまる しゅうへい)
福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長
経済産業省入省後、大臣官房政策評価広報課、中小企業庁長官官房参事官室等を経て、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に参画。
その後、福岡地域戦略推進協議会(FDC)に転じ、2015年4月より現職。
九州大学客員准教授。アビスパ福岡アドバイザリーボード(経営諮問委員会)委員長、Future Center Alliance Japan(FCAJ)理事、九州大学地域政策デザイナー養成講座エグゼクティブディレクター、九州経済連合会行財政委員会企画部会長等を歴任。中央省庁や地方自治体の委員など公職も多数務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    福岡は、財界、学会等が連携して「福岡地域戦略推進協議会」を設立したり、大規模なMICE(マイス)の誘致のために福岡観光コンベンションビューローの誘致部を強化したりするなどして、戦略的なまちづくりを行っている。
  • 要点
    2
    著者らは、福岡都市圏の、メガシティにはないコンパクトさ、優れた人材を惹きつける生活の質の高さ、イノベーションのエコシステムを支える先駆的な教育機関などといった価値を生かして、「東アジアのビジネスハブ」をつくろうとしている。

要約

福岡の強さ

最強都市、福岡
bee32/gettyimages

まず、福岡の強さを見ていただこう。人口増加率は7%と日本一だ。その内訳を見ると、移住などの社会増と、出産による自然増がともに増えているのが特徴である。市民アンケート(2019年)では「福岡市が好き」は96.6%、「住みやすい」は95.4%にものぼる。開業率は7.5%と21大都市中1位だ。税収は3000億円を超えており、全国の政令指定都市で唯一、6年連続過去最高を更新中である。

このように、日本で最も勢いのある都市、それが福岡だ。野村総合研究所が発表した「成長可能性都市ランキング」(2017年)のポテンシャルランキングでは1位に、イギリスのグローバル情報誌で発表された「世界で最も住みやすい都市ランキング」(2016年)では第7位に選ばれた。1位は東京都で、ベルリン、ウィーン、コペンハーゲンと続き、7位に福岡市がつけている。まさに「最強の地方都市」だといえるだろう。

点在している力を連携させる

もともと福岡はネガティブ要素が多いまちだった。一級河川がないため工業都市にはなれない、土地が狭い、都市機能が密集しすぎていて都市開発が進まない。都市と空港が近いため、高層ビルを建てることができず、築50年以上の古いビルも残っていた。

そんなまちを変えた要素の一つに、福岡都市圏や産官学民の連携が挙げられる。プラットフォームとしての役割を担っているのは、2011年に福岡市の高島市長を中心に、財界、学会等が連携して設立された「福岡地域戦略推進協議会(以下、FDC)」だ。FDCが産官学民に点在している力を連携させることで、まちの成長を加速させている。

FDCは、首都圏や海外との連携も考え、成長戦略の策定から推進までを一貫して行う組織だ。福岡都市圏を核として、九州、さらに隣接するアジア地域との連携を図り、事業性のあるプロジェクトを推進している。

2019年11月末時点で、FDCには207の会員企業や大学自治体などが所属し、その半分以上は福岡都市圏外から参画している。域内外の企業がコラボレーションすれば、産業創出やオープンイノベーションの機会が増えるし、新たな視点が得られる。

ムーブメントを生み出す
Meiyi524/gettyimages

著者が日本の地方に出向くと、「まちの魅力を見つけようにも、何もないんです」と言われることがある。しかし、本当に何もないのだろうか。福岡では、何もないと思われていた場所に価値を見出し、それを愛する人が集まり、やがて大きなムーブメントに成長していった事例が多くある。

今や福岡都市圏で屈指の人気エリアとなった「糸島」もその一つだ。糸島はもともと、自然しかない田舎だと思われていた。だが、まちを愛するあるサーファーが小さなカフェを開いたことから、感度の高い人が集い始め、音楽フェスが生まれ、多くの人が移住する憧れの地となった。糸島は、「自然しかない田舎」から「自然があるおしゃれな場所」へと変貌を遂げたのだ。やがて、関東圏からの移住先としても注目されるようになり、地元の情報誌が調査した「住みたい街ランキング」では、福岡の都心部を抑えて1位に選ばれている。

インバウンドを呼び込む

福岡にはMICE(マイス)が多いことも見逃せない。

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要約公開日 2020.08.02
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