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これからを生きるための「練習問題」


本書の要点

  • 2020年度に行われる大学入試改革では、従来の「努力」に基づいた学力審査から、「主体性・多様性・協働性」を問う内容に重点が置かれるようになる。

  • 2000年代後半より、大学の定員数が志願者数を上回り、学生が大学を選ぶ時代になった。

  • ネット社会になり情報・知識の地域間格差はなくなってきている一方、生まれ育った環境に左右される「身体的文化資本」の格差が生まれている。今後の入試は身体的文化資本を問うものになっていくため、子どもたちの身体的文化資本が育つような教育政策に切り替えていく必要がある。

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現代日本における大学入試

未来はわからない

Wenjie Dong/gettyimages

教育とは、子どもたちに対し、来たるべき未来を生きるために必要な能力を授ける行為である。ここで言う来たるべき未来とは、20世紀前半頃までは、ある程度は予測できるものだったかもしれない。しかし今、未来予測は不可能だ。子どもたちが将来どんな職業に就くのか、そこで必要とされるスキルはどんなものなのか、誰もわからない。

もっともわかりやすい例は英語教育だろう。40年近く前、著者が通っていた予備校の恩師は「あと数年もすれば自動翻訳が発達するから、英語を学んでも無駄だ」と説いた。この予言は見事に外れたが、誰も彼を笑うことはできない。

21世紀の半ば以降、中国語やロシア語がより重要になるかもしれない。自動翻訳の進歩により、それをツールとして上手に使いこなしつつ、微妙なニュアンスを表情や身振りで伝えるコミュニケーション能力が求められる可能性もある。このまま英語が世界を席巻し続けるかもしれない。未来は本当にわからない。

大学入試改革

2021年1月、現行のセンター試験が廃止され、共通テストが開始される。

この大学入試改革は、高校と大学の授業カリキュラムにも変革を促す意欲的なものだ。そこで問われていたのは、新しい「学力」観である。

文部科学省は2007年、学校教育法を改正し「学力の三要素」という新しい提言を行った。この三要素とは(1)基礎的な知識・技能、(2)思考力・判断力・表現力等の能力、(3)主体的に学習に取り組む態度(主体性・多様性・協働性)の3つである。これらは並列ではなく、三角形の下から順に(1)→(2)→(3)と置かれている形だ。

今回の入試改革で求められているのは、共通テストのあとに各大学が課す2次試験で、「(2)思考力・判断力・表現力」または「(3)主体的に学習に取り組む態度」を測るような試験を行うことだ。では「主体性・多様性・協働性」を問う試験とは、どのような内容だろうか。

四国学院大学の事例

Prostock-Studio/gettyimages

ここでは、著者が考え、実践してきた大学入試について紹介する。

著者が客員教授、学長特別補佐を務めている四国学院大学は、香川県善通寺市にある、全生徒数1200人の私立大学である。全国的にも珍しいメジャー(専攻)制度を導入しており、1年次の教養教育を経て、2年次からは学部を越えて、すべてのメジャーの中から好きなものを選ぶことができる。中四国地区で唯一の演劇コースを有し、2016年度からは新制度入試を前倒しで実施しているという、先進的な大学である。

演劇コースの新制度入試は、6〜7人のグループに分かれ、与えられた題材でディスカッションドラマ(討論劇)を作るというものだ。この試験で評価基準となるのは、メンバーと協働して何かを成し遂げられるかどうかだ。生徒の持っている知識や情報量ではなく、生徒の本質を見極めることが目的である。

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要約公開日 2020.08.29
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