ピープルアナリティクスの教科書

組織・人事データの実践的活用法
未読
ピープルアナリティクスの教科書
ピープルアナリティクスの教科書
組織・人事データの実践的活用法
未読
ピープルアナリティクスの教科書
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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定価
2,750円(税込)
出版日
2020年05月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ピープルアナリティクス」は、人材データを可視化・分析することによって、働く人と経営の未来に資することを目的としている。この言葉は2016年を境に急速に日本でも認知が進んだ。その結果、2019年時点で導入予定、もしくは導入済みという企業の比率は、51%にも及ぶという。とはいえ、未だ多くの企業がその活用に踏み切れていない、もしくは試験段階で立ち止まっているというのが実情だ。

本書は、そうした日本企業の人事担当者が最初に手に取るべき、文字通りの「教科書」である。メインのターゲットとなるのは、ピープルアナリティクスの実務担当者および責任者、そしてそのサポートにあたるデータアナリストだ。

もちろん、このような新しいコンセプトを社内に導入するときには、守旧派といった抵抗勢力や過度な「期待や幻想」とそれがもたらす「失望と幻滅」といった障害がつきものである。そうしたハードルを乗り越えるための心得も、本書にはていねいに書かれている。それが人事に限らず多くの読者の共感を呼び、ピープルアナリティクス導入の後押しになるのではないだろうか。

定量的なデータの取得が難しい人事の分野では、人の「経験や勘」によるマネジメントが主流であった。ピープルアナリティクスは、それに置き換わるものというより、むしろ人によるマネジメントを強力にサポートするものである。本書は人材マネジメントのアップデートに向けた強力な武器となってくれるだろう。

ライター画像
しいたに

著者

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
人材データを分析・可視化して人と経営の未来に活かすピープルアナリティクスと、それを牽引するHR(Human Resource)テクノロジーを普及・推進することを目的とし、その目的に資するためピープルアナリティクス及びHRテクノロジーに関する事業を行う団体。

本書の要点

  • 要点
    1
    人材マネジメントにおける意思決定の精度向上、業務の効率化、従業員への提供価値向上を実現するのがピープルアナリティクスである。
  • 要点
    2
    これまで人事において培われてきた経験や勘と、データ分析・活用が融合することで、データドリブン型の人材マネジメントへの転換が可能となる。
  • 要点
    3
    人事の活動には、施策が総花的、五月雨式になりやすい、組織としての継続的な取り組みが難しいといった課題がある。だが、ピープルアナリティクスの活用により、定量的なデータに基づいた活動の優先順位付けが可能となる。

要約

ピープルアナリティクスとは

意思決定の精度向上
oatawa/gettyimages

ピープルアナリティクスとは、「人材マネジメントにまつわる様々なデータを活用して、人材マネジメントの意思決定の精度向上や業務の効率化、従業員への提供価値向上を実現する手法」を意味する。

最もわかりやすい例の1つは、採用選考の自動判断である。これは、選考時に採取される性格や能力特性のデータをもとにして、入社後高いパフォーマンスを発揮する人材(ハイパフォーマー)になるか否かを統計的に予測するものだ。「AIを活用した採用判断システム」などと呼ばれている。

採用選考といえば、従来は応募書類と性格や能力特性に関するテストなどで足切りを行い、その後面接によって最終的な合否を決めるのが一般的だった。こうした選考では、企業が面接官に提示するガイドラインにより、ある程度の判断基準は示されている。しかし、最終的には、面接官自身の「経験と勘」に依拠する部分が少なくない。ピープルアナリティクスは、こうした採用の合否といった意思決定に、データ分析による示唆を提供し、その精度を向上させることを目的としている。

【必読ポイント!】 ピープルアナリティクス導入の心得

既存データ活用のすすめ

実際にピープルアナリティクスを推進しようとすると、人事部内からは「人材データが十分整備されておらず、分析するのは時期尚早ではないか」といった声が出てくることが多い。この「データ整備優先」の考え方により、最初の一歩を踏み出せていない企業も多いのではないだろうか。

そこで本書がすすめるのは、たとえ不十分であっても既存データを使い、分析を先行させるやり方である。これによりクイックウィンを生むことで、人材データ分析に「意味がありそうだ」という感覚を周囲にもってもらうのだ。

もちろん、分析結果としては物足りない面もあるだろう。しかし、一度分析をすることで、そもそも自社に必要な分析とはどのようなものかがわかり、本当にほしいデータも絞られてくる。そのうえで新しいデータの採取に取り掛かればよい。

経験と勘VSデータ分析

ピープルアナリティクスの目的は、これまでの「経験と勘」に基づく人材マネジメントから、エビデンス・ベースドのマネジメントに転換することだと考えられがちだ。このことから、経験や勘と、人材データ分析・活用は対立する概念であり、人事部内で過去に培われてきたものが否定されてしまうという懸念を抱く人も多い。

しかし実際には、経験や勘が全面否定されるわけではない。むしろ両者が融合してこそエビデンス・ベースドの人材マネジメントに転換することが可能となる。

仮説立案・解釈・施策のポイント
elenabs/gettyimages

データ分析のカギは、いかに筋のよい仮説を立てるかである。「仮説立案」は、経験と勘に基づいた人の洞察力に頼るしかない。

また、データ分析の結果をどのように「解釈」するか、そしてそれによってどのような「施策」を立案するかというプロセスにも、経験に基づいた人事の知識が決定的に重要である。特に、結果が想定に反した意外なものであったときには、その理由がきちんと説明されなければ、新しいデータも葬り去られてしまうおそれがある。それを説明できるのは、データではなく人なのだ。

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