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「感染症パニック」を防げ!

リスク・コミュニケーション入門


本書の要点

  • リスク・コミュニケーションはコミュニケーションの1つである。一方的な情報発信ではなく、双方向性の対話でなければならない。聞き手のことを考えて行なう必要がある。

  • リスク・コミュニケーションでは状況を正確に把握し、伝えることが重要となる。そのために使用する数字にも主観が入っていることを忘れてはならない。

  • リスク・コミュニケーションは「やった」ことだけでは意味がない。リスクを回避あるいは軽減したという「結果」が大事なのである。目的と手段を混同してはならない。

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【必読ポイント!】 リスク・コミュニケーションとは何か?

なぜ必要なのか?

Michael Blann/gettyimages

リスクと対峙するとき、リスクそのものだけを扱うのでは不十分だ。リスクにはコミュニケーションが大きな影響を与えているからだ。効果的なコミュニケーションはリスクそのものを減らすことができる。一方で稚拙なコミュニケーションは、リスク回避失敗に直結し、パニックをもたらす。感染症リスクにおいてもそれは同じだ。感染症の原因はほとんど目に見えず、短期的に集団に広がるなど、他の病気にはない特徴がある。だからこそ、独特の恐怖感を惹起する。それが、効果的なリスク・コミュニケーションが感染症にとって重要となるゆえんである。リスク・コミュニケーションとは、健康、事故防止、環境問題といった様々なリスクを伴う場合のコミュニケーションだ。これはいろいろな目的にあわせて利用できる。災害などの緊急時には、人々を適切な行動へと促すために「説得」という形をとる。テレビの地震・津波速報で「高台に逃げてください」などと放送されることも、リスク・コミュニケーションの1つだ。こうしたコミュニケーションは、相手の存在が前提となる。したがって、一方的な情報伝達ではなく、双方向の「対話」とならなければならない。相手の主張を無視して一方的に「正しい」情報発信をしても、目的は達成できないのだ。日本の場合、目的はそっちのけで「ちゃんとやった」という事実だけにこだわる場合が多い。コミュニケーションをとることはあくまで手段であり目的ではない。

3つのバリエーション

JamesBrey/gettyimages

リスク・コミュニケーションにはいくつかの分類があり、目的に応じて選択される。教科書的には主に3つに分けられる。「クライシス・コミュニケーション」は、クライシス、つまり目の前の危機的状況におけるコミュニケーションのことを指す。災害時など緊急時に用いられ、多くは先述した「説得」の形をとる。「コンセンサス・コミュニケーション」は、聞き手との双方向性の対話によって行なわれ、合意形成が目的となる。できるだけ多くのステークホルダー(関係者)がそこに参加することが望ましいが、現実にはそうはいかない。

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要約公開日 2020.08.14
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