ESG思考

激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった
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おすすめポイント

コーヒーチェーンで世界的に有名なスターバックス。このスターバックスが、「世界中の店舗で使い捨てプラスチックストローを2020年までに廃止する」と発表した。賛否両論を生んだこの話題だが、読者のみなさんはこれをどう捉えただろうか。プラスチックの海洋汚染問題が叫ばれる昨今において、企業イメージ向上のための行動だろう、と感じた人は多いのではないだろうか。しかし、残念ながらそれでは本質をまったくつかまえられていない。

スターバックスを始めとしたグローバル企業が推進する、環境・社会課題への対応の真意は、本書を読むことでかなり明らかになるはずだ。その1つのヒントは、オールド資本主義からニュー資本主義への移行という新たなムーブメントにある。日本は政府もメディアも企業のCSR担当さえも、その大きなうねりを正しく捉えることができていない。まさに「企業イメージ向上」の地点から踏み出せていないのだ。記憶に新しい2008年のリーマン・ショックは、日本と欧米のグローバル企業を分けた大きな分岐点となった。いま、新型コロナウイルスがそれ以上の分岐点になろうとしている。

アフターコロナにおいて再び世界で戦っていくための戦略を、日本企業は取ることができるだろうか。それとも、さらなる経済の冷え込みにあえぐこととなるのか。本書は重要な道しるべとなるはずだ。

著者

夫馬賢治(ふま けんじ)
株式会社ニューラル代表取締役CEО。サステナビリティ経営・ESG投資コンサルティング会社を2013年に創業し現職。同領域ニュースサイト「Sustainable Japan」運営。環境省ESGファイナンス・アワード選定委員。ハーグ国際宇宙資源ガバナンスWG社会経済パネル委員。ハーバード大学大学院リベラルアーツ修士(サステナビリティ専攻)。サンダーバード国際経営大学院MBA。東京大学教養学部卒。

本書の要点

  • 要点
    1
    現在の経済は「オールド資本主義」「脱資本主義」「ニュー資本主義」「陰謀論」という4つの認識で捉える必要がある。このうちニュー資本主義は、環境・社会への影響を考慮すると利益が増えるという考え方だ。
  • 要点
    2
    ニュー資本主義は機関投資家が主体となり、ESG投資という戦略によって隆盛する。しかし、日本では正しい認識をされず、グローバル企業に大きく遅れをとっている。
  • 要点
    3
    ESG投資の土台となる概念は、長期的な環境・社会課題への対処を考慮する長期思考だ。

要約

環境・社会と経済との関係

経済認識の4分類モデル
Nuthawut Somsuk/gettyimages

2008年頃からフェアトレードや環境配慮を大規模に手掛けていた、グローバル企業の動きを理解するために重要な視点となるのが、4つの異なる経済認識だ。横軸に、ビジネスが環境・社会へ及ぼす影響を考慮すると利益が増えるか減るか、縦軸に、企業が環境・社会への影響を考慮することに賛成か反対かを置き、4つに分類したものである。それぞれについて説明しておこう。

「オールド資本主義」は、企業が環境・社会への影響を考慮すると利益が減るので、そうすべきではないと考える。これは4つの経済認識の出発点とも言える考え方だ。コンビニで、植林活動への寄付分として20円高い水より、値段の安いほうの水を選ぶようなものであり、我々の頭にはこの考え方がつねにある。

「脱資本主義」は、たとえ利益が減ったとしても環境・社会への影響を考慮した経済活動が必要だと主張する。オールド資本主義を批判するときに出てくる。

「ニュー資本主義」は前提が大きく異なり、環境・社会への影響を考慮すると利益が増えるので考慮すべき、とシンプルに考える。これは「ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)投資」に関わるものであり、本書の本題だ。

「陰謀論」は、「環境・社会への影響を考慮すると利益が増える」などというきれいごとの裏には、きっと何かの陰謀があると考える。

過去20年間でこれらの4つの立場は大きな変化を遂げてきた。なかでも、経済や金融の主流にいた勢力が、オールド資本主義からニュー資本主義へと転身させたことは大きい。この変化をもたらした考え方を「ESG思考」と名付ける。

オールド資本主義のなかで分かれていく道

アナンの築いた2つの装置

企業のグローバル化が急速に進み、オールド資本主義と脱資本主義が対立するなか、当時の国連事務総長であったコフィー・アナンは、2000年に「ミレニアム開発目標(MDGs)」を打ち出す。国際社会が達成すべき目標として「環境の持続可能性の確保」など、8つのゴールと21のターゲットを掲げたものだ。

MDGs達成に向け、国連諸機関は加盟国に対し寄付や技術援助の拡大を要請、NGOに対する資金援助制度も拡充していった。これにより、難民・環境・医療などの分野で「国際NGO」と呼べるほどの団体が誕生した。

また、アナンは「国連グローバル・コンパクト」というもう1つの装置を生み出す。「人権」「労働」「環境」と、賄賂等の防止を意味する「腐敗防止」の4分野を対象に、合計10の原則を定めたものだ。国連加盟国ではなく民間企業を対象とした自主的な署名であり、法的な義務も罰則もない。単なる「宣言」に過ぎないと思われたが、国連が企業と接点を持ち、対話する場を設ける画期的な活動となった。アナンは国際社会の活動主体が企業に移ってきたことを察知していたのだ。

これら2つの装置は、2015年に国連で採択される「持続可能な開発目標(SGDs)」の大きな源となる。

日本独自の「CSR文化」
recep-bg/gettyimages

このとき日本ではこうした国連の動きがほぼ知られることはなく、企業も報道機関も関心を寄せなかった。

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要約公開日 2020.08.12
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