カルチャーモデル

最高の組織文化のつくり方
未読
カルチャーモデル
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カルチャーモデル
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2020年08月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

就職・転職先を選ぶとき、最も気になるのが「自分がその会社に合うかどうか」ではないだろうか。情報サイトやデータバンクなどで、その企業の業績や職務内容、給与水準はある程度わかる。しかし、社内の雰囲気や暗黙のルールなどといった言語化しづらい部分については、入社しないとわからないことが多い。口コミサイトが人気を集めているのは、その不安のあらわれだろう。

著者は本書で、「その会社らしさ」を表す企業のカルチャーを、「経営戦略」のように明確に設定すべきだと説いている。なんとなくの雰囲気で共有している会社のカルチャーを明文化・言語化し、社内外に認知・浸透させることで、事業がうまく回るというのだ。

人口減少が進む中、優秀な人材を獲得してより長く勤めてもらえなければ、会社の存続はむずかしい。特に今は、新型コロナウイルスの影響で、求職者は会社と直接コミュニケーションをとりづらい。求める人材を採用できなかったり、せっかく採用した人材が「会社に合わなかった」という理由で辞めてしまったりする不幸は、最小限に食い止めなければならない。そのためにも、会社のカルチャーを一から見直し、体系的なカルチャーモデルをつくりあげ、積極的に発信することが急務と言える。

働き方の多様化・分散化が進む今、企業が社員を囲う強制力は弱まってきている。社員が自発的に「この会社で働きたい、貢献したい」と思える求心力は、これからの企業経営に欠かせない。カルチャーがその核になることは、本書をお読みいただければわかるだろう。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

唐澤俊輔(からさわ しゅんすけ)
Almoha LLC, Co-Founder
大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。
経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用育成制度設計労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人組織を支援するサービスツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業はビジネスモデルと同様に、組織のカルチャーモデルを考えなければならない。カルチャーモデルは事業の生産性や人材の採用にも関わる、経営の根幹となるものだ。
  • 要点
    2
    カルチャーが言語化され、社内外に共有されれば、企業と社員の期待値ギャップをなくせる。
  • 要点
    3
    カルチャー設計は、5つのプロセスで進める。すなわち、(1)現状のカルチャーを棚卸する、(2)ビジョン・ミッションを設定する、(3)カルチャーの方向性を決める、(4)カルチャーを言語化する、(5)カルチャーを浸透させる、だ。

要約

なぜ企業にカルチャーが必要なのか

期待値ギャップをなくせる
alvarez/gettyimages

「弊社は人を大切にしています」とは、よく聞かれる言葉である。だが、「人材を大切にしている」といいながら、社員が不幸になってしまっているケースも多いものだ。

超優秀な社員が入ってきても、大きな成果を出せずにすぐ退職してしまう。新卒社員が夢を抱いて入社しても、入社数カ月もすれば辞めていく。人を大切にしているはずなのに、なぜこのようなことが起きてしまうのだろうか。

その原因の一つが「期待値ギャップ」だ。期待値ギャップとは、社員が会社に対して抱いていた期待と、実際の働く環境や条件に差分がある状態のことをいう。そのギャップが大きければ大きいほど、不満が生まれやすい。そう考えると、「社員が期待する環境と、会社が提供する環境のギャップがない(少ない)会社」が「いい会社」だと定義できる。

企業は、事業戦略として「ビジネスモデル」を考えるように、組織戦略としての「カルチャーモデル」も考えなければならない。カルチャーが言語化され、社内外に共有されることで、企業と社員の間の期待値ギャップがなくなる。そして社員が会社に満足し、ロイヤルティ(忠誠心)高く働き続けてくれることが、企業の発展につながる。企業のカルチャーは、事業にも直接的に影響するのだ。

ビジネスをスピーディーに進められる

カルチャーは羅針盤のようなものだ。会社にとって何を優先すべきで、どのような意思決定をし、どんな戦略を立てるかの指針になってくれる。

たとえば、1年前に立ち上げた新規事業がうまくいかず、赤字を垂れ流していたとする。そんなとき、事業責任者はどうすべきか。「まだ見込みはあるから、なんとか頑張ろう」とハッパをかけるか、「傷が浅いうちに撤退して、新たなビジネスを検討しよう」と考えるか。

会社によって、導かれる答えは異なるだろう。「長期的な目線で考える」というバリューを持つ会社なら前者を選択するだろうし、スピード重視なら後者を選ぶはずだ。どちらが正しいということではなく、カルチャーに沿ったその会社らしい意思決定を、納得感を持ってすることに意味がある。

自社のカルチャーが浸透していれば、ギリギリの判断が求められるような場面でも、スピーディーに意思決定できる。意思決定後に「なぜそうするのか」を周知する必要もない。

変化の激しい時代、組織内のコンセンサスに時間をかけることはできない。カルチャーは、スピード感を持ってビジネスを推進するために不可欠だ。

自社に合う人材を採用できる
pixelfit/gettyimages

カルチャーが対外的に最も影響するのは採用である。

かつては新卒を一括で採用し、自社のカルチャーに染め上げるのが一般的であった。社員も、多少理不尽なことがあったとしても「仕事とはこういうもの」と納得して仕事をしていた。一方、Z世代(1996〜2012年生まれ)と呼ばれる若い世代は、「自分らしさ」「個人」を大切にする。だからコストをかけて新卒採用しても、カルチャーに染め上げる前に退職してしまう。

彼らはインターネットで情報を収集して、大企業とスタートアップを同じ評価軸で見定める。企業側はSNSやオウンドメディアで発信し、会社の価値観やカルチャーに共感してくれそうな人を採用する。

ここでも期待値コントロールが重要になってくる。どんなに「私たちの会社はオープンかつフラットです」と発信していても、実情が伴わなければ、口コミサイトなどに書き込まれてしまう。「実はワンマンらしい」などという評判がたてば、せっかくのブランディングも台無しだ。会社に興味を持ってくれたはずの優秀な人は警戒し、採用につながりにくくなる。

大切なのは、

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要約公開日 2020.09.08
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