ジャパネットの経営

東大卒2代目の僕がカリスマ社長の後を継ぎ大事にしてきたこと
未読
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おすすめポイント

親が偉大な存在だと、その子どもにかかるプレッシャーは並大抵のものではない。スポーツ界や芸能界など、親が顕著な業績を残した分野に進んだ子どもは、常に「先代」と比較されるのが宿命だ。もちろん実業界でもそれは同じである。本書の著者は、お茶の間で人気の著名経営者を継いだ、二代目である。本人にしかわからない苦労もあっただろう。だが、そうしたことをみじんも感じさせない、確固たる信念に基づいた経営哲学を本書で示している。

本書全体に通底している根本精神は、「自分は自分」という考え方である。親が築いた基盤を生かすも殺すも自分次第、という決意が伝わってくる。ここで紹介される経営手法は、著者の努力によって実現したオリジナルなものが多く、いまやジャパネットの経営は完全に著者の手にあることがわかる。

とはいえ、創業者が残した強烈なイメージに裏打ちされた「のれん」の力を最大限使う、という発想も忘れてはいない。ブランド力を徹底的に分析し、自分なりの新しい方法も用いて着実に業績を伸ばしていく姿に、経営者としての高い手腕を感じる。顧客満足を考えつつ、従業員のロイヤリティも伸ばしていくという難しい課題に果敢に取り組んでいる。

示された61項目の「ルール」は経営一般に通じる基礎であり、米国の著名ビジネススクールで扱う「ケース」にも相当する。組織運営を担うトップや所属長はもとより、現場での働きがいを模索するすべての人たちが今すぐにでも有効活用できる実践のヒントが、数多く詰まっている。

ライター画像
毬谷実宏

著者

髙田旭人(たかた あきと)
ジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEO。
1979年長崎県生まれ。東京大学卒業。大手証券会社を経て、2004年、父・髙田明氏が経営するジャパネットたかたの社長室長に着任。コールセンターや物流センターの責任者を務めた。2012年7月から副社長。2015年1月、社長に就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    創業者が感性で実行し成功していたことを、理論的に落とし込んだ事業戦略の立案は必須。
  • 要点
    2
    働き方改革の目的は、従業員満足の向上や採用のためだけではなく、ムダなく、気持ち良く、短時間で仕事をするための「考え方改革」である。
  • 要点
    3
    社員一人ひとりが自分の頭で「何が正しいか」を考えて力を発揮すると、会社は強くなる。
  • 要点
    4
    自分は駄目だと諦めずに、明日の自分を楽しみに努力する。ちょっと考え方を変えるだけで人生はいくらでも変わりうる。

要約

【必読ポイント!】 ジャパネットが成長を続ける理由

根幹となる3つのステップ
jgroup/gettyimages

創業者の髙田明氏が去って5年。それでもジャパネットが成長を続け、過去最高の売上高を更新できるのはなぜか。

引退時に最も危惧されていたのはテレビ通販番組のMCの部分だった。これを表面的に真似しても意味はない。だから、あれほどまでにお客様の心をつかんだ先代社長の姿勢の本質をつかまなくてはならない。

自社の強みと本質を考え続けてわかったのは、ジャパネットは3つのステップを愚直に続けてきたことである。すなわち、①見つけて、②磨いて、③伝える、の3つだ。この3ステップにきちんと取り組みさえすれば、どんな商品も大抵は売れるとも言える。だから、これからのジャパネットにおいても、この3ステップをひたすら極めていこうと心に決めた。もう少し詳しく説明しよう。

「見つける」段階では、競争力のある商品に絞って展開する「厳選集中」がジャパネットの特徴だ。最も良いものを社内で徹底的に議論し、総合力で最も優れた商品を選んで全力で販売する。次の「磨く」段階では、メーカーに要望を出すことまでして良い商品をさらに改善する。分割金利手数料や設置サービスを負担する取り組みなどもその1つだ。そして、「伝える」段階では、消費者に知ってもらいたいこと、伝えるべきこと、商品の魅力を最大限届ける。

これまでは「見つける」「伝える」活動が概ね9割を占め、「磨く」ことが相対的に少なかったこともわかった。そこで、この部分を特に強化するために、修理などのアフターサービス専門会社や、設置・配送専門の会社をつくった。自社で魅力的な商品、サービスをきめ細かくつくり上げることも、「磨く」活動の地道な取り組みである。

リアルにこだわる

「伝える」ためのジャパネットのテレビ通販番組は、日中の時間帯はほぼ生放送で、台本もない。ライブにこだわるのは、リアルのほうが伝わるものが多いからだ。時にミスがあっても、リアルにこだわったほうが想いが伝わると考えている。

通販番組に限らずリアルにこだわることを大切にしており、社長も役員も挨拶をする時に原稿は用意しない。社員旅行などでの役員挨拶は抽選制にしていて、その場で発言者が決まる。緊張感を大事にしているからだ。緊張感は「いい挨拶」につながる。

「この場所で今、誰に何を伝えるべきか」を常に考えることが、自分自身の成長につながる。他の人の挨拶を聞くときでも、「自分なら何を話そう」と考えるようにしてきた。

買った後の体験価値を上げる工夫
welcomia/gettyimages

「磨く」活動の1つとして、ジャパネットは通信販売を始めた頃からアフターサービスに取り組んできた。まずは商品購入後の問い合わせに対応することからスタートし、その後専門部署を設置する。コールセンターのオペレーターは、商品を手元に用意して実際に操作しながらお客様からの質問に答えてきた。修理についてもかねてより「自社でやるべきだ」と考えており、社長を引き継ぐのとほぼ同時に、修理の内製化を含めたアフターサービス専門の会社を設立した。

ここまでやる理由は2つある。1つは、ジャパネットは「お客様が衝動買いする会社」だということ。なんとなく番組を見ていてほしくなった、というお客様が後悔しないよう、アフターサービスまで責任を負うことが大切なのだ。もう1つは、メーカー経由ではなかなか入ってこないお客様の声が直接聞けること。メーカーと共同で企画・開発するジャパネットオリジナルモデルにお客様の生の声を反映させることで、より良い商品を届けられるようになる。

これらは、「髙田明さんが薦めるから買う」ではなく、「ジャパネットだから買う」に変えていくための努力でもある。

働き方改革は「楽をして成果を上げる」ための方法

短い時間で働いてもらう

社長に就任した2015年から働き方改革に取り組んでいる。その目的は、従業員の満足度向上や採用のためだけではなく、みんながムダなく、気持ち良く、短い時間で仕事をする、いわば「楽をして成果を上げる」ことだ。本質的には「考え方改革」であるとも言える。

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要約公開日 2020.09.14
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