Winning Alone

ウィニング・アローン
未読
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著者
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Winning Alone
著者
出版社
プレジデント社

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出版日
2020年04月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

競技に人生をかけ、己れの身体の能力を極限にまで高め、競技で勝利を掴もうとするアスリートたち。一流のレベルにまでなると、母数が少ないために効果的なトレーニングについて有効なデータを取ることもままならない。彼らがさらにパフォーマンスを向上させるためには、自ら試行錯誤を繰り返すしかない。本書は、陸上競技、400メートルハードルで銅メダルを獲得した著者の為末大氏の現役時代の試行錯誤の記録である。

著者が「後悔録」のつもりで書き始めたという本書には、あまり表に出ることのないアスリートのネガティブな感情までもが克明に描き出されている。それと同時に、競技に人生をかけるということがどういうことなのか、その孤独な戦いの片鱗を垣間見ることができる。一読すると、アスリートたちやそのパフォーマンスを見る目が変わることだろう。

本書での著者は、あくまで選手が頂点を目指すということについて論じ、そしてその孤独に本書を通じて寄り添おうとしている。しかし、アスリートでない人にとっても、自分を知ること、自分の心を守ること、創造性を持って主体的に楽しむことの重要さについて、共感せずにはいられないだろう。競技という特殊な環境でのパフォーマンスについて徹底的に考えたからこそ、本書のメッセージはかえって他の場所でも応用可能な普遍性を手に入れているのかもしれない。アスリートに関わる人だけでなく、多くの人に手にとっていただきたい一冊だ。

ライター画像
香川大輔

著者

為末大(ためすえ だい)
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で、日本人として初めてメダルを獲得。2000年から2008年にかけてシドニー、アテネ、北京のオリンピックに連続出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2020年4月現在)。2012年現役引退。現在、Sports × Technologyにかかわるプロジェクトを行う株式会社Deportare Partnersの代表を務める一方、コメンテイターとしてメディアでも活躍している。ベストセラーとなった『諦める力』(プレジデント社)は、高校入試、課題図書などに多く選定され、教育者からも支持されている。最新刊は親子で読む言葉の絵本『生き抜くチカラ』(日本図書センター)。ブータン五輪委員会(BOC)スポーツ親善大使。

本書の要点

  • 要点
    1
    ある一定以上のレベルに達している選手は極端に数が少ないため、統計的に有意なデータを取ることができない。選手は自ら科学的思考を持って試行錯誤するしかない。
  • 要点
    2
    練習の量よりも質が重要になるアスリートは、トレーニングのためにも準備が必要となり、戦略的に休養を取らなければならない。
  • 要点
    3
    観察し、仮説をたて、実行し、検証するという上達のプロセスを、「楽しむ」という主体的な姿勢で行うことが長期的に勝つために有効な戦い方だ。

要約

【必読ポイント!】自分を高める方法を知る

「当たり前」のレベルを引き上げる
AscentXmedia/gettyimages

選手のパフォーマンスには、所属する団体、ライバルなどの周囲の環境が与える影響も大きい。個人が頂点を目指すという視点に立った場合、所属する集団の視座の高低を気にしなければならない。視座が低い集団は、低成長状態でも人を安心させ居場所を作ってしまう。視座が高い集団は、「当たり前」のレベルが高く、いつしか自分の「当たり前」のレベルも引き上げられていく。人は一緒にいる人に影響されていくものだから、自分がこうなりたいと思う人がいる集団を選べばよい。

ライバルは付き合い方を間違えなければ、モチベーションになり、自分の限界を引き上げてくれる存在だ。著者も、ライバルの存在なくしてメダルは獲得できなかったと振り返る。しかし、ライバルの存在を意識しすぎると、自分のやるべきことを見失ってしまうことがある。一番大切なのは自分のやるべきことに集中することであり、ライバルは自分にとってただの風景に過ぎないことを忘れてはならない。

自分で自分のコーチになる

人間は、自分のできないことをやすやすとこなしている憧れの存在をロールモデルに設定し、そうなりたいと努力する。ロールモデルがいるとやる気が出るが、人は自分の苦手分野が得意な人に憧れやすいというところに落とし穴がある。自分の技能が高まってくると、弱みを磨いても人を凌駕するほどにはなれない。どこかの段階で憧れの選手に近づこうとするのではなく、自分本来の特徴を活かすためにどうしたらよいかに集中する必要がある。

著者はコーチをつけないという選択をしたため、自分の姿を客観的に把握し、新しい情報を取り入れるために「質問」を効果的に活用していた。他人に質問して答えてもらうことは、思考を外部に委託しているようなものだ。相手の言葉を受け入れ、自分が変わることを厭わない質問は、自分を成長させ、ひいては答えてくれる他者をも成長させてくれるものになる。それこそがコーチのいない選手に与えられた武器なのだ。

引退後は社会とスポーツの違いを意識する
SrdjanPav/gettyimages

アスリートに必ず訪れる引退のときには、特殊な競技時代の環境から新しい社会の環境に自分を合わせなおさなければならない。勝ち負けが人生を変えるアスリートは、勝敗にこだわる。強い重圧をはねのけるために一つの信念を貫くようになり、結果的にアスリートは決めたことや信じたことを譲らないという性質になりやすい。しかし、ビジネスの世界の勝敗はあいまいで、目的のためにはときには妥協も必要になる。このような環境の違いを意識しておかなければ、アスリートは理想にこだわりすぎて妥協しない、周囲から煙たがられる存在になってしまう。社会とスポーツの違いを認識し、適応期間を耐えることができれば、アスリートの能力は社会でも発揮されるはずだ。

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要約公開日 2020.09.21
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